9_最終話_ver.1
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ライ麦畑の風が頬をなでる。
そうしてやっと見えてきた、二人だけの秘密基地。
マードックは震える手でドアを押しのける。
するとその小屋の窓辺、砂で濁った四角い窓のすぐ傍に、一人の血まみれの男——ハドソンが立っているのが分かった。
足元には、いつか見た子供がやはり全身血まみれで横たわっている。
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「おめでとうございます」
「あーこれ? 来年で、私は卒業でしょ? 高校生活で最後の文学賞になっちゃうわけだ。そいで、私はいらないって言ったんだけど、どうしてもって皆が言ってきかなくてさ」
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ハドソンの下唇が、強く軋む。
痛みも何も、分からないのだ。
ただ熱い。
熱い。
——マードック・フォークスは、笑顔で、こう呟いた。
「大丈夫。窓辺の周りは峠だよ」
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瞬間、氷上は、自分の頭に血が上るのを全身で自覚した。
「はぁ~~~~~!?!?!?!?!?!?」
足の裏から沸き立つほどの声量で、氷上は先輩にメンチを切る。
「は、はぁ!?」と、虚を突かれた先輩。
「あの、いいですか~先輩!? 俺いま結構落ち込んでるんすよ? こう見えてもう頭真っ白!? チョー真っ白! ちょっと遠回りなこと言われるとウワァ~ってなる!」
「はい、はい、はい?」
「だからね、なに。え~『窓辺の向こうに峠』?」
「『周り』」
「それはどういう状態? 何を伝えたい?」
先輩は、ゆっくりと首を傾げる。マジかこいつ。
「分からない!? 分からない! おっけーおっけーおっけー」
氷上は、一息ついてから言い放った。
「……じゃあ、一緒に考えましょう!」
「一緒に?」
「はい! なんでしたっけ? 窓辺の~?」
「えーだから!」
二人は声を揃えて、より良い言葉を探そうと、顔を高く空に向けて上げた。
いつまでも、いつまでも探せると、確信するほどの強い叫びだった。
「窓辺の周りに、峠があって!」
原案:2025年6月初演 演劇企画みけそりあ第一回公演『窓辺の周りに峠があって』
完結になります。
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