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9_最終話_ver.1


 *


ライ麦畑の風が頬をなでる。

そうしてやっと見えてきた、二人だけの秘密基地。

マードックは震える手でドアを押しのける。

するとその小屋の窓辺、砂で濁った四角い窓のすぐ傍に、一人の血まみれの男——ハドソンが立っているのが分かった。

足元には、いつか見た子供がやはり全身血まみれで横たわっている。


 *


「おめでとうございます」


「あーこれ? 来年で、私は卒業でしょ? 高校生活で最後の文学賞になっちゃうわけだ。そいで、私はいらないって言ったんだけど、どうしてもって皆が言ってきかなくてさ」


 *


ハドソンの下唇が、強く軋む。

痛みも何も、分からないのだ。

ただ熱い。

熱い。


——マードック・フォークスは、笑顔で、こう呟いた。


「大丈夫。窓辺の周りは峠だよ」


 **


瞬間、氷上は、自分の頭に血が上るのを全身で自覚した。


「はぁ~~~~~!?!?!?!?!?!?」


足の裏から沸き立つほどの声量で、氷上は先輩にメンチを切る。


「は、はぁ!?」と、虚を突かれた先輩。


「あの、いいですか~先輩!? 俺いま結構落ち込んでるんすよ? こう見えてもう頭真っ白!? チョー真っ白! ちょっと遠回りなこと言われるとウワァ~ってなる!」

「はい、はい、はい?」

「だからね、なに。え~『窓辺の向こうに峠』?」

「『周り』」

「それはどういう状態? 何を伝えたい?」


先輩は、ゆっくりと首を傾げる。マジかこいつ。


「分からない!? 分からない! おっけーおっけーおっけー」


氷上は、一息ついてから言い放った。


「……じゃあ、一緒に考えましょう!」

「一緒に?」

「はい! なんでしたっけ? 窓辺の~?」

「えーだから!」


二人は声を揃えて、より良い言葉を探そうと、顔を高く空に向けて上げた。


いつまでも、いつまでも探せると、確信するほどの強い叫びだった。


「窓辺の周りに、峠があって!」


原案:2025年6月初演 演劇企画みけそりあ第一回公演『窓辺の周りに峠があって』


完結になります。

読んでいただきありがとうございました!

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