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森の中のホテルに監禁された私。しかも、部屋にもう一人女の子がいる。  作者: 宮野ひの


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第24話 重なる

「ひゃっ」


 0距離の彼女の肌は生あたたかくて、眩暈がしそうだった。同じシャンプーを使っているはずなのに、彼女の香りは私とは違うように思えた。


「ひゃっ」


「んっ。これやばいね」


「……」


「なんかドキドキする」


 押されるようにして、私とルカは、そのままベッドの上に身を沈めた。さりげなく距離を縮めてくるのが本当に上手い。彼女は足を絡めてきた。


「これって凪沙の心臓の音?」


 ルカが私の胸元に耳をピタッとくっつける。


「……」


「ふふっ。うるさいんだけど」


「……仕方ないでしょ!」


 こんなにもドキドキしているんだから。


 私が言葉を発すると、ルカが下着の上から胸にキスをした。変な声が出そうになって、慌てて口元を押さえる。


 空気が薄い。頭が朦朧としてきた。

 そこから先は、ぼんやりとしていて、まるで夢の中の出来事のようだった。


 一つひとつの行為に夢中になって、吐息が漏れる自分に羞恥を感じて、彼女は少しも考える隙を与えてくれなかった。


 いつのまにか私は裸になっていて、ルカから熱く抱きしめられていた。年上の私がリードしようと思っていたのに——。まるっきり駄目。ルカに翻弄されっぱなしだ。


「凪沙、好きよ……」


 彼女は指を絡めてくる。ムードのためにそう言っていると、頭の片隅でわかっている。だけど、本当だったらどんなにいいか——。そう思ってしまう私がいた。


 女の子って柔らかい。かわいいし、それにいい匂い。いつもより高い声のルカに、理性が溶ける音がした。


 今まで生きてきた中で、私が感じた悩みは、どれもちっぽけに思える。もう何だっていい。どうなってもいい。ルカが側に居てくれればそれでいい。

 それくらい今が大事で——私は心ゆくまで甘い時間に酔いしれていたかった。





 私の横には、眠っている女の子がいる。すぅすぅと優しい寝息を立てている。額には、前髪が何本か張り付いていて、私はそっと指ですくった。


 彼女はううーんと声を上げた後、寝返りを打つ。真っ白な背中がこちらを向いた。首元には薄い紫色の跡が付いているのが見えて、思わず目を逸らす。


 なんとなく自分の手を広げて、まじまじと見つめてみる。爪が短くて、ネイルなどの飾り気はない。

 北村さんと五十嵐さんは、蝶やダイヤがついたキラキラの爪をしていた。二人と出かけた時、気後れした私は、手をグーにして後ろを歩いていた。


 ——だけど今は爪に何もしてなくて良かったなぁと思える。


 くにくにと指を動かしてみると、ボッと顔に血が上った。私はそのままベッドの上に腕を放り投げた。


 冷静になったら、腰あたりに鈍い痛みがあることがわかる。もうこのまま寝ていたいと思うのは、体力がないせいだろうか。


 ——私は別にレズビアンというわけではない。

 だけど、ルカと肌を重ね合わせたことで、たまらない気持ちになって——奥に眠る何かが目覚めたような気がした。


 みんなが普通と思っている性行為の仕方なんてわからない。だけど、シーツについた赤い模様が、確かな証だった。

 私の初めての相手はルカだ。もうこれは覆らない事実だった。


 そのまま目を閉じると、先ほどまでの行為を反芻することになる。ルカの唇が熱くて、何度もむさぼった。


 ——これは、いけないと思い、床に散らばった下着と服を取り、なんとか前を隠しながら脱衣所まで向かった。


 扉を閉めると、肩の力が抜けた。


 汗をかいていたから、シャワーを浴びることにする。


「ふぅ……」


 私の肌に滑り落ちる水が、陽の光を浴びてキラキラ輝いて見えた。お湯になるまで、もう少し時間がかかる。


「——ねぇ」


「えっ?」


 後ろから声が聞こえる。振り返ると、お風呂場のドアを少し開けた、ルカと目が合った。服を着ておらず、裸だった。


「わたしもシャワー浴びたいんだけど……」


「ちょっと、待ってて」


 急いで体を洗おうとしたら、なんと彼女が強引にお風呂場に入ってきた。


「聞こえなかったの? あと10分くらいで終わるから」


「んー」


 ルカがとろんとした目で私を見た。まだ眠いのかもしれない。何か考えているようだ。


「——わたしが体洗ってあげよっか?」


 まさかの提案だった。私は目をぱちくりさせる。


「い、いいって!」


「遠慮しないで」


 ルカは私の肩を押すと、強引にお風呂場の椅子に座らせた。

 目の前にあるボディソープをそっと手に取ると、滑りよく泡立たせてから、背中に触れられた。


「ひぃ」


「ふふっ」


 こそばゆい。ルカの手で遊ばれると、体が跳ねてしまう。

 腰を触ってくるのは確信犯? 予想外な行動を取られる度に、また一つ気持ちが掻き乱される。

 半分曇っていた鏡からは、ルカの表情は確認できなかった。


「——どう?」


「ど、どうって?」


「気持ちいい?」


「えっ。うん。——気持ちいいかな」


「ふふっ」


 珍しく素直になれた。ベッドの上では、ルカに言えなかった言葉——。って、やっぱり今のなし!


 機嫌が良い彼女は、せっせと私の肌をきれいにしようと尽くしてくれる。


「寝てたんでしょ? 体、疲れてない? 無理しなくていいよ」


 シャワーヘッドを見ながら口にすると、ルカの手が止まった。


 ——かわいくないことを言ってしまっただろうか。


 でも、さっきたくさん無理させちゃったから、もう少し休んでいて欲しかった。

 気持ちは嬉しいんだけど!

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