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大地の系譜  作者: Melon
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30

「ねえ」

「ん?なんだ?」


 現在二人は馬車の中、王都への帰り道である。


「今、このナイフを地霊術でいじれる?」


 懐から取り出したテーブルナイフを梗汰に見せる。


「んー、まぁ出来るとは思うけど」


(なんでご飯で出された時のテーブルナイフ持ってるんすか・・・・・・)


「なら、ちょっとやって見せてよ」

「りょーかい」


 テーブルナイフを受け取り、力を加える。

 すると、一瞬で刃の部分が、アイスピックのような形状になった。


「これでいいか?」


 梗汰は確認するように瞳を見る。


「ふむ」


 瞳は先端を指で触っている。


「今度はこっちをやってみなさい」


 今度は、微細な彫り物がされている短剣を取り出した。

 柄頭には宝石の様なものが据えられている。

 それは戦闘用と言うよりも、美術品にと言われたほうが納得できるだろう。


 それを鞘から取り出すと、梗汰へと放り投げた。


「おっと、あぶねーな。・・・・・・なんだかすっごく高価な物って感じがするけど、いいのか?」

「気にしないから、さっさとやっちゃいなさい。ただし、さっきと同じ量の精霊でやりなさいよ?」

「りょーかい」


(よーし、じゃあ刃の部分をノコギリっぽく・・・・・・って、あれ?)


 力を加えたが、短剣には何も変化は無い。

 なんだか力が通りにくい、自分の力が阻害されているような感じがする。


「これ、さっきほど上手く出来ない、もうちょい時間掛ければ出来るとは思うけど、精霊の数が足りない感じだ」


(・・・・・・なんでだ)


「ふふ、今あなたが何を思っているのか分かるわ。さっきのは変質できているのに、これに干渉できなかったのを疑問に思っているのでしょう?」


 まさにその通り。


「・・・・・・ぅ、よく分かったな」


(やっぱりオレの力の扱いが下手だからか?)


「勿論あなたの力が未熟だったのもあったけど、”存在格そんざいかく”が多少影響してたと思うわ」

「存在格・・・・・・そんざいかく・・・・・・。ぁー、んー、そうか」


 その言葉を頭の中で反芻させていると、それに対応する知識にたどり着いた。




――――――― 世界の記憶 【存在格そんざいかく】 ―――――――

それはこの世界での存在としての格。

つまりどれだけこの世界に強く認識されているか。


自分より存在格の高い相手(物)には、世界と言うのシステムを介しての干渉がし辛くなる。

つまり、術や魔法などへの抵抗力を持つ。

それらに強く干渉するには、自分自身の力に加え、自分の存在格が影響してくる。


名のある職人などによって”こう在る”と、強く思われ作成された物は存在格が高くなる。

また、長い年月を経て世界への親和性が強まり、その物の存在格が高くなることがある。


魔剣や聖剣と呼ばれる物は、存在格が高いことが多い。

物だけではなく生き物にも存在格があり、存在格の高い生き物としては聖人、仙人、魔人、大精霊、等が存在する。

――――――――――――――――――――――――――――




「この短剣は買った時に聞いた話だと、百五十年くらい前に作られた一点ものの儀礼剣らしいわ。行商人から買ったものだけれど、魔源マナの制御の補助をするものみたい。まぁ、あたしはその系統の魔術は使えないから、よく分からないのだけれど。なんとなく気になったから買っちゃったのよ」

「へぇ、そうなんだ」

「そうなのよ、って話が逸れたわね。まぁ何が言いたいかと言うと、存在格が高い物には魔法での干渉がし辛いってことよ。例えばこれに精霊術で干渉するには、これと同じ大きさの別の短剣に干渉するより、遥かに多くの精霊が必要でしょうね」


 そう言いながら瞳は短剣を懐へ入れる。


「今のあなたなら、ある程度までは自分の精霊の支配下に置いて、干渉することができるんじゃない?」

「そうなのかな?試したこと無いから分からないけど」

「まぁある程度、だけどね。あなた前に「既に定まった物として作られている物の大きさは変えられない」って言ってたわよね」

「ぁー言ったかも」


 そういえば、本を使って実験した時に言った気がする。


「あの時は出来なかったけど、今なら出来るんじゃない?と言うか力の扱いが上達した分、力の及ぼせる範囲が広がったんじゃないかしら。」


 元々、渡り人は通常の人族に比べて存在格が高く創られている。

 よって通常の人族より、楽に干渉することができるはずなのだが。

 その時の梗汰は力の扱い方が未熟で、人によって作られた物への干渉が出来なかったが、精霊術というものを理解し前より上手く扱うことの出来る今なら、及ぼせる力の範囲は前より広がっているであろう。


「ほー、なるほどね。でもそれが分かっても、今までとはあまり変らないな」

「そうね、出来ることは出来るし、出来ないことは出来ないってことに変わりないわね」

「そうそう」


「そういえば、そっちはどうなんだ?」

「どうなんだ、とは何?」

「さっきの短剣燃やせるの?」


 これはさっきから気になっていたことだ。


「当たり前でしょ、余裕だわ」


 自慢げに人差し指を立てる。


「さすがに強力な魔剣とか聖剣なんかは無理かもしれないわね。試したことはないけど」


 そりゃすげぇな・・・・・・。


「そ、そうなんだ」

「そうよ・・・・・・ふわぁ」


 そこまで言うと、瞳は口に手をあて軽く欠伸をした。


「さてと、王都まではまだまだ時間がかかりそうだから、あたしはしばらく眠ることにするわ」

「そうか、ならオレは一人で暇でも潰してるわ」


 鞄からルービックキューブを二つ取り出し、両手に一つずつ乗せる。

 それはカタ・・・・・・カタと緩慢に動き始めた。


「うーむ、あんま上手く動かない。というか難易度高すぎるぞコレ・・・・・・」


 動いてはいるが、その動きは一つの時に比べて遥かに遅い。

 このままの速度だと、各面が揃うには後半日は掛かるだろう。


「相変わらず、地味なことを器用にこなすわね」


 瞳は既に座席にもたれかかり、寝る準備にはいっている。


「うっせ、オレはこういう作業は嫌いじゃないんだよ」


 むしろ梗汰の中では、こういう積み重ねで自分を高める作業は、好きな部類に入る。

 

「そう、ではあたしは寝るから騒がないでよ」

「あいよ」

 




 コンコン

 御者と座席を隔てる壁からノックする音がした。


「まだ遠くにですが、ガルダンの門のかがり火が見えました。もうしばらくで到着するでしょう」

「なんだとっ!」


 特にやることもなく、相変わらずルービックキューブで暇を潰していた梗汰は、その一言に激しく反応する。


「お、やっとか!おーい、起きろよ!もう着くぞー」


 自分の喜びを伝えるかのように、座席にもたれかかって寝ている瞳の肩を、ガクガクと揺らす。

 梗汰は旅からの帰宅で、家を見るとテンションが上がるタイプだった。

 それが長旅なら尚更である。


「おーきーろーってば!」


 ふと瞳と目が合った。


「あ、起きたか。もう着くぞ」

「・・・・・・」


 とても嫌そうな目で睨まれた。

 

(なんですか、その冷たい目は・・・・・・)


「・・・・・・っさいわね・・・・・・子供ガキかよ」


 ・・・・・・え?


(なんか邪悪な意思を感じた・・・・・・気のせいだよな)


「あの・・・・・・もしかして起こしちゃ悪かった?」


 瞳は前髪を押しのけ、自分の額に手を押し当てている。

 今にも凄いため息が出てきそうだ。


「なんでもないわ・・・・・・はぁ。もう着くのね、なんだかとても疲れたわ。寝起きも最低だし」


 そう言って梗汰の方を見る。


(不知火さんって寝起きがダメな人なのかな・・・・・・?)


「ご、ごめん」

「ふぅ、もういいわ」


 そう言いながらも眠そうに目を擦っている。


「もう夜だし、早く自分のベッドで眠りたいわ。ふわぁ・・・・・・」


(さっきまで寝てたのに、まだ寝足りないのかよ!)


「どんだけ寝るんだよ・・・・・・、まぁオレも疲れたし早くゆっくり休みたいな。やっぱり旅行は疲れるからねぇ、しばらくは王都でダラダラと過したいもんだな」

「あら、忘れているの?五日後に何かあったんじゃなかったかしら」

「五日後?・・・・・・ぁ、あぁ!」


 そういえば・・・・・・、


「五日後には国成記念日か・・・・・・はぁ、一難去ってまた一難・・・・・・か」


 まだ面倒事が残っていたな。


(また会議っぽい雰囲気の場で、色々な人の前で話すのかな・・・・・・、めんど)


「あたしは祭りを適度に楽しむとするわ。あなたは精々苦労していなさいな」

「・・・・・・うっせー」





 薄暗い森の中、微かに話声が響いている。

 そこは、この国の一部の人には聖域と言われている森だ。


「目的地に到着したが周辺に異変は無い、一応周囲の村も見てきたが、反応元は発見できなかった」


 宙に浮いている小さな球に向かって、何者かが話をしている。

 その球は暗い森の中、僅かだが唯一光を放っていた。


「まぁ、こんなに時間が空くとさすがに発見は無理だ。それに準備に時間を掛けすぎた」

「・・・・・・・・・・・・」

「そう言うなって、あそこから此処まではかなり遠いんだ。初めから、こっちが最初に接触するのには無理があった」


「・・・・・・・・・・・・」

「そうだな、恐らくガルダンに居るだろう。この国には多くの”広範囲魔力探知術式”が配置されている。あれの発生を感知できないわけがない、まぁこっちのに比べたら精度も範囲も劣るが。恐らく反応元は王都へ運ばれただろう」


「・・・・・・・・・・・・」

「侵入?おいおい、あの検問を抜けてからだと身元がばれる可能性が高い。もし事を起こした場合、後々面倒だ」


「・・・・・・・・・・・・」

「そうか、近々祭りがあったな。各地からの見物客で溢れるその日だけは、検閲の回転を早くするために多少警備が緩くなるか。ではその時に、見物客に紛れて侵入するとするか」


 そこで声の主はため息を漏らした。


「しかしだな、毎回変な反応を感知する度に召集するのは止めてくれ・・・・・・、これでもこっちは忙しいんだ」

「・・・・・・・・・・・・」

「あー分かった分かった。じゃあ接続を切るぞ」


 光を放つのを止めた球を回収し、懐に入れる。


「ふぅ、めんどうだが仕方ないか。・・・・・・さて、此度の反応元はどんな奴かな」


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