メフィの瞳
フーデルと話し終えたゼノン達は、ボレロの元へ向かう。
事件当日の詳細を聞く為だ。
今回はこれ以上事を荒立て無いためにカリファが話す事になった。
カリファ「ボレロ少佐、海の皇帝についてのお話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
カリファの言葉に嫌な顔をしながらも口を開くボレロ。
ボレロ「ふん。最初からそう話せばいいんだよ。それに、
お前達にこの話をしたところで何もできることは無いだろうけどな。冥土の土産に話してやろう。
奴に出会ったのは航海の訓練をしている時だった。
ここ最近奴の目撃情報は度々上がっていた。
しかし、こちらに手を出してくることは無かった故に
警戒だけしていたのだ。
だが、奴は急に私の乗る船を襲いだした。
何をされたのかも分からなかった。
気付けば私はこの基地のベッドで寝ていたんだよ。
奴の全長は恐らく数百メートル。下手をすると千メートルあるかも知れないな。
どうだ?恐ろしくて怖くなっただろう? SSランクか何かは知らないが身の程を弁えるんだな!
奴はこの私が倒してやる!
三大恐慌を倒したともなれば私の名声は一気に広がるだろう
さっさと行け!」
カリファは一礼をするとゼノンとメフィと共に後ろへ下がった。
少し歩くとカリファが口を開く。
カリファ「・・・・・・確かにあの性格ですとゼノン殿の言った事は有り得るかもしれませんね」
メフィも頷く。
ゼノン「確信は無いがほぼ決まりであろう。」
カリファ「でも、本当だとしたら大問題ですよ! 三大恐慌に自らふっかけるなんて・・・・・・」
そう、ゼノンは海の皇帝とは面識があり
しっかり調教したのだ。
コテンパンにした為に、ゼノンとの約束を破るとは思えない。
恐らく、先程ボレロが言っていたように名声欲しさに海の皇帝に手を出したのだろう。
流石にメフィならまだしもカリファとフーデルには、海の皇帝がゼノンに従属していることは言えないが。
ゼノン「調べる必要があるな」
メフィ「それなら私に任せて!得意分野よ」
三人でボレロと共に船に乗っていた兵士達の元へ訪れる。
カリファ「ちょっといいですか? 私達は王命に従い従軍しに来たブロンギルドのギルドマスターであるカリファと申します。こちらの二人はSSランクのゼノン殿とメフィーロ殿です」
兵士「? はぁ、なんでしょう?」
ここには5人おり、一人が口を開く。
メフィ「あなた達はボレロ少佐の船に乗ってたのよね?
本当に航海の訓練をしていて、急に海の皇帝に襲われたの? あなた達から手は出ていないの?」
少し眉がピクっと動いたのを見逃さないゼノンとメフィ。
兵士「そうです。あの日は航海の訓練をしていて突如奴が現れたんです。私達の抵抗虚しく一瞬で船は破壊されました」
兵士の話が終わると、メフィは振り返りゼノンの顔を見るとゼノンは頷いた。
作戦実行である。
メフィ「我が精霊の眼の前に真実を述べよ」
メフィの眼に模様が入ると兵士達5人は急に我ここに在らずといった感じで、一点を見つめ出した。
まるで、魂が抜けたかのように。
メフィ「あなた達が海の皇帝にであった日の詳細を教えなさい」
メフィがそう話すと一人の兵士が答える。
兵士「答えます。あの日、ボレロ少佐の命により海の皇帝の討伐に向かいました。その船には金で買われた私達兵士のみが載っていました。そして、ボレロ少佐の厳命により名目上は航海の訓練と言われました。我々は沖へ出て、目撃情報があった場所へ着くと運良く海の皇帝に出会えました。すぐ様、奴目掛けて魔法を放つと奴は怒り反撃をしてきました。反撃され失敗したボレロ少佐は、その失態を隠蔽する為に箝口令を出しました。以上が真実です」
兵士の言葉に驚くカリファ。
メフィとゼノンは、やはりなといった感じだ。
ゼノン「やはりな。メフィ、カリファ。海の皇帝の元へ行く前にこの兵士達を連れてフーデルの元へ行くぞ」
頷くメフィとカリファ。
急に本営へ呼ばれたボレロ少佐。
部屋へ入ると優しい仏のようなフーデルの顔は険しくなって
ボレロを見つめている。
フーデルの周りにいる将校達も何やら険しい表情をしていた。
そして、そこにはゼノン達三人も居る。
ゼノン達を見るや否やボレロは何やらニヤつき始めた。
ボレロ「なるほど、この私が呼ばれたのはそういう事ですか。
貴様ら冒険者は、先程の私の話を聞き恐れおおのき任務の放棄を願い出たと。そして、貴様らの尻拭いをする為にこの優秀な私が呼ばれたと言う訳ですか! 良いでしょうフーデル大将。私が率いて奴を藻屑にしてやりますよ!」
声高らかにそう話すボレロ。
ここまで来ると最早怒りも忘れてしまいそうになる。
それほど、ボレロは頭が湧いていた。
メフィは笑いを必死に堪えていた。
将校達は先程よりも眉間にシワが寄っていた。
そして、フーデルが右手を上げ一言発した。
フーデル「そ奴を捕えよ」
突如フーデルの背後にいた兵士達がボレロの腕を組み跪かせる。
いきなりの事にフーデルは混乱しながらも喚いていた。
ボレロ「ッ?!!! なんの真似ですかフーデル大将!!! こんな暴挙許されないぞ!!! 私を誰だと思っている! 教皇猊下の親戚だぞ!!! いくらフーデル大将でも許さんぞ!!!」
その言葉にフーデルは机を思い切り叩いた。
「バンッ!!!」
その音にビクッとするボレロ。
フーデル「ボレロ少佐よ、お前は教皇の後ろ盾を理由に今まで
好き勝手していたな? 配下に暴力を振るったり、上司に舐めた態度をとったりと。そんなお前を放置していた私にも責任はある。
だがな--今回の事は看過する訳にはいかぬ!!! お前の軽率な考えのせいで我々は、いや人間界が滅亡の危機に瀕していたのだぞッ?!!! わかっておるのか貴様ァッ!!!!!!!!!」
いつもは優しいフーデルが激昂している。
それにはボレロはもちろん、周りの将校達も驚いていた。
肝っ玉の小さいボレロなんてわなわな震えていた。
ボレロ「な、なんの話しです?! わ、私が何をしたと言うのです?!」
未だに惚けるボレロ。
そうなる事もわかっていた為に、フーデルは、
フーデル「入って来い!」
フーデルの言葉と同時に入ってくる5人の兵士。
ボレロはその5人の顔を見て驚愕していた。
ボレロ「お、お前達・・・・・・まさか?」
フーデルは口を大きく開いているボレロに対して、
フーデル「さぁ、決めようか・・・・・・お前の処罰を!」
フーデルの言葉に更に口を大きく開き怯えるボレロ。
今まで天狗となっていたボレロの鼻がへし折られる時が来たのだった。
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