魔法適正
ゼノンの家にはリリアが加わり四人と二匹で暮らす事になった。
リリアがゼノン達の元に来て、皆で昼ご飯を食べる。
最初はゼノンとライムの二人だったのに今では賑やかな食事となっていた。
早速ムムはリリアが気に入ったのか隣に座り楽しく話しながらご飯を食べている。
ムムは相手の懐に入るのが上手いようだ。
そんな二人を見てトラリーは何故かモジモジしており何かを言いたげにしている様子。
トラリーの変な様子にゼノンは気付き話しかける事にした。
「トラリーよ、どうした? 何か言いたい事があるなら言うが良い」
突然のゼノンの言葉にビクッと身体を震わせ、何故か顔を赤くしているトラリー。
そんなトラリーをリリアとムムも不思議そうに見ている。
皆の目線が集まり、更に恥ずかしくなってきて、見る見る顔は真っ赤になっていた。
この空気に耐えられなくなったトラリーは勢いよく声を出す。
「あ、あのッ!!! リリア様ッ!!!!!!」
突然大きな声で名前を呼ばれ驚くリリア
「えっ?! あたし?!!! どうした少年?」
今度はリリアが驚いた。
モジモジしながらもなんとか声を出すトラリーは、最早目の焦点すら合っていない。
「あ、あのッ!!! ぼ、僕もリリア様を姉さんと呼んでも良いでしょうかッ?!!!!!!」
リリアとムムはポカンとした表情になっていた。
いきなり何を言っているんだと。
そんな静まった空気の中、トラリーはどうすることも出来なかった。
ゼノンでさえ固まっているのだから。
だが、暫くするとリリアは声を上げて笑いだす。
「アッハッハッハッハッ!!! なんだそんな事か! 少年よ、トラリーと言ったな? お前はムムの兄であろう? ムムが私を姉と呼ぶならお前も私の弟だ、好きに呼ぶがいいぞ!弟よ」
リリアは優しくそう話した。
先程まで緊張でおかしくなっていたトラリーの緊張は解け
笑顔になる。
「あ、ありがとうございます!!!」
(ふむ。家族を欲していたのだな。だとすると私は何になるのだ・・・・・・父か?)
皆が笑い合う中、ゼノンは一人そんなことを考えていのであった。
皆の仲も深まり?? 食事を終えるとゼノンが言う。
「トラリーよ。丁度良い、お前の適性は火だったな。それならリリアに教えてもらうといい」
トラリーは目をキラキラさせていた。
早く魔法が使いたくて仕方がない。
毎日ゼノンに魔法について聞いてくるのだ。
そこで抜擢なのがリリア。
彼女の火魔法において右に出る者はいないのだから。
「そうか、トラリーの適性は火なのだな。なら私の得意分野だ! 任せておけ!!!」
「はいっ!!! よろしくお願いします!!!」
「では早速外に行こう!」
「はいっ!!!」
こうして二人は流れるように外へと行く。
トラリーは色んな意味でルンルンで駆け出す。
しかし、置いてきぼりにされたムムはというと面白くないと言った表情をしていた。
自分だって魔法が使いたい。
トラリーばかりずるいと言わんばかりに・・・・・・。
「むーッ!!! にーにばかりずるい!!! 私も魔法の訓練したい!!!」
確かに不公平だ。
とはいえ、ムムにはまだ早いというのも事実。
しかし、覚えておいて損は無い。
今は無理でも成長すれば必ず必要となるのだから。
こうしてムムにも訓練を施すことにした。
「ふむ。それもそうだな。これでは不平等だ。
ならば、ムムは私が教えてやろう」
「ゼノン様は聖魔法も使えるの?!」
「あぁ。私に使えない魔法はない」
サラッと発言したがそれには長年ずっと一緒にいたライムも驚いた。
「えぇーッ!!! 魔族でありながら聖魔法も使えるのですか?!!! 流石はゼノン様・・・・・・」
ライムは尊敬の眼差しでゼノンを見つめている。
いや、いつもかもしれない。
本来魔族にとって聖魔法は、毒のようなもの。
人間を癒す聖魔法も魔族にとってはれっきとした攻撃魔法なのである。
だから、本来魔族に聖魔法など使えるはずがなかった。
なのに、ゼノンは使えるのだ。
ライムが驚くのも無理はない。
「うむ。ではムムよ、まず聖魔法について知っておく必要がある。聖魔法とは主に回復魔法だ。聖なる光で傷付いたものや欠損した者を癒す。もちろん魔族に対しては攻撃魔法にも成りうる。だが、低位の聖魔法なら魔族どころか魔物でさえも癒すことはできる」
その話を聞いて何かを思い出すムム。
「へー!!! だからミノの事回復できたんだね!」
それに対してミノも「ブモォッ」と喜ぶ。
ゼノンはその様子でムムが魔法を使えたことを悟る。
「? ムムは既に魔法を使えたのか?」
「うん!!! ゴブリンに襲われた時にミノが怪我をしちゃったの! それでね、可哀想だなって思って治れッ!!!って頭の中で思ったらできたよ!!!」
ムムもサラッと凄いことを言ったが、ゼノン程になると驚きはしない。
「ふむ。ムムは正に聖魔法に適しているな。魔法というのは想像力だ。魔法が使えたのもムムの想像力が豊かな証拠」
「家にいた頃は外にも行けないしずっと家の中に居たから頭の中でずっとお話とか考えてたの!」
ずっと家に監禁されていたムムとトラリー。
何をするかと言われてもすることがなかった。
多少の本はあったが何度も読んだ為、長くはもたなかった。
その為、頭の中でお話を考え遊ぶしか無かったのだ。
いわゆる妄想だ。
「なるほどな。ムムは本を読んでみたいか?」
「うん!!! 読んでみたい!!!」
「そうか。ならば、明日は王都の街へ行き本を買いに行くとするか。それにムム達の服も少ないしな」
「本当に?!!! やったーーー!!!」
まさかのお出掛けに歓喜するムム。
本を買うのは勿論だが、王都を散歩するのも憧れなのである
そんな中、ムムが喜んでいると、トラリーとリリアが訓練を終えて戻ってきた。
そして、トラリーはというと、何故か黒焦げになっている。
「ただいまー・・・・・・バタンッ」
床に倒れた。
「にーに大丈夫ッ?!!!」
いきなり倒れたトラリーに駆け寄るムム。
なんとも兄想いである。
そんなムムの心配を払う為、リリアが微笑みながら話す。
「心配するなムム。暴発させただけだ! しかし中々素質はあるぞ。その歳であの威力なら大したものだ!!!」
「あ、リリア姉さんにそう言って貰えると嬉しいです・・・・・・アハハー、ガクッ。」
リリアに褒められ、再び意識を取り戻すも、再び力尽きてしまった。
「にーに! 私が回復してあげる!!!」
ムムはトラリーに近付くと回復魔法を施す。
ミノの時に使えた感覚を覚えていたのだ。
あっという間にトラリーの火傷は治り完治してしまった。
それにはトラリーもリリアも驚く。
「ムムッ!!! もう魔法を使えるの?!!!」
「ムム! 貴方凄いじゃないッ!!! その歳で使えるなんて、天才ね!」
普通の人は大体7歳になり適性がハッキリと解り、そこから練習をする為、魔法をちゃんと使用出来るようになるには1年はかかる。
ムムの年齢は5歳。正に天才と言っても過言では無い。
「うむ。2人とも中々の素質があるようだな。ムムには先程話したが、明日は本や服を買いに外へ行くぞ」
「外・・・・・・ですか?」
トラリーは不安だった。
外へ行けば、奴隷商達に会うかもしれない。
またあの悪夢を思い出してしまう。
しかし、ゼノンはすぐ様否定する。
「違うぞトラリー。明日行く場所は王都だ」
「えぇっ?!!! 王都ですか?! 一ヶ月はかかりますよ?!!!」
そう。この地から王都までは歩いて一ヶ月。
馬車でも半月以上かかるのだ。
そんな不安を他所にリリアだけは何故か笑っていた。
「ふふふっ。大丈夫よトラリー! ゼノン様なら一瞬だわ!」
トラリーは首を傾げる。
よく分からないがリリアが大丈夫と言うならそうなのだろうと言い聞かせる。
こうして明日に備え今日は皆早く眠りにつくことにした。
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