初めての奴隷
ゼノンは奴隷商館に来ていた。
というのも、あの大豪邸をレイラとライムの2人で清掃するのが厳しいからだ。
それに、もし来客が来た時にスライムである、ライムが居たんじゃ驚かせてしまうし、変な噂もたってしまう。
そこでメフィの言葉もあり奴隷商館に来ていた。
ちなみに、今回はエリシアを連れて来ている。
彼女は算術の心得や商才を持っている為、自ら志願してくれた。
エリシアと共に早速出向き、とある奴隷商館に着く。
奴隷商館はかなり大きく、そして外装も他の建物に比べると派手であった。
それ程儲かっているのだろう。
中へはいると受付の者に色々質問された。
予算は?何人必要か?何の奴隷か?種族は?などなど。
予算は設けず、人数は5人ほど、そして家事奴隷、種族は問わない。
そんな受け答えをしていると、奥から男が出てきた。
「どうも初めまして! 何やら奴隷をお求めのようですね?ここからは私めが案内させて頂きます! この奴隷商館の会長のスミスと申します! ささっ!こちらへ!」
どうやら会長自ら案内してくれるようだ。
会長にしては普通の見た目の男である。
こういう所は派手なデブが出てくるものだと思っていた。
奥の扉を開けるとそこはまるで牢屋のようになっていた。
1つの牢屋に大体4.5人ずつ。
そして男女や種族も分けられている。
見やすいといえば見やすい。
奴隷にしては肉付きも対して悪くない。
ただ、奴隷達の目は生気を失っていた。
ゼノン達を見るやすぐに牢ギリギリまで近づきアピールしてきた。
皆ここから出たくて必死なのだろう。
しかし、スミスは立ち止まることなくどんどん奥へと歩いていく。
何故止まらずに奴隷達の説明をしてくれないのか不思議に思っていると、スミスは再び口を開いた。
「ここの部屋は一般奴隷となります。この先は普通の者より優秀な奴隷達が住んでいます。貴方様は値段は気にしないと仰いました。それなら、貴方に見合う奴隷をと思いまして」
ゼノンは頷く。
どうやらこの奥は特別な奴隷達が居るようだ。
確かに、道中鑑定したが皆平均的もしくはそれ以下であった。
スミスに連れられ奥へはいると、1人1人に部屋が与えられており、牢屋も普通の部屋のようだった。
「ここには12名程の奴隷がおります。私は一旦下がるのでゆっくりご覧下さい。ちなみに先程の一般奴隷は金貨5枚。そしてここに居る者達は金貨50枚となります。では失礼。」
そう言うとスミスは下がり、この部屋にはゼノンとエリシアだけが残った。
「ふむ。金貨50枚か・・・・・・安いな」
「そうですね・・・・・・でも人間達の平均年収は12枚と聞きました。だと購入するのは厳しいでしょうね。ただ、
生きてる者に付ける値段としては安い気がします。」
さすがはエリシア。人間の年収も事前に調べていた。
もし、商館がぼったくるような事があればそれ相応の対処を
しなければと思っていたがエリシアが一緒なら心配なさそうだ。
そして、一部屋ずつ見て回ることにした。
エリシアと共にゆっくり見て回ると5人程良さそうな人物を見つける。
エリシアにスミスを呼んで来てもらい、スミスに注文すると
5人は部屋から出された。
ゼノンが選んだ5名は人族が2人、獣人族が2人のエルフ1人。
人族の1人はハドソンという50過ぎた男である。
ステータスも高く、魔法適性は土。何よりスキルが2つある。
格闘術に礼儀作法。まさに、執事にピッタリだ。
そう思い彼を執事長にしようと考えていた。
もう1人はソルナという女性で20代だと思われる。
彼女は魔法適正が風であり、商才スキル持ちだ。
彼女に商売などを任せるのもいいかもしれない。
そして獣人族の2人はどうやら親子のようだ。
母親がファルニール。娘がフェルニール。
種族はなんと、九尾族という狐族の最上位種である。
スミスはどうやらただの狐族と思って売っているようだ。
でなければ、九尾族が金貨50枚で売られるなど有り得ない。
少なくとも300はするだろう。
それ程珍しい種族なのだ。
ちなみに、娘の方はムムと同い年であった。
スキルは獣化と人化、そして魔法適正は火だ。
最後のエルフ族だがハイエルフであった。
名前はエオメル。男だ。
エリシア曰く、ハイエルフはとても手先が器用で物作りが
得意なんだとか。
そしてスキルは神弓術。魔法は風。
ただでさえ、エルフは弓を得意とするのにスキルの神弓術が合わされば最強だ。
ゼノンでさえ喰らえばかすり傷を負うだろう。
以上の5名がゼノンとエリシアが選んだ人物だ。
たった金貨250枚でこれだけの逸材を手に入れることができた。
だいぶ安い買い物だろうとゼノンは思う。
だが、1つゼノンはスミスに確認しなくてはならない事があった。
奴隷購入の手続きもある為、一旦ゼノンとエリシアはスミスと共に部屋へ入る。
「ゼノン様、この度は一度に沢山のお買い上げありがとうございました! 5人で締めて250金貨です! 一括で払われますか?
それとも分割で?」
「一括で良い。その前に1つ聞きたいのだがスミスよ。
お主は鑑定持ちだな? なら、あの獣人族が九尾族である事、
そして、エルフがハイエルフである事も知っていよう?」
その言葉にエリシアは驚いた。
鑑定持ちなら尚更、あの値段で売るのはおかしい。
何か裏がある。エリシアはそう思っていた。
ゼノンの言葉にスミスは微笑む。
「貴方様も鑑定持ちでしたか。それに私が見えないという事はかなり高位の方ですね? さて、何故知っていながらあの値段なのか、という事ですね? そんなのは簡単な事です。適切な値段にしたら買い手が居なくなるからです。
ゼノン様、貴方は入るなり奇異の目で見ていましたね?
確かに奴隷商館と聞けば聞こえは悪いでしょう。中には奴隷達を雑に扱っている所もあります。ですが、ここにいる者たちは奴隷になれなければ路頭に迷い餓死していた者達が多数です。親に捨てられたり、親を失ったり、そして親から逃げる者までいます。
そういった者達に新たな仕事、そして住処を与えるのが私達奴隷商館です。
もちろん、飼い主が見つかるまでは私達が食事等もあげています。
ですが、やはり毎日タダ飯を食わせるのは経済的にもキツく、最近は一日2食しかあげられていません。私のポケットマネーを出す事もしばしばです。つまり、私は金も大事ですがそれ以上に買い手が見つかることの方を優先させているのです。」
エリシアは納得した。それと同時にスミスという人柄を勘違いしていたことに恥じる。彼を悪く思っていたが、スミスは善人であった。
ゼノンも奴隷について深く考えさせられた。
魔界には存在しない為、考えた事がなかった。
しかし、スミスの言う通りここにはスミスが救ってくれなければ野垂れ死んでいた者達が山ほどいるだろう。
ゼノンは奴隷について考え方を改める。
そして、スミスという人間を気に入った。
「スミスよ、ここに金貨1000枚ある。お前もここの会長
ならいい服を買うがいい。そして、この金で奴隷の者達の食事の足しにしてくれ。道を間違えるなよ。」
ゼノンはどっさりした袋をスミスの前に置くとスミスは驚愕した。
「あ、ありがとうございます!!! ですがこんな大金受け取れません!!! 価格の4倍もあるじゃないですか!!! どうかしまってください!!!」
「気にする事はない。それに1度出したものだ。私に恥をかかせないでくれ。」
そういうとスミスもようやく受け取ってくれ、購入手続きも完了した。
店を出るその時までスミスは何度も御礼を言ってきたが
ゼノンは気にするなの一言。
こうして、新たに5人を連れて家に帰るのであった。
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