遅すぎた後悔
ゼノン達が風呂から出ると既に皆も起床していた。
ゼノン達がどこへ行っていたのか気になったのかリリアが
尋ねるも、ムムは笑って誤魔化す。
本来だったら今日帰る予定・・・・・・だったが、ゼノンの粋な計らいで二泊する事になった為、今日は皆で山へと散策する。
「あの小山の頂上で飯を食べるとしよう」
ゼノンの案に皆が大賛成する。
旅館の女将が調理場と材料を貸してくれた為、シリュウ特製弁当を持参しての登山だ。
そして、道中でも珍しい食材があればシリュウが率先して
持っていく。
ムムやトラリー、フィルルもシリュウのお手伝いをしながら山を登る。
皆で山の中腹に差し掛かった頃、シンがゼノンの元へ寄る。
「父上・・・・・・誰かが監視しています。俺が殺ってきてもよろしいでしょうか?」
遠くからゼノン一行を監視している気配を感じていた。
もちろんゼノンも気づいている。
「うむ。登った頃から見ていたな。害が無ければと思ったが、奴らは武器を所持しているな。
ムム達が楽しんでいる中、奴らが現れれば興醒めしてしまう。聞きたいこともあるし私も行こう。メフィ、先に行っててくれ」
「はっ!!!」
「子供達には用を足しに行ったとでも伝えておくから早く
帰ってきてね?」
メフィに後のことを任せると、ゼノンとシンはサッと消えていった。
「山賊か盗賊でしょうか?」
フレイが近寄りメフィに問う。
この辺は辺鄙な地であり、人が少ない。
わざわざこの地で、ゼノン達を狙う者でも無さそうだ。
つまり、賊の類いだろうと予測するメフィとフレイ。
「そうかもしれないわね。せっかくの旅行なんだから、賊なんかに邪魔されたくないわね」
とにかく、ゼノンとシンが行ったならこれで終わりであろう。
メフィ達は気にせずまた山を登る。
そんなことは露知らず、ムム達も笑顔でシリュウの元、山菜や
キノコ類を集めていた。
「あの旅館を襲って金目の物を頂こうと思ったが作戦変更だ! あの家族連れをやるぞ!!! 女はべっぴんばかりだし、今夜は楽しませてもらおう!」
「最高ですね頭!!! まさか、この地で女に出会えるとは!!!」
「それもあんなに沢山!!!」
「おい! 小さい子もいるじゃねぇか!!!」
「お前は変態野郎だったな! だが、悪くねぇかもしれねぇな!!! 終わったら次は俺に回せ!!!」
「お前ら揃って変態野郎じゃねぇか!!! よしっ、行くぞ!!!」
山賊頭をはじめ山賊達は10人ほどの小規模である。
たまたま、この地に流れ着きゼノン達を見つけたのだ。
山賊達は喜々としていたが、相手が悪かった。
ゼノン達を見つけなければ死ぬことは無かっただろうに・・・。
山賊達が一斉に行こうとしたその瞬間、目の前にゼノンとシンが現れたのだ。
音もなく、どこからともなく現れたその2人に山賊達は驚いていた。
「なっ?! 気付いてやがったか!!!」
遠目から見ていたが、この2人があの一行である事は山賊も気付いた。
山賊達は剣を抜きゼノン達に構える。
そんな山賊達にゼノンはゆっくり口を開く。
「私は今機嫌がいい。だから、すぐに殺さず少しの
猶予をやろう。何をしにここへ来た?」
山賊達は舐めたその態度に皺を寄せる。
「舐めた事言ってんじゃねぇぞ!!!」
「テメェはすぐ殺してやるよ!!!」
1人の山賊がゼノンに斬り掛かる。
「ぐへぇッ!」
しかし、斬り倒れたのは山賊の方だった。
ゼノンの前にシンが出て一瞬にして斬り伏せたのだ。
いつ斬ったのかも見えなかった山賊達は後退りする。
体が勝手に後退するのだ。
シンの一撃で山賊達も気付いてしまった。
コイツには勝てない。
あまりにも違い過ぎる実力。
シンのたった一撃で山賊達の心は折れ、山賊頭は話す気になった。
「お、俺達はあの旅館を狙ってただけなんだ!!!
お前達には手を出さない!!! 約束する!!! だから見逃してくれ!!!」
震えながらそう話す山賊頭。
しかし、ゼノンとシンは許す気などサラサラない。
「ふむ。あの旅館は今私達が泊まっているところだ。それに私はあの旅館が気に入っている。」
その言葉にさらに慌てる山賊達。
なら、もうあの旅館は行かずに引き上げると言う山賊達。
しかし、ゼノンはそれすらも許さない。何故ならば・・・
「お前らは先程、私の娘に対して低俗な言葉を用いていたな?口にするのもおこがましい。そんな貴様らを私が
いや、私達が許すと思っているのか?なぁシン。」
シンは山賊達を睨んでいる。
視線で人を殺せるんじゃないかと思う程、鋭い眼光で山賊を
睨み付けている。
そして殺気も溢れている為、山賊達は腰を抜かしている。
「コイツらは妹を侮辱しました。妹達と同じ地に立っている事すら反吐が出る。父上、もう殺ってしまっていいですか?」
冷酷な表情で山賊達を見つめるシン。
最早止めるのも酷だと思いゼノンは許す。
「うむ。だが頭は私が相手しよう。私もまだまだコントロールが出来ておらぬな。
どうも娘を侮辱されたのが許せん。
自分の手で殺さなくてはこの気持ちは鎮まらぬ。」
「承知!!!」
そう話すとシンは手下の山賊全てを瞬殺していく。
山賊達はその速すぎる斬撃に斬られたことにも気付かぬまま絶命したのだ。
痛みを知ることなく死ねたのがせめてもの救いであろう。
そして残された山賊頭。
「安心しろ。すぐに仲間の元へ送ろう。心臓掌握」
ゼノンの手には山賊頭の心臓が掴まれている。
そして山賊頭は何かが胸からポッカリと無くなった気がした。
「お、おい・・・・・・その心臓はまさか・・・・・・」
「うむ。貴様の心臓だ。我が娘達を貶した罪は重いぞ
山賊。散れ」
そう言い終えるとゼノンは握っていた山賊頭の心臓を握り潰した。
そして糸の切れた操り人形の如く、山賊頭は崩れ落ちる。
「父上のその魔法は無敵ですね。対処方法あるのですか?」
あまりにも強すぎる魔法にシンは疑問を浮かべていた。
「ふむ。私がこの魔法を発動する前に殺せばいい。」
そのあまりにも不可能な対処方法にシンは思わず笑みをこぼしてしまった。
「ふふっ、つまり対処不可能という事ですね。」
シンの返答に対してゼノンも笑みを零す。
「お前のスピードなら可能だと思うがな」
「お戯れを。ですが、いつか父上より速くなりたい。
そう思っています。」
「うむ。如何なる時も向上心だけは捨ててはならぬ。
例え目の前に巨大な壁が現れようと諦めるな。まずは、どこまで登れるかを考えるのだ。さすればいつかは私より速くなれよう。」
ゼノンの言葉に心打たれるシン。
いや、シンに至ってはゼノンの全ての言葉に感服するであろう。
ゼノン信者と言っても過言ではない。
こうして山賊は早々に倒して再びムム達に合流するのであった。
「面白いな、続きが読みたいなと思ったらブックマーク、高評価をお願いします。そして誤字脱字や意見などあったら是非コメントしてください。」




