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望まぬ形

ムム達はゼノン達と合流し、そのまま皆で家に帰った。


ムムとトラリーは庭でライム達と遊んでいる。

その間にリリアは、今日あった事の経緯を話した。




「・・・・・・バリアンよ、その小娘を殺しに行く。

準備をしろ。」


「いやいや、そのような相手はワシ1人で十分です。準備等いりませんな。今すぐこの手で絞め殺してみせましょう。」


可愛い娘がいじめにあった。

ゼノンとバリアンは怒りのあまり、物騒な事を言い放つ。


そんな2人にリリアは苦笑いせざるを得ない。

そして、見兼ねたメフィが宥める。


「ちょっと2人とも!落ち着きなさい。確かにこの行為は許されない事だわ。でも、あなた達が出たら問題になるわ。そしてムムだってせっかく始まったばかりの学校生活なのに、もう終わってしまうかもしれないわよ? 今回もリリアとシンが助けたのでしょう?

それなら同じことは繰り返さないはずよ。

しばらくは様子を見ることにしましょう」




ムムの為に殺害計画は中止となる。

まさか、初日から子供がいじめられるとは思わなかった。

しかし、ムムは強い。

水をかけられ罵声を浴びせられても平気な顔をしていたそうだ。


「ではメフィの言う通り、しばらくは様子を見るとしよう。」





翌日になりムムは学校へ行くと驚く光景が目の前に拡がっていた。



ムムの周りにはなんと、ミレディ取り巻き4人衆が集っているのだ。

4人は何度も謝り、更にはプレゼント等を渡してきた。

まるで媚びを売ってるかのように。




しかし、ムムはこの4人の謝罪を受け取る気がしなかった。

何故なら、シンリーには誰一人謝ることはなかったのだ。


ムムには謝りシンリーには謝らない。


そしてこの4人は全てを主犯のミレディのせいだと強調する。

ムムはそれが不快で仕方なかった。



授業が終わり、放課後になると四人衆がまたムムの元へやってきて自己紹介を勝手に始めた。


ちなみにミレディはこの1日ずっと1人だった。




「本当に先日はごめんなさいね! 本当は嫌だったのよ、あんな事・・・・・・私の名前はマーサ・ハミルトンよ!

よろしくね!」


「私は、フーリエ・ミレノバよ!ミレディに無理矢理やらされたのよ! 許してくれるよね? お詫びにこれ

あげるから!」


「俺の名前はハーバー・トルーニー! ミレディの奴がおもしろい事をするって言うからやっただけなんだ、

いじめる気なんて無かった。すまん!!!」


「俺はロックス・シロレー! 昨日は本当にごめんよ。お詫びに見てて!!! ハーバー行くぞ!」


ロックスはバケツを掴みハーバーに合図をすると、あろう事か今度はミレディに水をかけたのだ。


いきなりの事でムムも止めることが出来ず唖然となっていた。

そんな事望んでない。仕返しなんかしなくていい。

そう思うも、既に遅かった。


ミレディはずぶ濡れになり、椅子に座っている。

これにはシンリーも驚いていた。




当の4人はゲラゲラと笑い合い、ムムに擦り寄るかの如く

水を掛けたことを誇らしげに伝えてきた。


まるで、ムムの為にやったと言わんばかりに。

普段温厚なムムだが、初めて持つ感情を抱いた。

『怒り』だ。

今まで、ムムはただの一度も怒りを感じた事がなかった。


どんなに親に突き放されても、寂しいとは思うが怒りは感じなかった。


だが、今のムムは悲しいと同時に怒りも覚えている。




ムムはずぶ濡れになったミレディの元へ向かう。


「ミレディちゃん、大丈夫? よかったらこれで拭いて。」


ムムはびしょ濡れになっているミレディにハンカチを渡す。


が、手で振り払われてしまった。

ミレディは息を荒くし、ムムを睨みつけている。


「やめてッ!!!!!!!!! そういう慰めとかいらないから!!! どうせ、心の中では笑ってるんでしょ?!!! 貴女の全てを見下していた私が実は下だった・・・・・・笑いたければ笑えばいいじゃない!!! そういうのが1番嫌なのよ!!!」




ミレディは大声で叫ぶ。

水に濡れているが涙を流しているようにも見えた。


ムムは落ちたハンカチを拾う。

そして、その顔は笑顔ではなく、とても寂しい表情だった。




するとこの光景を見ていた四人衆が後ろから話しかけてきた。


「ほらねムムちゃん! ミレディってそういう子なんだよ! 自分勝手でワガママ!」


「せっかくのムムちゃんの好意を無にするんだもんね! それよりもシン様の場所行こうよ!」


「笑ってやればいいんだよそんなやつ!!! シン様よりムムちゃんのお姉さんのところ行こうよ!」


「昨日の今日で、立場が一気に逆転しちゃったもんな! リリア様にも謝らないとな!!!」




「いい加減にしてよッ!!!!!!」


ムムは振り返り、4人に向かってとうとうキレた。

4人は驚いた顔をしている。

何故、自分達が怒られているの理解出来ていないのだ。


「あなた達はさっきからムムにばかり謝ってるよね?

どうしてシンリーちゃんには謝らないの? ムムが公爵の

人間だってわかったから? ムムのお兄ちゃんとお姉ちゃんが有名な人だから?

それじゃあ、ただのムムだったら謝らないの?

そんなの間違ってるよ! 悪い事をしたら謝る。

当たり前のことでしょ? あなた達は人を見て選んで、すぐに擦り寄るんだね! ムムはそんな人達とは仲良くしたくない!

ミレディちゃんを寄って集って虐めるような人達とは友達になりたくない!!!行こう、ミレディちゃん、シンリーちゃん」




ムムはそう言い残すと、ミレディとシンリーの腕を掴み教室を後にした。

いきなりの事にミレディも唖然としながらも、ムムに引っ張られ外へと向かう。


庭のベンチに着くとムムとシンリーはハンカチでミレディの頭を拭いてあげた。




「どうして?」


2人で拭いているとミレディは急に口を開いた。

2人はなんの事か分からず首を傾げていると続けて


「どうして私を助けるの? あの4人が言ったことは本当の事よ。私が2人を狙わなきゃ、あなた達はいじめられることはなかったわ。私さえいなければ辛い思いはしなくて済んだのよ? それなのに、どうして私を助けるの?」


ミレディの言ってる事は確かにわかる。

現にミレディが虐められている時に、シンリーは見て見ぬふりをしていたのだ。

なんなら、少しいい気味だとも思っていた。

でも、ムムに連れられ仕方なくここまで来たのだ。


しかし、ムムは違った。




「でも、ミレディちゃんも虐められる辛さはもう分かったでしょ? ならもういいじゃん。1人になった時辛かったでしょ? それで頭のいいミレディちゃんなら分かったはずだよ? だから、これ以上はムム、許せなかった!もう十分だよ!ミレディちゃんもムムとお友達になって!」


「私はムムちゃん程優しくはなれない。貴女のした事は今でも許せない。でも、それ以上にあの4人のやってる事は間違ってたよ。見てるだけだった私も卑怯だった。ごめんね。私もよかったら友達になりたいな」




ムムとシンリーの言葉にミレディは涙を流した。

今度は水ではなくちゃんと涙を流している。

ムムの優しさにミレディは心が痛かった。

後悔と申し訳なさ、そして優しさに涙が溢れた。




「ひっく・・・・・・ご、ごめんなさいムムさん・・・・・・

シンリーさん・・・・・・わ、私2人に酷い事した・・・・・・下の者を見下して優越感に浸っていたかったの。でも実際は私なんて家名ばかりの一般人よ、それが悔しくてあなた達に当たってしまっていたの、本当にごめんなさい。謝って許される事じゃないのはわかってる。だから、無理して友達になんてならなくていいの。貴女達の邪魔はしないから。」




ミレディは今の自分が許せなかった。

2人の優しさにようやく気付けたのだ。

自分はただ家名に溺れ下の者を見下していた。

でも実際、自分は名ばかりの人間。

魔力が少し高いだけ。

2人と今更友達になんかなれない。




「帰りに美味しいパン屋さんあるから3人で行こう!」


しかし、ムムはミレディの言葉を無視した。

そんな言葉受け取らない。

そう言っているかのように無視をした。

シンリーもそれに気づいたのか、


「なになに?凄い気になる! でも私、大人が

居ない時に買い物したことないない・・・・・・」


「ムムもした事ない・・・・・・どうやって買うんだろう・・・・・・」


2人は落ち込んだ素振りを見せる。

そんな、あまりにも見え見えな2人の演技にミレディは

思わずクスッと笑ってしまった。


「ふふっ、あなた達は本当に馬鹿な人達ね!

そして本当に優しくて暖かいわ・・・・・・昨日は本当にごめんなさい! そして私なんかと友達になってくれてありがとう。よかったらパン屋さん一緒に行っていいかしら?

御礼に私がお2人にパンを買ってあげますわ」


「本当に?! ありがとうミレディちゃん!!! 行こう行こう!」


「ちょうどお腹空いてたんだよね! 早く行こう!」




ムムとシンリーはミレディの手を握り、3人で手を繋いで歩いた。

ミレディは昨日までの自分を恥じた。

家名ばかりを気にして居たが、今は素の自分でいられる。

2人と居るととても居心地がよかった。

そしていつの間にか自然と笑顔になっている。


3人はこれから卒業するまでずっと親友になるのだった。

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