本物の友達
「おはよう!」
教室に入るとムムはミレディとシンリーの元へ駆け寄った。
2人は既に椅子に座っており、ムムが来るとすぐに向き直り笑顔で返す。
「あら、おはようございますムムさん!」
「ムムちゃんおはよう!」
数日前の一件以来、3人は仲良しになったのだ。
席は隣同士で帰りもいつも一緒。
寄り道をしてはミレディに美味しいお店を色々紹介してもらった。
「ねぇねぇミレディちゃん!!! 今日はどこの美味しい場所を教えてくれるの?!」
ムムはミレディが紹介してくれるお店が楽しみで仕方なかった。
ムムは元々王都に住んではいなかったが、ミレディは
生まれも育ちも王都出身だ。
その為、王都は詳しかった。
「それなんですが、今日はよかったら私の家へ遊びに来ませんか? とても美味しいお菓子が入りましたの」
「本当に?!!! 行きたい!!!」
「私もいいかな?!」
「もちろんですわ! それでは帰りは私の馬車に乗り皆で帰りましょう!」
ムムは大喜びしている。
初めての友達の家。
人間の友達が出来たのも初めてであり、友達の家に遊びに行く事は憧れていたのだ。
ムムは授業中も落ち着きがなく今か今かと放課後を待ち望んでいた。
「よーし! それじゃあ今日の授業はここまでだ!」
先生の号令を合図にムム達は急ぎ足でミレディの馬車へ向かう。
「ム、ムムさん?! そんなに慌てなくても大丈夫ですわよ?」
「あははは、これは耳に入ってないね! ミレディちゃん家に行くのが楽しみすぎてそれしか見えてないって感じだよ」
シンリーの言う通り、ムムはこの時を今か今かとずっと今日1日待っていたのだ。
3人はミレディの馬車に乗る。
ムムが慌てて他の馬車に乗ったのを見ていたシンはムムに駆け寄るも、友達の家に行くとの事で了承した。
これは、ゼノンやメフィにも言われていた事だからだ。
友達が出来て遊ぶ事になったならムムの好きなようにさせる。
しかし、帰りの時刻は決め、ザックスに馬車で迎えに行かせる。
これがゼノンとムムの交わした約束だ。
そんなこんなでミレディの家へ着くと、そこはとても綺麗な豪邸だった。
ムムの家ほどでは無いが他の家と比べるとかなり立派だった。
家に入ると執事の方が出てきて、ムム達の荷物を預かってくれる。
ムムの家では自分のことは自分でする為、驚きでいっぱいだった。
ミレディに聞くといつもこうなのだと言っている。
そしてミレディの両親もやってきた。
「これはこれは可愛いお嬢さん方、ようこそブレンタール家へ。ミレディの初めての友達の来訪と聞いてね! 張り切って料理を作らせたからゆっくりしていってくれ!」
「お、お父様!!!」
恥ずかしかったのかミレディは慌てて父を止めに入った。
「この子は根はいい子なんだけど気難しいところがあってね。友達ができるか心配だったのよ---2人とも、ミレディのお友達になってくれてありがとう」
シンリーはてっきり前のミレディの様に家柄や爵位を気にする固い貴族と思っていたが物腰の柔らかそうな両親で驚いていた。
「こちらこそ、ミレディちゃんがお友達になってくれて凄い嬉しいです!」
「ムムさん・・・・・・」
ミレディは改めてムムの友達と言う言葉に感動した。
ミレディには今まで友達という友達はいなかった。
皆が皆、ミレディに擦り寄るだけの外面だけの関係だったのだ。
最初はそれでもいいと思った。
しかし、結局は外面だけの為、遊ぶことはなく、ミレディは家ではいつも一人だった。
そんなミレディを両親も心配していたが、学校が始まって早々に娘が友達を連れてきた。
ミレディはもちろん、両親もそれがとても嬉しかったのだ。
ムム達は両親に案内され、ひとつの部屋に入ると
そこには、豪華なお菓子や飲み物がまるでバイキングの様に
並んでいた。
「すごーいッ!!! これみんなムム達が食べていいの?!」
「いや、ムムちゃん・・・・・・流石にこの量は食べられないよ・・・・・・」
「好きなだけ食べてくださいね2人共!」
「お代わりも沢山あるか遠慮しないでくれたまえ。ミレディのお友達なら私の娘も同然だからな!ハッハッハッ!!!」
娘が友達を連れて来た事に1番喜んでいるのは父親かもしれない。
そう思えるほど、父親は上機嫌だった。
すると急にミレディの母も口を開く。
「ムムちゃんとシンリーちゃんだったからしら? 娘は学校ではどう? 聞いてもなにも教えてくれないのよ、思春期かしら?」
娘の学校生活が気になる母。
しかし、ミレディは母には何も言わなかった。
いや、言えなかったのだ。
こんなに優しい両親の元で、あのような非道な行為をしてしまった事を。
だからミレディは何も言わなかった。
ミレディはどこが不安げな表情をしており、母親を止めていた。
ムムとシンリーに万が一、あの事を話されては下手すると
勘当されるかもしれない。
だが、ムムは笑顔で母に答えた。
「ミレディちゃんはとても優しくて何でも教えてくれる友達だよ! それに色んなところも教えてくれたの! 毎日毎日仲良しでミレディちゃんが大好き!!!」
思わぬ返答で驚くミレディ。
ムムが話終わると、続けてシンリーも口を開いた。
「ミレディちゃんは物知りでとても賢い人です。
よく勉強も教えて貰ってますし優しくて大切な友達です。」
ミレディは思わず涙を流した。
あの様な非道な行いは時間が経っても許されることではない。
しかし、2人はミレディを気遣い母の前では好感の持てる
返答しかしなかったのだ。
その気遣いがミレディは本当に嬉しかった。
ミレディの母も父も上機嫌になり、奥の部屋へ行きさらに
ケーキを取りに行った。
2人が居なくなったのを見計らい、ミレディはムムとシンリーに御礼を述べる。
「ムムさん、シンリーさん、親の前で気遣って頂きありがとうございます。2人のおかげで今まで通り生活出来ます。本当にありがとう」
ミレディは感謝するもムムは困惑した表情をしている。
「ん? どういう事? 気遣ってなんかないよ? ムムはただ、学校や外での事をミレディちゃんのお母さんに教えてあげただけだよ?」
ミレディはまたしても驚いた。
そして少し理解が出来なかった。
するとそんな2人を見てシンリーは笑い、
「ミレディちゃん。ムムちゃんはこれが素なんだよ。本当にミレディちゃんの事が大好きで、ありのままの事を伝えたんだよ。だから、もうあの事なんて気にすらしてないんだろうね。もちろん、私ももう気にしてない。今は、私達友達でしょ?」
ミレディはシンリーの説明でやっと理解した。
今目の前で美味しそうにお菓子を食べてるムムは、とても
優しく心の広い女の子なんだ。
まるで自分が小さく見えてきた。
そしてシンリーの言葉にも涙が出てきた。
あの事を忘れるほど、楽しんでくれてたのかな?
もしそうだったら嬉しいな。
ミレディはそう思っていた。
「はい! 私達はずっと友達です!!!」
今回の食事会では本当の意味でミレディもムムとシンリーと友達になれたんだと実感する事が出来たのだった。
「面白いな、続きが読みたいなと思ったらブックマーク、高評価をお願いします。そして誤字脱字や意見などあったら是非コメントしてください。」




