聖女様
四人で仲良く手を繋ぎ王都の街を歩く。
そして服屋に着くとゼノンは立ち止まった。
「リリアよ。私に服の知識はない。お前が二人を連れて買いに行ってきてくれるか? 金はいくら使ってもいい。それにお前も好きな服を買ってくるといい」
リリアも服が欲しかったのか、それとも人間の服に興味があったのか目を輝かせている。
「わかりました!!! さぁ行くぞ2人共」
「はい!!!」
「うんっ!!!」
三人は服屋に入っていく。
そんな中ゼノンは待っている間どうしようかと当たりをキョロキョロと見渡す。
すると、フードを被った人間が走ってきてゼノンにぶつかってきた。
避けることもできたのだが、ここは人間ぽく振舞おうと敢えてぶつかったのだ。
「むっ?」
「きゃあッ!!!」
ぶつかった拍子に相手フードが取れてしまう。
ちょっとぶつかっただけで吹き飛ぶとは思いもしなかった為、やはり良ければよかったと後悔する。
相手に大事ないか聞こうと思いぶつかった相手に手を差し伸べる。
しかし、相手の顔を見てゼノンは目を見開いた。
「すみませんッ!!! 急いでたもので、、、えっ?!!! ゼノン・・・・・・様?!」
「ん?お前は『レイラ』か」
レイラは自分が走ったことにより、ぶつかってしまったことを謝罪する。
そして、互いに顔を確認し合うと、なんと二人は顔見知りであったのだ。
しかし、久しぶりの再会ということもあり変な間が空く。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
互いに沈黙していると、、、
遠くの方から突如衛兵がやって来る。
殺伐とした空気を出しており只事では無いとゼノンも気付く。
そして、衛兵が現れると同時にレイラの顔も真っ青に変わっている。
「あの女を探せッ!!!!!! まだこの辺りに居るはずだ!!!」
衛兵の言葉に反応してレイラはフードを深く被った。
「ふむ。なるほどな。変装」
全てを理解したゼノンは何も聞かず、瞬時にレイラへ魔法をかけた。
そして案の定、衛兵がレイラの前に立ち塞がった。
フードを被っていれば怪しさは満点である。
「貴様! 怪しいな!!! そのフードの中身を見せろ!!!」
しかし、フードを外そうとしないレイラ。
痺れを切らした衛兵はフードを無理矢理捲る。
そこには変装したレイラの姿があり衛兵は困惑する。
なんならレイラも困惑していた。
「あれ、あっ、すまぬ。もし怪しい女を見つけたら教えてくれ」
フードを被った女がレイラでは無い事に気付き気まずい空気となった衛兵達は、逃げるようにその場を後にした。
衛兵が走り去り、何を逃れたことにレイラはホッとすると、ゼノンへと向き直り感謝の言葉を述べる。
「あ、ありがとうございました!!!」
「ふむ。何か訳アリのようだな。聖女のお前が何故、追われている?」
そう。レイラこそが聖女であり、聖魔法の使用者でありゼノンが知っている人間の一人であった。
「実はですね、教皇様が私の存在を気に食わなくなってしまって・・・・・・」
「ふむ。自分の地位が脅かされたと思ったのだな。それで邪魔になったお前を殺そうとしたと」
「はい。以前から教皇様は、私の事を良くは思っていませんでした。ですがここまでするとは私も思わなくて・・・・・・」
教皇は自分の地位を何よりも大切に思っている。
勢力を広げることに主軸を置いており、逆に勢力を広げようとする配下が居れば亡き者にしようと企てるのだ。
ここに居てはレイラもその内捕まってしまう。
そこでゼノンはレイラに尋ねることにした。
「それは災難であったな。ならば私と共に来るか?」
いきなりの事に驚くも、それ以上に嬉しさの方が勝ったのかレイラは笑顔で返事をする。
「えっ?!!! ゼノン様とですか?! よ、よろしいので?!」
「うむ。人間が一人増えたところで変わるまい。それにお前は聖魔法に詳しい。ある娘に聖魔法を教えてあげてくれぬか?」
持ちつ持たれつという関係ならレイラも来やすいだろうと話す。
「あ、ありがとうございます!!! 私でよければ喜んで!!!」
「うむ。今は三人で服屋に入っているのでな。暫く待ってくれ」
するとタイミング良く三人が出てきた。
手にはたくさんの買い物袋を持って。
「ゼノン様ー!可愛い服をリリアお姉ちゃんに選んでもらって、たくさん買ったよ!ありがとう!!!」
「僕まですみません!!!」
「ゼノン様の服も買いましたので!・・・・・・ん?その女は?!」
そこでリリアがレイラの存在に気付く。
「あぁ、この者は聖女レイラだ。リリアは知っておろう?」
「レイラ?! なるほど、ゼノン様の魔法か」
姿が変わっていたが瞬時に理解したリリア。
「えっ?! お姉ちゃんが聖女様なの?! すごーい・・・・・」
聖女に憧れを抱いていたムムは驚きよりも観劇が増している様子。
目をキラキラさせながら、レイラを見つめていた。
思わず苦笑いのレイラ。
「訳あって変装しているが詳しくは帰ってから話す。ムム、すまぬが本はまた後日でも構わぬか?」
ムムは少し表情が曇ったが、彼女なりにレイラの心情を察してくれたようで、
「・・・・・・うん!!! いつでも来れるもんね!!!」
そんな聞き分けのいいムムの頭を撫でるリリア。
「お前は本当に良い子だなムム」
本来ならこんな小さな子は、駄々をこねてもおかしくはないが、ムムは聞き分けがよかった。
むしろ、リリアに撫でられたことにより満足しているようだ。
ムムも納得してくれた事で、一刻も早くここから立ち去らなければならない。
「では服屋の路地裏に入り一先ず家に戻るぞ」
四人はゼノンに掴まりワープする。
家の前に着き、レイラの変装を解除するとトラリーとムムはまたしても目を輝かせていた。
美しい銀髪に宝石のような水色の瞳、
そして陶器のように白い肌。
正に聖女であった。
二人は惚けたまま部屋に入り椅子に腰掛ける。
レイラがゼノンに話した経緯を皆に話す。
「よくある話ね! 下の者が力を持てば、上の者からは目障りとなる。ゼノン様の場合は返り討ちにしていたけどね!」
「そうなんですか?! すみません、私にはその様な力がなくて・・・・・・」
レイラは自分が弱いから今回の事態を招いてしまったのだと責められてるものだと思い、頭を下げた。
しかし、リリアに全くそのつもりはない。
「責めてるわけじゃないわよ! ゼノン様は別格だもの。それよりレイラはこれからどうするの?」
リリアも彼女のことを気遣っているのだろう。
知らない仲でもないわけだから。
「ゼノン様にも話したのですが、ここで暫くお世話になりたく思います。聖魔法が使えますので、ムムちゃんの先生役として住まわせて頂きます」
「えぇ?!!!! 本当に?!!!! ありがとうレイラお姉ちゃん!!!」
ムムもトラリーに負けないくらい魔法に興味があり、毎日練習をしていた。
ここで専属の先生が付くのはムムにとっても嬉しいことである。
「はい! よろしくお願いしますね!」
「レイラは何歳なの?」
「え? 私は18歳になりました!」
「私は21歳よ! なら私がお姉ちゃんね!!! よろしくレイラ!」
「はい!よろしくお願いしますリリアお姉様!」
こうしてまたしてもゼノン一家に人が増えた。
5人と2匹のゼノン一家となった。
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