103話 貴方に期待はしていませんでしたが
食堂まで向かう最中。周囲の女子生徒からのビルジニの評価を改めて知ることができました。一番多いのは下手な男子生徒より人気があること。彼女の取り合いになっていること。
何より、食堂では彼女と同じ班になろうとして群がっている集団が目に入っていることが決めてになりました。これは誘いにくいわね。今まで知る機会が一切なかったのは、私に普通の友人がいなかったから女子同士の会話が壊滅的だったことが原因なのでしょう。
「あ、私は平民食堂の方に向かいますので」
「ジャンヌさん!」
「何でしょうか?」
「男子メンバーでジョアサンを誘いたいの。声をかけておいてくださるかしら。どうせ食事を終えたら彼は平民食堂に移動するわ」
「わかりました!」
そしてジャンヌさんは貴族の集まる食堂から外れた位置にある平民食堂に向かいます。
「私も大人しく公爵家が許されている席に向かうわ。もっとも貴女しか話し相手のいないテーブルに行く気もありませんけどね」
一応カトリーヌさんの中では私を話し相手としてカウントしてくださっているのですね。それぞれ互いの身分にあった席に移動し、私は王族皇族などしかいない寂しいテーブルでいつも通り食事を始めようとした時でした。
いつもでしたら必ず遠くの席に座る男が黙って私の隣に座ります。
「どういう風の吹き回しかしら?」
こげ茶色の髪にライトグリーンの瞳の少年。オリバー・アーバスノット・コリングウッド皇子だ。いつもの老紳士を連れて私の隣に座る皇子は、私の問いかけを無視して食事を続けます。まるで私が無視されたみたいだわ。失礼な男ね。この男と会話していると、どういう訳かどっかの誰かさんを思い出します。
いえ、まあ私に対して横暴な態度を取れる人間なんてごく少数ですし? そりゃあ似たような悪感情は抱きますが、オリバーはまだ隣国の王族として扱ってくれているだけましでしょう。
私も彼のことを無視することを決めて食事を続けます。結局オリバーは私が食事を終える最後の一口まで、私に話しかけてくることはありませんでした。
「話しかけるのは、最初の一言だけでしょうか?」
「聞こえていたなら返事をしなさいよね?」
つい声を荒げてしまいましたが、周囲は完全に無視。王国の姫と帝国の皇子の間に入ってこようと思う人間なんて誰一人としていないのだ。
「ああ、申し訳ない。一度姫様を無視してみたかったんですよ」
「一周回って好きでしょ私のこと」
「一周回ったら本当に好きと言えるのでしょうか? ああ、そうそう今日は笑いに来ただけです。もう用はありません」
嫌っている人間の隣に来て食事するか普通? 私は嫌だね。人としてあり得ない男ですがこれでも【紫】のワンダーオーブを手に入れる為に機嫌を取らなければいけない。
「へ、へえ。楽しんで頂けて……ぬぁ、何よりですわ。オホホホホホホ」
私の返事を聞いたオリバーは、その場で噴出しおなかを抱えて蹲った。あーら、私いつの間に爆笑必死のギャグを披露したのかしら。今のは名監督が、感動のあまり涙を流すほどの迫真の演技だったつもりなんですけどねーオホホホホホホ。…………ハァ。ちょっとは演技を練習しましょうか。
「…………はぁはぁ。久々に笑わせて貰いましたよ。本当に貴女は面白い人です。せっかくですし、魔法遠征の班決めですが、男子メンバーとしてご一緒させてくれませんか?」
「へ!? ま、まあいいですけど?」
オリバーから誘われるなんて、後ろから刺されたりしないかしら?? いえ、元々こちらから誘うつもりでしたし構いませんが。私はオリバーに既に決まっているメンバーを教えると、オリバーは問題ないとだけ答え、これか誘うメンバーも特に異論はないと答えを頂きました。
「さてと、あとはミゲルにビルジニ、リビオとジョアサンね」
まあ、このメンツを誘いたい最大の理由はワンダーオーブのこともありますが、何よりも私に親しい友人がいないから先に取られたら困るのよ。本当に困るの。
早速ビルジニに声をかけると、彼女は二つ返事でオーケーをくれた。
「むしろ君からの誘いを待って他のみんなの誘いを保留にさせてもらっていたよ」
「一応確認するけど、ビルジニって女子カウントでいいのよね?」
「気持ちじゃどうしよもならない事実だからね」
二人でリビオとミゲルに声をかけると二人もあっさり了承。みんな、友達いないのかしら? ビルジニはものすごく誘われていたのに申し訳ないわね。あとはジャンヌさんにお願いしたジョアサンだけね。
オリバーと会話していて誰のことを思い出したのやら。
クリスティーンを姫として扱わない人間なんてそんなにいる訳。。。
今回もありがとうございました。





