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「……キスしたことある?」







  放課後に彼の寝顔を眺め、そっと起こし、一緒に帰る。

  そんな日常が日課になってることを自覚し、恥ずかしく思いながらも何だか恋人同士みたいだと満更でもなく感じてる。

  こんな日々がずっとずっと続きますように、あわよくば、彼とその先に進めますように…なんて、そう願うのは欲が深いだろうか。


  ささやかな幸せと、夢のような想像にニヤケを抑えられず、彼の机に伏せて目を閉じた。

  彼を待っている時間さえも尊く幸せな時間だ。

  幸せな微睡みを感じ始め、このまま寝てしまおうかと思った矢先、バタバタと騒がしい足音が聞こえてきた。

  きっと彼が来たのだ。

  そう確信し、入ってきた彼はどんな風に起こしてくれるのかを想像しながら寝たフリを決め込む。


  「ごめん!遅くなっ……いいんちょー?」


 ガララッ


 と騒がしく駆け込んできたと思うと、足音を殺しながら近づいて来る気配がした。


  「……っ!?」

 

  「……おーい、いいんちょー?」


  控えめに声をかけながら、頬を優しくタッチされる。

  いつもと違うやりとりが擽ったくて、ついつい悪戯心に火がついてしまう。


  「んぅ、……すき、だよ。」


  「ほあ!? いいんちょー起きてる?」


  流石にワザとらしかったかな、

  起きてるのバレちゃったかな。

  ドキドキしながら彼の行動に全神経を研ぎ澄ます。


  「……俺は、好きだよ。」


  (・・・いま、なんて、?)


  はっきりと告げられた言葉の意味が分からず、一瞬頭が真っ白になる。

  そして、徐々に近づくその気配には気づかず、


  っ


  ほんのり温かい温もりと、柔らかな感触が唇を掠めた。


  (えっ、いまの、なに…?)


  その温もりの正体を察し期待で頬が熱くなる。

  彼の表情を見ようとうっすらと目を開けた―――

  しかし目の前に映るのは彼の表情ではなく、ふわふわと揺れる彼の髪の毛だった。


  どうやら彼もいつの間にか机に顔を伏せ、寝てしまったらしい。

  残念なような、ほっとしたような。なんだかよく分からない感情が胸を占める。

  それでも、寝坊助な彼らしいと半ば呆れながら、改めて彼の寝顔を堪能した。

 

  起こすのは頬の熱が引いてからにしよう。


  心の中で呟き、


  「……私も君が好きだよ。」


  耳元でそう呟いた。

 


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