026 再見
担当:四葩
「……シナとウルを探さなきゃ…」
あたしの言葉にエルが頷く。
宿は燃える。赤く明るく。周りには野次馬の群れ
さて、シナたちはどこに行ったのかしら
シナだったら、ウルだったらどう行動く?
「あっちからも火がっ!逃げろ」
向かいの建物から火の赤と黒々しい煙が見え辺りがどよめく
いったい誰が火なんかつけたのよ……誰があたしたちの邪魔をしている?
「アンジェ、あれ」
エルが指差した方へ目を走らせる。
「ルイス?」
向かいの建物のすぐ側、人波に流されることなく彼奴は立っていた。
聞こえない筈のあたしの声に応じるように彼奴が振り向く。
「……アンジェ、彼は……」
隣にいるエルの声が遠い。
それだけ、衝撃だった。
ニゲチャッタノ オネエチャン と動く口元や彼奴の笑みが
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
彼奴が怖い彼奴が、彼奴から
「……逃げなくちゃ」
エルの腕を掴む
「えっアンジェ?」
走った。走る。走れ。逃れる為に
ひたすらの逃亡だった
「……ン、ジェ…アンジェっ止まってっねぇ……いい加減にしなさいっ」
「わっ何?」
エルの声が聞こえ始めた時、視界に淡い紫が広がった。
「これってケープ?」
頭に掛かっている淡い紫の正体を暴けばそれはエルのケープだった。
「もう…落ち、着いた…かしら」
息切れをを起こしながらもエルが声を紡ぐ。
「えぇ落ち着いたわ……ごめん、エル。大丈夫?」
掴んでいた腕をそっと放す。ほんのり赤く残ってしまった手の痕を後悔と労りが優しく触れる。
内出血していないといいけれど
「で、どうして突然アンジェは走り出したの」
「彼奴から、ルイスから逃げようと思って」
「どうして。ルイスはアンジェの弟よね」
「違うわ、長く一緒に暮らしてたけど、初めて見たの……彼奴のあんな笑い方……それに」
「それに?」
「逃げちゃったの、お姉ちゃんって言われたのよ」
「まさか、放火したのは」
「ルイスね。彼奴は王のお気に入りだから」さっきの宿の放火。下手すればあたしは死んでいた。
「アンジェが一人になる食糧調達時の犯行だもの。狙いはアンジェ……でも理由は?」
それでエルは外にいたのね
「そうねぇ、あたしは彼奴がいなくなればいいって常々思ってるけど…あたしが邪魔になったのかしら、王のお気に入りだし」
「王の命令……かも……それより怪我はしていない?」
「えぇ大丈夫。おじさんが火のない道に先導してくれたから」
「さっきも、そう言っていたけれど……アンジェは、独りだったの」
二人の顔が引きつる。
「……まぁとりあえず無傷に外へ辿り着けたし、後で考えればいいわ」
それよりも、シナ達だ
「で、シナは何も言わずに宿を出たのよね」
「そうなの。アンジェへの走り書きをしたらすぐ出て行った」
ごめんね、アンジェと書いてあった。そして生きて会いましょうとも
「捜さないとね。っとまず、ここはどこかしら」
夢中で走っていたから把握していなかったことに今更気付く
「国の端ね、壁側の……すごく寂れてる」
「あぁエルは来たことなかったのよね。ここは半竜人が住んで、いる……そうだわシイを国外に連れて行くのが今回の目的……シイを捜せば良かったのよ」
シナ達への手掛かりがみえてきた
そこからシイやウルの住処へ向かったけれど既にもぬけの殻だった。
「シイもウルたちを捜しているのかも」
二人で彷徨い歩く。見えてきたのは大きな椎の木
そしてその太い枝には
「シイ」
木の名をもつ少女がいた
「貴女は、シナといた。そっちは?」
「……エル」
シイの視線から空かさずエルが名乗る。
「エルも協力者よ…ねえウルとシナ知らないかしら」
「あっち」
木の上のシイが遠くを指差す。その先は王宮近くの丘だった。そこに人影が四つ
「シナ傍らに青年が一人、王の傍らにコーネリアさんがいる。なんだか対立しているようね」
「青年はウルね……見えないけど」
正確に人影が見えるらしいエルに見えないあたしが情報を加える
「兄様が……」
「ウルが?」
「お前を連れて行けない、でも見ていろって……俺に、もしもの事があったら……国から出ろって」
見上げればシイの固く握り締められた拳があった
「ねえ、ウルは連れて行けないと言ったのね?」
そして見てろと言ったなら、シイにとって重要な話。あたしにとって必要な話
シイと視線がやっと交わる。
「そうよ、それがなに」
怪訝な顔をするシイに笑ってやった
「あたしが……連れて行ってあげる」
悪戯を仕掛ける前の笑みを
次回予定→3月5日 20時




