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少女と呪石とほどほど人外  作者: 宮居/四葩
第2章
18/80

017 椎の木

担当:宮居

「ほぅ……これまた珍しい」

翌朝。王に呼ばれた私達は、王の間で謁見していた。

珍しい、とはルイスのことではない。ここにルイスはいない。

恐らく……というか確信を持って言える、エルのことだ。


「お初にお目にかかります、私はシナと申します。昨晩は夜分遅くに申し訳ありませんでした。献上品は気に入って頂けたでしょうか」

シナも王の視線に気付いたようだ。

「あぁ……昨日の子はいい子だね……凄く、可愛くて……好みだ。昨日みたいな格好もいいけど、彼にはあの姿の方が似合うんじゃないかと思って、今着替えさせている……君たちにも見せてあげよう……にしてもこんな子がいるなんてなぁ……凄いよ……ところで何処の出の子なんだい?これは是非とも両親にも挨拶せねばと思ったのだが……?君たちは何処の国から?いやまぁこれはあまり関係ないのだが……」

王の口調はのんびりで、しかも話の区切りが見えず、聞いてられなかった。



ただ1つ、聞き取ったことを答えてやる。



「彼に両親はいません。いや、いたんでしょうけど、彼を捨てて何処かへ行きました」


「それはそれは失礼なことをした……しかし何故こんないい子を捨ててしまったのだろうか……勿体ない……」

何故、こんなに王がルイスのことを褒めるのかがわからない。

あいつの何処が"凄い"と言うのだろうか…?

「アリュード様」

部屋の扉が開く。そこには長身の男とルイスがいた。


ん……?ほんとにお前ルイスか……?


「おおおっ!リューク、凄いじゃないか流石だなぁ……!可愛いぞ……よく似合っている……!」

王が興奮しているのがわかる。

立ち上がり、ルイスに駆け寄った。

「可愛いなぁ……可愛い……!」

ルイスはどこかのお坊っちゃまのような服に着替えていた。

空色の長袖ワイシャツ。ボタンが沢山ついていて、その周りはフリルに覆われている。

紺色のハーフパンツ少々大きめのようだが……。サロペットでずり落ちないようにされている?に黒いショートブーツ。

ヘンテコな帽子もかぶっている。何あれ。円柱に四角い蓋をしたような帽子。頂点の1つに、紐もついている。

そしてルイスは、分厚い本を持っていた。

本の表紙を見る……呪術書!?

「あああ堪らん……。悪いが君たち、暫く時間を開けてまた来てくれるか……?今は、ちょっと…」

「あ、はい…わかりました……」

とあたし達は揃って退室する。

「案内しましょう」

リューク、と呼ばれた彼が先を歩いてくれる。

「2時間後に、ここでお待ちしてますので」

「わかったわ…2時間後ね」

リュークは頭を下げた。

彼も、王に気に入られた人の1人だろうか……?





「さて……追い出されたわけだけどもどうする?エルはとりあえず宿で待機ね。何かあったら呼ぶから大人しくしてて欲しい」

「アンジェがそういうなら」

「でー、シナ?この2時間どうするべきだと思う?」

「呪石を探すのが今回の目的……ならそれを持ってる子を探す為に国を回るべきだと思う。大事な話は……夜にしよう」


大事な話……?


「……とりあえず時間まで別行動で」

そう言うとシナは背を向けて歩き出した。

シナはここの国のことを知っているのだろうか……?


「なにがあったのよ、一体」


ルイはこの国が嫌いだと言った。過去になにかあったのか……?


「……とりあえず今は、この国を歩いてみますか……」

探索開始だ。悩むのは後にする。


2時間……とりあえず、あの壁まで目指してみようかしら。

この国は何故か西に壁が建っている。入ってきた門と壁の距離はどのくらいなのだろうか?

とりあえず……歩いてみるか。

街の様子を観察しながら、、壁の方へ向かって歩く。

建物のサイズはどれも横に長く、高さは3階建でまでしかない。

壁の方に行けば行く程……人々の服装や、店、家などが貧しくなっていくように見える。

子供が1人、建物の間に座っていた。孤児……?

暫く歩くと、坂があって、それを下ると景色が変わった。


「……嫌な雰囲気ね」

壁は目の前まで迫っている。

もう少し寄ってみようかと、歩き出したその時。

「なにしてるの」

小さな声が聞こえた。

「え?」

「……どこから来た……ここは貴女みたいなのが来るところじゃない……早くここから立ち去って」

小さい体。服はかなり汚れていて、何日も洗っていないようだった。目はかなり鋭く、腕は──



……!



「早く!」

あたしの視線に気づいたのか、左腕を隠し叫び声を上げる少女。


……同じ、だけど少し嫌な、匂いがする……


少女の声を聞いてか、道から何人かが出てきた。

皆同じような格好をしている……

「出てけ!」

少女の再びの叫びを聞き、何人かが走り寄ってくる。

あたしはそこを去ることにした。




「……大丈夫か、シイ?」

「兄様……大丈夫だよ。ボクは何もされてないし、何もしてない。あいつも、そこからこっちには入れてないよ」

「よく頑張ったな……偉い偉い。さあ、そろそろ戻ろう」

頭を撫でて貰う。兄様からのなでなでは嬉しい。本当の兄妹みたいだ。

「うん」

手を繋いで、みんなのところへ戻る。

にしても初めて見る顔……何処から来た人なのかな……?




時間になって、約束した場所へ行った。

結局あの後は早足で城の前まで戻ってきて、時間があったから宿へ帰った。

そこにはエルしかいなくて。シナは1度も帰ってきていないらしい。

今日の夜、シナは話があると言った。

その時に、あたしも話そう。彼女のことだから、もう知ってることかもしれないけど……。いや、だからこそ、か。あたしの知らないことを教えてもらおう。

とりあえず、今は……。


「お待ちしておりました」

「お待たせしたわ。王とお話出来るかしら?」

「それが……ですね。少々、問題が起こりまして……今日の面会は、無理そうなのです」

「問題……?」

「申し訳ありません」

彼は頭を深く下げた。

「……わかりました。出直します」

シナが言う。そしてあたしを見て頷いた。宿へ向かって歩き出す。



「随分と早かったのですね……おかえりなさい」

宿へ着くと、エルが迎えてくれた。

「問題があるとかなんとかで、入らせてもらえなかったのよ」

「問題……?」

「えぇ、内容は教えてくれなかったのだけど」

「アンジェ」

シナが呼んだ。

「夕食を食べ終わったら、先刻の話をしましょう。話さなきゃいけない大事な話。貴女もなにか、話したいことがあるみたいですし、ね」

よくおわかりで。

「そうね。お願いするわ。じゃあ夕餉をいただきましょうか?」

「部屋に持ってきてもらえるみたいです。先に頼んでしまったんですが…大丈夫でした?」

とエル。こいつは宿にいるあいだ、なにをしていたのだろう。

「えぇ、大丈夫」

「では、食べながら話しますか」

……シナの様子が、少々おかしい……。

「シナ、なにかあった?」

「……後で、話す」

そう言うとシナは部屋を退室した。

一体、なにが……?




数分後、夕食が運ばれて来た。

それと同時に、シナも戻ってきた。

シナの様子は先刻と違い、少し明るさが戻ったように思う。

「まず1つ、先に言っておかなきゃいけなかったんだけど……、」

と話しづらそうに、シナは口を開く。

「ここ、一昔前に呪いの散力でひどい目にあってて、呪術者を嫌うのよね……おかげで、ちょっと体調が……あまりわたしも力使えないし……情報提供くらいしか出来なさそう」

「わかったわ」

「でー、大事な話っていうのが……ここは私やルイの故郷を潰した国なの。だから嫌ってる」

「潰した……?」

「詳しいことはまた今度話すわ。ルイが話していいって言うならだけど。で、夕食前に呪石のことを確認しに行ったのだけど」

シナが先程出て行ったのはそういうことか。

「もしかして、知ってるの?誰がそれを持っているか」

「知ってる……というか、さっき確信に変わった、というか。明日約束したから、会おう。ただし……あの子警戒心強いからな……」

シナはいいながら、窓の方へ寄る。

窓を開けると目の前には椎の木が立っていた。




「彼女の名前は、シイ。半竜人の女の子なの」


ルイの昔話は番外編に持っていくことになりそうです。

もしかしたら後から補足で文章を付け足したりするかもしれません。


次回更新予定日→6月26日20時

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