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少女と呪石とほどほど人外  作者: 宮居/四葩
第2章
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19/80

018 関係性

担当:四葩

「彼女の名前は、シイ。半竜人の女の子なの」

振り返らずにシナが言った。

「……半竜人」

「そう……この国は昔、竜と人間が共存していた……だから、必然的に、その間には子が生まれた。今は蔑まれ、疎まれ、多くのモノのを奪われている……それが半竜人。だから警戒心が強い……もちろんシイもね」



……奪われたモノは戻らないから……。失わないために殻に篭ってるの



「そんな子から呪石が手に入るの」

そう訊くと前を見ていたシナが振り返り頷いた。

「それは大丈夫。彼女、腕輪…呪石が納まってる装飾品を嫌ってるから」

「なら、何でシナは今日貰えなかったのよ?」


それあたし行く必要あるの?警戒心強いなら尚更行かない方が良いんじゃない


とアンジェが思っているとそれが伝わったのかシナが苦笑した。

「外れないのよ、腕輪。さっき言ったけどこの国じゃ呪術があんまり使えない。彼女を国から出してから外す。アンジェとシイだけで行動することもあるかもしれないから」

「明日は呪石を得るのが目的じゃなくて、あたしに会わせるのが目的ってことね」

「そういうこと」



アンジェは忘れていた。

昼間に出会っていた女の子がいたことに



「じゃあ先に行ってるね」

「説得よろしくね」

昨日話し合った結果、あたしがシイに会う前にシナが独りで向かい後から合流することになった

今はエルといる。二人っきりって初めてかも

「そういえば、昨日とか何してたの?」

「掃除をしていた」

「エルがやってたのね、ありがとう」

まさかエルがやっていたなんて、てっきり宿の人がしていると思ってた

「……いえ」

テレてる。無表情だけど

「さてと。街を少し見ながら向かいたいし、ちょっと早めに行ってくる、エルは悪いけどまた留守番よろしくね」

家を出ようとしたら後ろから袖を引かれた。

「……アンジェ、布を、買ってきてほしい」

「布?どうして」

「無理なら、いらないから」

その問い掛けにエルはさらに遠慮がちなる。

「大丈夫よ、布くらい。どんなのがいいの」

「色は委せる、大きめなのがいい」

「わかった買ってくる。じゃあ行ってくるわ」






シイと会う目的地より幾分東側に栄える街を歩く。

まずは布を買おう。服屋とかかな

「アンジェ様」

不意に声をかけられその方向を見れば王宮にいた青年、リュークが立っていた。

「あら、リューク…さん。買い出し?」

「ええ。そのようなものです。アンジェ様も何かお探しでしょうか、失礼ながら先ほどからそんなそぶりをされていましたので声をかけてしまいました」

そう言って微笑んだ顔は可愛い。

あの王の趣向はそんなに悪くないのかも

「仲間に布を買うのを頼まれたの。いい店知ってる?」

「それでしたら自分も今から向かうところです。よろしいければ共に行かれますか?」

「奇遇ね。お願いするわ」

こうしてあたしとリュークは共に歩き始めた。



「コーネリヤ様。只今戻りました」

沢山の布地に囲まれた店にいた貴婦人らしき女性にリュークが話しかけた。

「あら、リュークありがとう。そちらの方は?」

あたしをみつめて首を傾げたその姿は少女めいていて不思議だった

「こちらは国外から来られたアンジェ様です」

「まぁ、貴女が?私貴女にお礼を言いたかったの」

「あたしにですか?」

初対面の彼女からお礼を言われる覚えはないんだけど

「この子を養子に出来たのは貴女のおかげなのよ」

そう言うとコーネリヤと呼ばれた彼女がリュークの手をとり微笑んだ。

「なぜ、あたしのおかげなのですか」

「貴女の献上品を王が気に入り、自分はお役御免になったのです」

これはリュークの言葉だ。

「そう、それで彼を養子にしたの……私に子はいないから……まぁまだ母と呼ばれないけれど、追々ね」

「善処します」

和やかな会話が繰り広げられてる。

「それで、アンジェさん。何を買いにきたのかしら」

「あたしは旅の仲間に頼まれた大きめの布を買いに」

「色は?」

「いえ特には」

何を聞き出したいのだろう。ここには買い物以外の目的しか無いんだけど


「これなんてどうかしら」

「綺麗」

コーネリヤが持ってきたのは淡い紫の滑らかな布地だった。持ち上げて光に翳すと花の模様が浮かび上がる、あたしの目からでも上物だとわかるものだ

「気に入ったかしら」

「はい、でもこれは買えません。他にも色々買わなくてはなりませんから」

「あら、これは私からの贈り物よ。これだけではお礼にならないけれど、せめて形が残るもので渡したかったの」

遠慮しないで、とあたしが持っていた布を手にとって奥へと引っ込んでいった。

「貰ってあげてください。自分もお礼をしたいのですが、なにぶん持ち合わせがないもので、すみません」

「わかったわ。こちらとしても嬉しい申し出だし。いい人に養子にされて良かったわね」


「ええ、彼女に選ばれなければ自分は殺処分でしたから……」


平然と彼が言っているのが不気味だ。


「情報漏洩を防ぐためです。…王の最も身近にいましたので……なにより身内がいませんから」

「そう、でもコーネリヤさんのところに居ても同じじゃないの。むしろ情報は広まりやすいはず」

どれだけの人物なんだあの人、まさか王族だったりして

「コーネリヤ様は王を裏切らないという実績があるそうです」

「実績?何をしたの」

「それは自分にもわかりません」

首を横に降ったリュークに謎が深まる。

「アンジェさんこれをどうぞ……二人とも楽しそうだったわね。なんの話かしら」

コーネリヤの後ろでリュークが人差し指を口許にやっている。

秘密にしろってことね。了解

目で合図を返してコーネリヤに笑いかけた。

「まだ回りたい所があったので道を教えてもらっていたんです」

「そうなの、あぁ一緒に回りたいけれどもう時間だわ。王宮に近い場所に私の屋敷があるから今度いらしてね」

「はい、ありがとうございます」

あたしが返事をしたのを聞いて優雅にお辞儀をし、リュークを伴って去った。




さて、もう説得は終わったかな



目的地に向かうとそこに二つの人影が見えた。その内背の少し高いほうがあたしに気づいた。

「あ、こっちよ」

シナが手招きするので近付くとその隣にいた女の子、シイはシナの背に隠れた。

……なんだかややこしいな

「シイ。彼女が話してたアンジェよ」

「………貴女」

シナが彼女の背を押しあたしの前へ出そうとするが頑として動かず、小さな声で呟いた。

「あ、昨日の子」

「えっどういうこと」

あたしたたちの反応にひとり目を白黒させるシナに昨日シイと出会っていたことを説明した。

「なんだそうだったんだ。じゃあ会わせなくてもよかったのね」

「いや、昨日シイに追い出されちゃったから好都合かも」

「ごめんなさい。あそこに来る人、嫌なことする人たちばかりだったから」

未だシナの背に隠れたままだが、すまなそうな視線がちらりと合うようになった。

「いいわよ。こっちこそいきなり近付いて悪かったわ。名前は知ってると思うけど、アンジェよ。よろしく」

「シイです。よろしく」


パシッ



乾いた音がなった。

手を伸ばし握手しようとした手が叩かれた音だった。

「……シイ?」

シナも困惑していた。和やかな雰囲気が一変してしまったのだから

「……どうして、あの女の匂いがするの……ねぇどうしてっ」

「なに言って……」

「まさか、あの女とグルなの」

鼻を引くつかせていたシイの動きが止まった。

「騙そうとしたな……許さない」

憎悪に満ちた目でこちらを威嚇し走り去った。



「アンジェ心当たりは……」

「たぶん、コーネリヤって人」

「誰それ」

「王のとこにリュークって青年いたでしょ。リュークが王の使いをお役御免になってその貴婦人の養子になったんだ」

その人からお礼と言ってエルの布を貰った……すべて話終えるとシナが眉をひそめる。

「おかしいわ。何者なのそのコーネリヤって人は」

「詳しくは知れなかったけど、王を裏切らない実績がある……らしいからそれがシイに関わっているのかも」

人間と半竜人の確執は根強さそうだ




シイが走り去った後、残されたあたしたちは宿へと戻ってきた。

「エル、これ」

「ありがとう」

心なしか嬉しそうに受け取ってくれてホッとした。

「それどうしたの」

「さっき話したコーネリヤさんからの布よ」

「それが?ごめんエル、一回貸して」

エルから布を受けとるとシナはそれを凝視し始めた。

「……うん、大丈夫。仕掛けはなさそう」

ふぅ、と詰めていた息を吐きながらそう言う。



ドンッドンッ

激しいノックに反応して振り返り、ドアを開けた。

扉先に現れたのは、見窄らしい服装で意思の強そうな瞳を持つ青年だった。



3.5kでした。なかなかな長さ。


次回更新予定日→7月17日

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