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少女と呪石とほどほど人外  作者: 宮居/四葩
第1章
13/80

012 不穏

担当:四葩

目が覚めて見るのは、宿の天井

聞こえる、変わらない朝の音

それに違和感が薄れつつある。


永久の旅人は情を持たぬ者。否、情の前に去りゆく者。

昔読んだ物語の台詞の一つ



もう行動に移る時ということなんだろう。

この国も、あたし自身も



身支度を整えて城へと向かう。

その道のりもまた連日通っている変わり映えのない道で

勿論、ルイスの馬鹿は置いてきた。

まだ寝ているのだろう。本当に寝汚い奴だ。



「国王様にお目通りを願いたいのですが」

「アンジェ殿…本日の来賓について陛下からの言付けを承って下りません」

門兵が渋い顔で言う。存外帰りを促す意だろうけどおかしい。

結構ここへは足を運んでいるのに、まあシナの迎えの時は視られないようにされて通ったけど…あたしに敬語を使っている時点で王公認の客だと知れているだろうに、王の言付けなんて今更な感じだ。

でもこっちも諦めてはいられない。

「国王様というよりは王妃様にお会いする約束でして……」

「王妃様に?……確認をとって参ります暫しお待ちを」

「あの……約束といっても、仕立てたドレスを見ることが出来なかったのでまたの機会に……みたいな緩いものですから!」

あたしの言葉に頷いて門兵が去っていく。

危ない危ない、嘘だとバレれば余計ややこしくなる。



「お待たせいたしました。どうぞ中へ。王妃様の所へはこの者が案内いたします」

門兵と共にやってきたのは

「あの時の……」

「自分のような者を覚えていらっしゃるとは」

驚いたように目を見開いたのはあの時会った使用人だった。



「アンジェ様のこと王妃様は随分気に入っていらっしゃるようです。あの方が女性をあれほど褒めることはないのですよ」

唐突に先を歩いていた使用人が言う。

「そうですか……あたしのみたいなのを気に入ってくださるなんて嬉しいです」

ぶっちゃけ王妃に気に入られようがどうでもいいけど

「是非とも自分の娘になってほしいと仰っておりました」

「へ?娘……」

「はい。息子の、カティ様の妻にと」

そこでニコリと笑いかけられる。


冗談じゃない。ふざけるな!あたしには兄様がいるのよ

と言いたいのを呑み込んで曖昧に笑う。



これ絶対顔ひきつってるわ



「アンジェ待っていたわよ」

「やあアンジェ私もご一緒させてもらうよ」

部屋にいたのは王妃とカティ。

「それでは自分は失礼致します」

深々と礼ををして使用人は扉の外へと消えていった。


ただの使用人にこれほどまでに側にいてほしいと思った事はあったか。否、無い。

「アンジェこのドレスがあの時仕立て終わったものよ。イブニングだから今は時間帯が違うけれど……どうかしら?」

王妃の装いはワインレッドの地で袖や裾に金糸で薔薇を刺繍してある華やかなものだった。

「とても綺麗です」

似合うかどうかは別としてね

あたしの言葉に気をよくしたのか上機嫌にドレスについて語り出すのに適当に相槌を打ちながら機会を図る。

あたしの目的は王妃の自慢話を聞くことじゃない。シナに早く会わなくちゃ



「母上がこんなに女性との会話が続くところ初めて見ました」

空気が喋りやがった。

というか、どんだけ王妃女嫌いなの

「だってねぇ夜会に来る子たちは皆畏まっちゃって会話にならないんですもの。それにカティに嫁ぐために私を取り入ろうと媚びるのよ。その点アンジェの目はそんな色が見えないわ」

私の女の勘は誤魔化せないわよ

と息子に自慢する王妃に笑いが込み上げるのを必至に抑えた。

あたしが王妃に媚びる?してたまるか。

あたしが欲しいものはこの国での地位でも、ましてや王子の寵愛なんかじゃない。

兄様を生き返えさせる為の力ただそれだけだ

媚びてエルの呪石が手に入るならやるけどね……


「私もアンジェの知的好奇心は見習わなければと思っております」

空気良いこと言うじゃない。

「今は呪術を興味深く思っております」

「昨日あの後シナと会話していたね」

「はい。シナとの会話は時間を忘れる程でした。また話したいです」

カティがちょうどよくした話題にシナの事を混ぜた。

「シナってあの奴隷でしょう?あんなのと会話したというの」

「母上、あの者は貴重な戦力ですよ」

王妃が嫌悪感を顕わに吐き捨てるとカティがそう窘めた。

やっぱりシナ、いやエルが戦力になるんだ。戦争の前に逃げ出さないと

「では戦争の起こる前にシナとまた話がしたいです」

そう伝えるとカティの爽やか笑顔が崩れ、能面になった。

「あの……カティ様?」

ヤバい拙ったか?戦争のことは合成獣から聞いたしまだ機密事項だったか

「そうだな。戦争が起これば会えなくなるだろうからな。今度会えるよう手配しよう」

そう言ってあたしの肩を掴んだカティはまた爽やか笑顔に戻っている。

あの感情を削ぎ落とした表情はなんだったのかしら

まあ、気にしてないみたいだし……

「ありがとうございますカティ様」

これでシナに合成獣の呪いを解いてもらえる

「ではアンジェ。私からも一つお願いがあるが、いいか?」

「ええ、何でしょう。あたしが出来る事なら」

「簡単なことさ……誰に戦争の事を聞いたか答えるだけでいいのだから」

簡単だろう?


もう一度見たカティの顔はまた能面で視線だけは剣呑に光っていた。


「痛っぅ……」

ギシギシと掴まれた肩が軋むように痛む。

話したら終わりだ。全て終わるなんて

「嫌だ!」

ドンっとあたしの叫びと共に何か硬い物が城に衝突し地面が揺れた。

「きゃぁぁ」

「母上っ!」

ひっくり返りそうになった王妃をカティが慌てて支えるのにあたしから手を放す。


「王妃様!王子!ご無事ですか!?」

ドタバタと兵士がやってきた。

「今の揺れは?何があったのだ!」

「て、敵です!敵が攻めてきました!」





歯車は回り始めていたのかもしれない

独りでに、誰にも悟られずに


やっと、物語が動き出しそうなー…


next→3月6日 20時(すみません一週見送ります)

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