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三百十二話

(あー、何だってこんなに粘られるんだ?もう勇者には殆ど力は残ってい無いハズ。なのに、まだ殺害出来ない。剣聖のせいじゃ無い。ハッキリと分かるんだね。これはもうどうしようもない)


 僕は勇者にずっと殴り掛かったり、蹴りつけようと動いているけれども、それのどれ一つとしてまともに当たらない事に逆に冷静になった。


 ゴーレムの動きは確かにそこまで早くは無い。けれども「ここだ!」と思った攻撃、僕が確定的だと思った瞬間の攻撃が、その際にだけ勇者が一瞬だけ動きが加速してソレを避けられてしまうのには何度も何度も「理不尽!」と叫ばざるを得なかった。


 その意味について考えた僕はそこから導き出される答えにうんざりした。


(基礎、基本、根本、多分そう言うのは削り切れないんだ、きっと。だから、勇者が「生存」する事にだけ、その力が今は収束、集約してるんだな)


 確かに力は削った。削れた。容赦無く。勇者の持つ剣はもう光ったりしていない。


 だけれどもそれはこれまでに勇者がダンジョン攻略で得て来た物を、と言った事に過ぎない。


 勇者を勇者足らしめている「力」の根底だけは消せ無いらしい。


(ソレでも大きな大きな一歩だ。ソレを無駄にしない為にもここで勇者と我慢比べか。僕はそう言うの得意だよ?)


 伊達に地中奥深く、地下にずっと辛抱強く隠れて来た訳じゃ無いのだ。


 そこで忍耐は学んだ。待つ事への心構えも。


(さあ、その「力」で補えない程のやらかしを勇者は何時になったら起こすかな?こっちはゴーレムをずっと動かし続けて精神的な疲弊も有るけど。勇者の方がよっぽど僕よりも「ポカ」をやらかす確率は高い。見逃さないよ?僕は)


 この僕の身体の体力は無限と言っても良い。そもそもに人族と魔族とではその肉体の構成などに根本的な、存在の根底的な所から違うのだろう。


 そしてそれ以上に、その魔族よりも理不尽な存在がこの「魔王」なのだ。


 勇者の基礎は魔族よりも脆い「人族」なのだから、そこを攻めない何て事は有り得ない。


(付き合って貰うよ?このまま勇者を狙い続ける。何日でも、何十日でも)


 人族からしてみれば魔族、魔王の方が不条理、理不尽な存在なのだろうが。


 そんな人族、勇者と、魔王の差を埋めるのが「神の加護」と言った事になるんだろうが。


(僕からしてみればそんな物はクソ食らえだ。素直に殺されるなんて真っ平御免だよ)


 不平等、そんな差が魔族と人族の間にはある。有り過ぎる。


 神と魔神とが決めた規則、取り決めらしいが、余りにもコレが人族有利であり過ぎた。


(そんな物は認めないよ。どんな意図が、思惑がそこに在ろうが徹底的に抗戦するってモノだ。そこには僕の命が掛かってるんだから)


 僕は僕の意思で動く。そこに神も魔神もありはしない。


 そうした思考をしつつも僕は勇者への攻撃を止めない。


 そんな時間が何時までも続くと思われたその時、アッサリと剣聖が落ちた。

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