雰囲気とため息
「どうして、そんな事……そんな癖自分でも気付かなかったのに……」
「少しばかり、思い出したんだよ。昔の事」
「なんだ、小宮山さんにはお見通しだったんですね……」
「……」
「流石です」
「……はぁ」
俺はわざとらしくため息をつき、頭を抱えた。
「小宮山さん?」
「もう少し疑えよ……」
「え?」
「そんな訳ないだろ」
「え、え?」
「そんな癖、知らないよ。」
「え、えええ?」
「嘘だ、はったりだよ。お前をひっかける為の、な」
「ええええええええええええええっ!?」
貴子の身体が大きく仰け反った。
「まぁ、そんな事はどうだっていい」
「え、いや、あの?」
「要は図星だった訳だろ?」
「う……はい」
俺は貴子の目を射ぬくように、まっすぐ見た。
「話してくれるか?」
「は、はい……」
そう返事はしたものの、貴子は困った様子で後ろ髪を掻いていた。
「どうした?」
「すみません。いざ、話すとなると言いづらくて……」
「うん……?」
いくらなんでも貴子にどんな話があるのか、今後の事という所まで分かっていても、その内容までわかる訳がない。
「話しづらいのは、内容が、か?」
「あ、はい……」
雰囲気に問題があるなら、別の場所に移動して仕切りなおせばいけるかも知れない。
だが、貴子の側に問題があるというのなら、貴子のほうで整理をつけてもらう他はない。
「よし、じゃあ、言いやすいタイミングで言ってくれ」
俺はそう言って立ち上がった。




