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最弱スライムと契約した俺、気づけば全スキルを支配していた~ぷるぷる相棒が実は最強すぎる~  作者: ローナ


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ついにパーティ内で衝突が起きる

 ギルドの朝は、いつもより静かだった。


 静か、というより——妙に張り詰めている。


 扉を開けた瞬間、視線が一斉にこちらへ向いた。


 昨日までのざわめきとは違う。

 好奇でも半信半疑でもない。


 “何かが起きる”と知っている目だ。


「注目度、臨界」


 足元でスライムが小さく揺れる。


「外部観測者の期待値が上昇している」


「見世物ってことか」


「近い」


 ユウは肩をすくめ、視線の中をまっすぐ進んだ。


 レオンたちは、すでに奥のテーブルに集まっていた。


 だが——


 空気が違う。


 リナは俯き気味で、落ち着かない様子。

 レオンは腕を組み、無言。

 そして——


「……遅い」


 ミアの声だけが、はっきりと冷えていた。


「まだ時間前だろ」


「そういう問題じゃないの」


 鋭い返し。


 昨日までの苛立ちとは違う。


 もっと直接的で、隠す気のない感情。


「座って」


 ミアが言う。


 命令口調だった。


 ユウは黙って椅子に座る。


 スライムが足元でわずかに揺れた。


「警戒を推奨」


「わかってる」


 小声で返す。


「単刀直入に聞く」


 ミアがテーブルに手をつく。


「あなた、何なの?」


 来たな、と思った。


「昨日も一昨日も、明らかにおかしい」


「そうか?」


「とぼけないで」


 声が強くなる。


「スキルなしの動きじゃない。魔法も使ってないのに、あの威力。あの反応速度」


 言葉が加速していく。


「普通じゃないのよ!」


 沈黙。


 周囲の視線がさらに集まる。


 ユウは少しだけ息を吐いた。


「で?」


「で、じゃない」


 ミアの目が、真っ直ぐこちらを射抜く。


「説明して」


「断る」


 即答だった。


 一瞬、空気が止まる。


「……は?」


「説明する義理がない」


 淡々と告げる。


「一緒に依頼を受けてるだけだろ。仲間でも、友達でもない」


 リナがびくりと肩を揺らした。


 レオンは目を細める。


 ミアの表情が、明確に歪む。


「……ふざけてるの?」


「ふざけてない」


 視線を逸らさない。


「必要な結果は出してる。問題あるか?」


「あるに決まってるでしょ!」


 机を叩く音。


「そんな得体の知れないやつと組めるわけないじゃない!」


 ギルド内がざわつく。


 完全に、場が出来上がっていた。


(いい流れだ)


 ユウは内心で冷静に判断する。


 ここで崩れる。


 その瞬間が、一番“うまい”。


「じゃあ、抜ければいい」


「は?」


「俺は止めない」


 肩をすくめる。


「困るのはそっちだろ」


「……!」


 ミアの顔が赤くなる。


 図星だ。


 昨日の戦闘を思い出している。


 ユウがいなければ、どうなっていたか。


「調子に乗らないで」


 低い声。


「確かに強いかもしれない。でも、それだけで——」


「それだけで、何?」


 言葉を遮る。


「生き残れるかどうか、だろ」


 静かに言う。


「この世界は、それだけだ」


 ミアが言葉を失う。


 正論だ。


 そして、それが一番残酷な形で突き刺さる。


「……やめろ」


 レオンが口を開いた。


「ここでやる話じゃない」


「でも——」


「ミア」


 低く、強い声。


 ミアは歯を食いしばり、言葉を飲み込む。


 だが、視線は逸らさない。


「……もういい」


 椅子を引く。


「私は降りる」


 その一言で、空気が凍る。


「え……?」


 リナが顔を上げる。


「ミア、それは——」


「無理よ」


 即答だった。


「こんな状態で戦えるわけない」


 正しい。


 完全に正しい判断だ。


「……ユウ」


 レオンがこちらを見る。


「お前はどうする」


 選択を迫る目。


 ユウは少しだけ考えた。


 そして——


「残る」


 短く答える。


「依頼は受ける」


「……そうか」


 レオンは深く息を吐いた。


 理解した顔だ。


 そして、決断する顔。


「なら——」


 一瞬の間。


「ミア、お前を外す」


 静かに言った。


 決定だった。


「……は?」


 ミアの目が見開かれる。


「ちょっと待って、それ本気?」


「本気だ」


 レオンは逸らさない。


「今の戦力で考えれば、ユウの方が必要だ」


 冷静な判断。


 だからこそ、残酷だ。


「ふざけないでよ!」


 ミアが立ち上がる。


「私の方が先にいたのよ!? それを——」


「知ってる」


 レオンは遮る。


「でも、今は違う」


 はっきりと言い切った。


 完全に、線が引かれた。


 静寂。


 ギルド中の視線が、ここに集まっている。


 ミアは震えていた。


 怒りと、悔しさと、そして——


 恐怖。


 居場所を失う恐怖。


「……最低」


 小さく呟く。


 誰に向けた言葉かは、わからない。


 そして。


 そのまま、振り返らずにギルドを出ていった。


 扉が閉まる音が、やけに大きく響いた。


 しばらく誰も動かない。


「……これでいいのか」


 レオンが呟く。


 自分に問いかけるように。


「いいんじゃない?」


 ユウは軽く言う。


「合理的だろ」


「……ああ」


 苦い顔で頷く。


 リナは、まだ混乱しているようだった。


「ユウさん……」


「気にするな」


 短く言う。


「こういうのは、よくある」


 この世界では特に。


 ギルドの外に出る。


 空気が少し軽い。


「内部崩壊、発生」


 スライムが囁く。


「計画通りだな」


「意図的か?」


「まあな」


 否定しない。


「頂点で崩した方が、効率がいい」


 スライムが一瞬だけ沈黙する。


 そして。


「合理的」


 短く答えた。


 ユウは空を見上げた。


 雲が流れている。


 静かだ。


 だが——


 確実に、何かが変わった。


(次だな)


 これで終わりじゃない。


 ここからが、本番だ。


 ユウは歩き出す。


 次に“奪うもの”を考えながら。

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