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第10話 魔術師の秘密

 

 俺は相手の出方を待った。

 するとさっそく攻撃が飛んでくる。


多弾式(ウォータースピ)水性槍(アブラスト)。」


 杖を横に振ると、十本の水でできた槍が彼の前に円を描いて並び、回転しながら一本ずつこちらに向かって飛んでくる。


 ガトリングかよ……


 俺は横に走り、かわす。


 水の槍は後ろの木にささり消えていく。

 その木の幹はえぐられ、メキメキと倒れていった。



「ひっ。」


 女の子のような声が後ろから聞こえた。


 一本の槍がギルドで会った男の顔の横を通り過ぎていき、後ろの木にささっていたのだ。

 その木はボキッと折れて倒れた。


「ひ、ひぃぃ。」


 そんな強そうな見た目しているのにそんな声出さないでくれよ……


 だが水でできた槍なのに木が倒れる程の威力だ。

 強い。



「チッ、当たらないか。」



 俺は距離をつめる。


火炎球体(ファイアボール)。」


 彼は冷静に魔法を発動させる。

 杖の先端に火の玉ができ、それが俺の足元めがけて飛んできた。


 次は火かよ……

 二属性も使えるのか?


 俺はそれを前宙でかわす。

 俺は上手く着地をし、向きを変え、また素早く距離をつめる。


 相手は足を後ろに引いた。


大気圧縮障壁(エアプレスシールド)。」


 俺の前に三枚重ねで円形の障壁が現れた。

 空気を圧縮した壁のようだ。


 これは風霊魔法か?

 三属性目?


 だが、俺はかわすこと無く正面から突っ込む。


 パリンパリンパリン


 俺は、拳で三枚の障壁を全てわった。


「えっ」


 相手は驚いて、詠唱が遅れてしまった。

 彼は焦って俺から距離を取ろうと後ろに下がったが、バランスを崩してしまった。


「あっ。」


 俺はバランスを崩した彼の胸の中心を押し、そのまま地面に叩きつけた。


 ドンッ


「うっ。」


 彼は地面に叩きつけられ痛そうだ。

 彼は苦しそうに目をつぶっている。


 その時にフードがはずれてしまい、顔が見えた。


「え。」


 俺は彼の顔を見て呆然となった。

 彼の髪、いや、彼女の髪は紫色の綺麗な長い髪だったのだ。

 つまり女性だったのだ。


 ギルドで出会った男も彼女を見て目を丸くしている。


「んぅ、いてててて。」


 痛そうに目を閉じていたが、その目を開けた。


「あれ? ――あっ。」


 フードが脱げていることに気がついたのだろう。

 しかし、フードが外れたことが影響しているのだろうか、青年の声だったものが女性の声になっていた。


 彼女はフードをかぶり直し、素早く立ち上がった。


「さ、さぁ続きをしよう。」


 青年の声に戻っていた。


「え、え。」


 俺はだいぶ動揺していた。

 フードをつけていると男のようだ。

 実際今見ても胸はない。

 もしかしたら本当に男なのかもしれない。

 あんなに可愛い顔をして男なら、変な感情が芽生える男が生まれるだろう。(確信)


「お、お前女?」


「ち、違う。」


「そ、そうか。」


 ふむ……


 少し俺は考えこんだ。


 うん。

 もう一度見て考えてみよう。


 俺は彼か彼女か今は判別できない人がいる方向へ、加速した。

 一瞬にして彼女の横に立ち、


 バサッ


 フードをとった。


 彼女は未だ、俺が先程まで立っていた所を見つめている。


「ん。――え?」


 俺と目が合った。

 ふむ。

 女性の声に戻っている。

 このフードをかぶると、男の声を出せるようだ。


「お、おい! 何してんだ!」


 ふむ。声が可愛い。


「お前女か?」


「…………」


「どうなんだ?」


「…………くっ……あーもう! そうよ! 女よ!」


「…………」


「なんか言いなさいよ!」


「え、あ、良かった。」


「何が良かったよ! ほんと、もう、今までずっと男でいるようにしてたのに!」


 俺はこいつが女で良かったという安堵と、こいつの胸はどこに消えたのかという疑問が発生した。


「それはすまんかった。――お前、自分の体に魔法とかかけてる? 声みたいに……」


「ん……」


 彼女は自分の体を眺めて、プルプル震えだした。


「大丈夫か?」


「ねぇ。体に魔法ってどういう意味で言ったの?」


 ゴゴゴゴ…… という効果音をつけたいような感じの雰囲気だ。


「いや、胸に……」


「あぁ? それ以上言ったらぶっ殺すぞ。」


 怖っ。

 聞いてきたのそっちじゃん。

 まぁ聞いた俺が悪いが。


「ご、ごめん。で、結局どうなの?」


「察しろや! こらぁ!」


 俺の顔面めがけて連続パンチ攻撃をしてくる。

 だが、俺には当たらない。


「避けんじゃねえよ! おらぁあ!」


 俺は持っていたローブのフードを顔深くまで戻した。


「ぬ、やめろ! こらぁ!」


 彼女はその後も暴れた。









「はー、はー、はー。一発も殴れなかった…… どんなけ素早いのよ。」


「どんなけ追い回すんだよ……」


 俺はずっと追いかけ回された。

 本当にずーっとずーっと。


「あなたが変な質問するからじゃない!」


「それはもう何回も謝ったじゃん。」


「謝ってもすみません。殴らせろ。」


「殴らせてあげたじゃん。」


「あんなの殴った内に入らないわよ! あなたが寸前のところで顔を横にずらして、私の拳がその変なお面にかすっただけじゃない!」


「ごめんって。」


「あーもう疲れたわ。」


 彼女はそう言って、腰を下ろした。


「はぁ。正体もバレちゃうし本当最悪だわ。」


「なんで男のふりをしてたんだ?」


「そっちの方がいろいろ得なのよ。もうここまでいろいろバレたから言うけど私は火と水と風の三属性の魔法が使えるの。最初から魔法の才能はあって強い魔物を倒したりしてた。だけどお前それ拾いもんだろとか、賄賂だろとか疑われて信じてもらえなかった。もうそうなったら男のふりをして、冒険者をしようと思ったの。そうしたら、女目的のキモイ冒険者パーティに絡まれることも無くなったし、いろいろと楽だったわけ。けどもうバレたからお終いよ! このパーティ口軽いからすぐ私が女だって広まるわ…… はぁ。」



 これは申し訳ないことしたな。

 というかめちゃくちゃ教えてくれた。

 全然教えてくれる期待はしていなかったんだが。


 確かに男の割合が高い冒険者という職業の中で、女性は苦労するだろう。

 長旅でのトイレ問題は深刻だろう。

 男女混合パーティは特に大変そうだ。

 俺の守護者達はそこら辺でしていた。

 俺達は女性陣が強いので問題はなかった。

 俺もザックもプライバシーを侵害する愚か者ではない。

 もし変な真似をしたら殺されるだろう。

 そんなアホな死に方はしたくない。

 せっかくの二度目の人生なので世界を堪能しまくって死にます。



「なるほどな。でもそんな低ランクの時大変だった思いがあるのに新人狩りなんかしてて何とも思わないの?」



「そうね。でも冒険者になるならこのぐらいのことに一度は出会っておいた方がいいわ。

 冒険者は夢を持っててどこにでも旅に出れて世界を見れて自由だけれども、いつでも周りには死の恐怖がある。いつ死んでも全然おかしくない。だから新人狩りに会った後立ち上がれない様なら、冒険者を辞めるべき。彼らは感情的で怒ったり挑発したりお金に目が眩んだりするけれど、殺しはしたことはないわ。無駄な血を流させたくないと思ってて新規の冒険者に目をつけてるの。冒険者になって夢を追いかけるならば、それ相応の覚悟を持っていないとやっていけない。まぁ私はただ彼らにお金で雇われただけだけどね。」



「お金かよ。まぁそうか。新人狩りにも意味があるんだな。でもこいつら俺達のパーティの女性陣に手を出そうとしてたのは許せませんな。」


「それは私には関係ないわ。」


「まぁ内の女性陣強いから大丈夫だけどね。」


「あらそうなの? 私あそこの男にあなたが絡まれた時ギルドにいなかったから見てないのよね。さっきあなた達を観察している限り、普通だったわ。あなた観察されているの気づいてた? まぁさすがに気が付かないわよね。私達あなた達を囲って観察してたのよ。寝ている間に襲おうと思って。」


 やっぱり寝ている間に襲おうと計画していたのか。この変態め。


「気づいてたよ。」


「そう強がらなくていいわ。あなたが強いことはこの戦いで分かった。だけどあの距離で私達の存在に気づく索敵能力は無理だわ。」


 分かってたんだけどな……


「正面に俺達を襲ってきた男と聖人、左右に剣士と戦士ペア、後ろにお前だったろ。」


「う、嘘…… 」


 俺は顔があればドヤ顔をかましていたところだろう。


「はぁ。あなた凄いわね。正解だわ。最初から何もかも負けてたのね。あなたどうやってわかったの?」


「直感かな。」


 正確に判断できたのはイリスのおかげだけどね。


「なんかその答え腹が立つわ。」


「本当にそんな感覚だ。」


「ふんっ、まぁいいわ。あなたなんでそんなに強いの?」


「知らない。」


「あなた人間? そんなに強いなら魔人かもよ。」


「俺は人間だ。」


「そう…… そのお面ちょっと外しなさいよ。」


「それはダメだ。」


「なんでよ。私も自分のことこんなに喋ったんだから不平等でしょ。」


 彼女が立ち上がり俺の方に近づいて、お面を取ろうとしてきた。

 彼女の腕がこちらに伸びてくる。


 俺はその手の手首を握った。


「ダメだ。」


 俺は真面目な口調で言った。


「……分かったわよ。」


「そんなに無防備に近づいたら俺に殺られるかもしれないぞ。」


「大丈夫よ。あなたに殺意はない。あと無防備では無いは、一応ローブの中にナイフがあるわ。」


 彼女がローブから素早くナイフを取り出し、見せつけてきた。


「そ、そうか。」


 やはり女性は怖い。以上。


「ふふふ。」


「そのローブのフードをかぶると男の声が出せるんだよな?」


「そうよ。これは魔道具。声を変えれるの。」


「そんなものもあるのか……」


「まぁ魔道具は少し高いしレアだからね。でもあなたなら冒険者で稼いですぐ買えると思うわ。」


 ふむ。便利な機能がついていたら買ってみよう。


「そうなのか。買えるまで頑張るわ。」


「ええ。頑張りなさい。……やっぱりあなたの情報が少なすぎるわ。私は名前も魔術師って事も何の魔法が使えるのかも性別も私のちょっとした過去もおしえたのよ。というかあなたの名前も聞いてなかったわ。それぐらいは教えなさい。」


 それは自分の口が軽いからでは……


「それは言える。俺の名前はアレン。」


「アレンね。今日冒険者になったみたいだけど今まで何してたの?」


「何もしてなかった。」


 うん。俺は嘘をついていない。俺は自然にされるがままにされていたのだから。


「何もしてなかったの?」


「そう。何もしてなかった。」


「何もしてなかったって? 親の手伝いとかでもなくて?」


「何もしてなかった。」


「あなた親の手伝いぐらいはしなさいよ。」


「親はいない。」


「あ…… それはごめんなさい。……じゃあどこから来たの?」


「それは言えない。」


「じゃあ……」


 っとそんな感じに長い長い質問攻めにあった。


「えーっと、あなたは、アレン、17歳、男、格闘家、パーティ名はロード。出身地は不明、履歴はなし。そしてとても強い…… 結局これだけか。怪しいわね。」


「そりゃ初対面のやつにこれ以上は言えねぇよ。」


 あんたの口の軽さが異常なだけだよ。


「まぁそれもそうね。私が喋りすぎただけか…… あーもう、今日の私おかしいわ! 全部あなたのせいよ! なんか女ってばれてもう全てがどうでもよくなって…… はぁ…… 今日の私はダメダメだわ。」


 感情の起伏が激しい人だな。


 そんなことを思っていた時、誰かがこちらにやってくる気配を感じた。




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