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青年と少年と少女と。  作者: シュレディンガーの羊
【本編】
3/5

素直。



「俺、最低な奴なんだ」


少年は背を向けたまま、青年に言う。

その声は震えていた。


「あいつがいることで俺、救われたんだ。俺の悲しみなんて、こいつに比べたら大したことないって。どこかであいつを悲観してた。俺の」


少年が勢いよく振り返る。

今にも泣きだしそうな顔。

苦しげな声音。


「俺のあいつへの気持ちは優しさなんかじゃなかった。ただの、ただの同情だった」


静かに耳をかたむける青年の前で、少年は感情にまかせて早口で話す。


「あいつが必死で過去を背負って生きてるのに、その姿を可哀相だと思った。強いんだ、俺とは違うなって思ってた。ずっと、ずっと頑張ってたのに、無理してたのに。分かってやれなかった……っ」

「それでも、彼女は君を好いていたし、笑っていたよ」


囁くように諭すように青年が口を開く。

その優しさに触れるのを躊躇うように少年は顔を歪めた。


「……そんなこと」

「嘘だって?」


少年の言葉を先回りして、青年は問う。


「君を嫌いになるって?」

「このことを知ったら……」

「彼女はそんな人かな?」


少年は無言で首を振る。

それでも、その表情は暗いままだった。


「例え、彼女に嫌われたとしても、君が今そんなに苦しいのはどうして?それは彼女が大切な人だからじゃないのかい?」


唇を噛んで俯く少年に、ため息を零し青年は歩み寄る。

そしてその頭に手を置いた。


「何をそんなに自分を責めるのか理解に苦しむよ。ただね、最低だと自分を責めるぐらいなら、謝ればいい。正直に話せばいい。そう思ってしまったのは変わらないけど、今からなら変われるだろう?」


顔を上げた少年は目を瞬かせた。

青年はいたずらっぽく笑う。


「今頃、一人で淋しがってるよ」


早く行ってあげなきゃ――青年の言葉を聞く前に少年は走り出していた。

その背中に青年は苦笑しつつ呟く。


「本当に素直なんだから」



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