赤髪の事情
視点がシオンに変わります。
少しですが‥‥
王子の私室に着いた頃。
ようやくシオンが足を止めた。
先ほど会った彼女の言葉が耳に残っている。
けっして大きな声ではなかった。
そして、独り言のような声だった。
「その子の弱さもちゃんと見つめてあげて。」と。
あれは、どういう意味だったのだろう。
そして、思い返す。
彼女の事を。
自分が探していた小さな王子は、書庫の机に突っ伏して眠っていた。
初めは、向かい側に座っていた彼女が何かをしたのではと、一瞬ヒヤッとした。
が、直ぐにそれは思い違いだと理解することになった。
書物を真剣に、だが、どことなく楽しそうに読んでいた彼女。
だがフと顔を持ち上げ、立ち上がる。
翡翠のような、淡い瞳に目の前で眠っている王子が映し出された。
瞳の色は、どこか冷たい冷めたような印象を持たせるそれだったが、目の前の人物が眠っていると知ると瞳が和らいだ。
「あら、眠かったのね。」
聞き間違いでなければ、彼女はそう言った。
そして何故か、困ったような表情をしているものなので、シオンは部屋に一歩踏み出したのだった。
そういえば、尋常じゃない五感を持っている。でなければ第六感だろう。
書庫に足を踏み込んだだけでらシオンが入ってきたことに気がついたのだ。
では、外にいた時は気づかれなかったのだろう。
まるで、テリトリーを張っているかのようだ。
ますます怪しい。
そう思えてならない。