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チャレンジ作品!

熱烈な求婚をいただきましたが

掲載日:2026/04/17

「正気ですか? サバス様」


 新婚旅行を兼ねて、サバス様の領地に到着した後。

 彼はとんでもないことを言い出した。


「ああ、至って正気だとも、アリエル王女。いや、我が妻アリエル・ヨレンテ伯爵夫人。私がキミを愛することはない」

 

 国境を越えて熱烈な求婚状を送ってきた、隣国のサバス・ヨレンテ伯爵。

 彼は我が父である竜王の許可を得て、私の故国・竜人国で挙式した。


 そして竜王十九番目の子である私は。


 サバス様の花嫁として彼の伯爵領に入り、城に荷を運びこむ際、唐突に告げられた。


 この結婚に愛はない、と。


 彼の隣には、若く美しい見知らぬ女性。


「隣国から遠路はるばる来て貰ったが、キミの役目はここまで。今後私の妻役は、ここにいるニルダに務めて貰う事にするよ」


「……おっしゃる意味が、わかりません……」


 そんな私の言葉に(こた)えたのは、彼の愛人ニルダだった。


「鈍い方ね、奥方様。いいえ、今日からはあなたがニルダね。私が"アリエル"の名を貰うのだから」


 彼女が挑発的に胸を張ると大きな双丘が揺れ、サバス様が私のなだらかな胸元と見比べた。

 そんなことより。


「──私の名を使う?」


「だからぁ。サバス様が欲しかったのは、王女降嫁という事実と、竜王家とのご縁よ。そしたら後は、誰が成り代わろうと問題ないの」


 何を言っているのだろう。


「問題ないわけないでしょう」


「だが今後キミが外に出なければ、"花嫁が違う"とバレることはない」

「……"竜の宴"はどうされるおつもりです?」


 竜王家に繋がる者が招かれる祭宴。


「無論出席するさ。安心したまえ。このニルダと夫婦仲睦まじい姿で行く予定だよ。どうせ十九番目の王女なんて、誰も顔を覚えてないだろう?」

「……」


「サバスったら如才ないんだから」


 得意そうに(のたま)う彼に、ニルダが笑う。

「もともと"竜の宴"に参加するため、王女を求めた」

 そう、サバス様が言った。


 竜の宴は近隣諸国に聞こえるほど有名で、年に一度開かれる。

 参加資格は王の親族、縁故関係にある者。

 宴では"原初竜の恩恵"という多大な魔力を授かることが出来る。


 魔力が国の豊かさを決める時代。


 ヨレンテ伯爵家が竜王家の魔力を受ければ、自国での優位性が上がり、昇爵が望めるだろう。


「では結婚式での愛の誓いは、嘘だったということですか?」


「当然だろう? 初対面の、しかも日陰者の王女を誰が本気で愛するものか」


 竜王家にはたくさんの妻と、たくさんの王子王女がいる。

 だから目立たない子どもも数多く、私もその中のひとりだったのだけど。


 それでもサバス様は私に"一目で惚れた"と求婚して来たくせに。


「箱入り王女を言いくるめるのは、赤子を(さら)うより簡単だったよ」

「──とんだ詐欺師ですね」


「何とでも。だが己が命を守りたいなら、抵抗はしないことだな」


 サバス様の合図で、武装した兵たちが私を取り囲んだ。


「……サバス様、考え直さないと後悔されることになりますよ」


「ははは! どう後悔することになるのか、教えて貰いたいね。キミの国に、キミの言葉は届かないのに」


 それはつまり、私を監禁して"通信手段を封じる"と言う意味だ。


「最低……!」


「何とでも」


 愉快そうなサバス様の横から、ニルダが顔を出す。


「ねぇ、サバスぅ。私が王女様に成り代わるんですもの。ここにある嫁入り道具はすべて私の物になるのよね? 素敵な宝石がたくさんあって、目移りしちゃう」

「ああ、きっとどれもよく似合うよ、ニルダ」

「ふふふ。王女様より着こなしてみせるわ。あっ、王女様。私、あなたのお部屋もちゃあんと用意したの。このお城で一等高いお部屋。屋根裏部屋って言うの。きっとお気に召すわ」

「センスが良いね、ニルダ。キミに任せて良かったよ」


 キャッキャウフフと身体をくっつけ、じゃれ合うふたりの笑い声が妙に響いて。


 こうして私は屋根裏部屋に追いやられ、新婚早々、花嫁なのに捨てられた。




(愚かなサバス・ヨレンテ──)


 月が見える天窓に目を()り、狭い屋根裏部屋で私は思う。


(次の宴はすぐだもの。きっとあっという間に迎えが来る)


 


 

 その後、宴の招待にいそいそと出かけて行ったサバス様とニルダが、伯爵領に戻ることはなかった。

 代わりに。


 近づく飛行音にずしりと屋根が沈むと、よく知る竜騎士が窓から顔をのぞかせた。


「アリエル殿下、お迎えに上がりました」


 私の顔がぱっと華やぐ。

 高揚する気持ちを抑えながら、窓に駆け寄り鍵を開けた。


「ご苦労様、レジェス。でも玄関から来る選択肢はなかったの?」


「すみません。こいつが殿下のニオイに反応して、窓に突撃しちゃったもんで」


 飛竜の(くび)をひと撫でして、レジェスが部屋の中に足をつく。


「でも俺も。一刻も早く、あなたにお会いしたかったから」


 レジェスが言う。

 私は染まった頬を隠すように、そっと手を添えそっぽを向いた。


「もう、相変わらずなんだから。……サバスたちはどうなったの?」


「殿下も予想されていたと思いますが、"竜の宴"で"餌"として狙われました。伴侶のニオイがついてませんでしたから」

「やっぱり」


 竜人族は、その本性が竜。

 そして"竜の宴"とは、竜たちが普段抑えてる食欲を解放する宴。

 たらふく食べて、魔力を増強させる。


 たくさんの肉が並べられる中、竜のニオイがついてない人間は──新鮮な御馳走と認識される。だから宴の参加者は厳しく制限されるのだ。部外者が紛れ込まないように。


 サバスは、"キミを愛することはない"なんて言ってる場合ではなかった。

 私を屋根裏に押し込め、接触を断っていたのも悪手だった。


 サバスには私のマーキングがまるでない。ニルダは勿論。

 二人は食欲剥き出しの竜たちに囲まれ、正気を失うほどの惨状だったようだ。


 同時に、新婚王女を冷遇したこと。

 愛人を妻と偽り、王族の名を(かた)ったこと。

 そのすべてが竜人国に露見した。


「こちらの国に即、正式な抗議が送られ、殿下の返還と多額の賠償を請求。離婚も成立。迎えとして俺の飛竜が国境を越えることも承認済みです」

「そっか。我が国の利になったなら、私の嫁入りも無駄にならなかったね」

「俺は納得いきませんけどね。殿下の名誉を傷つけ、不遇な目に遭わせた結婚なんて」

「そうは言っても。十九番目の扱いなんてこんなものだし、私も育てて貰った恩は返さないとだし」

「ですが──」


 不満そうなレジェスの瞳に、私は私を映し込む。


「いいの。作戦通りだもの。瑕疵ある出戻りの身なら、身分差婚も許されるでしょう?」

「!? 殿下、それは!」


 うんと近づいて、彼の鼻先に熱い吐息を吹きかけた。


「例えば竜騎士と結婚したいと申し出ても……。父は許してくれると思うの」


 レジェスは一代限りの騎士爵。普通、王族の降嫁はないけれど。


 サバスは私を利用するために結婚したと言った。

 驚いてみせたものの、彼の目的はわかっていたから。

 軽薄な伯爵が打算で私に求婚した時、私もまた、賭けに出たのだ。


「大丈夫。私、あいつには指一本触れさせてないから。結婚式の口づけも、フリで済んだし」


 終始、"白い結婚"だった。


 両腕を回し、レジェスの広い肩を包み込む。

 長身を曲げた彼の髪が、ふわりと頬に触れた。


「殿下……!」

「アリエルと呼んで」

「恋しかったです。俺のアリエル」

「レジェス、私も」


 ぎゅっと抱き合い、彼の体温と脈打つ鼓動を全身で味わう。


「あなただけを、愛してる」


 感極まった口づけが、一気に幸せを(たか)め。

 私は夢中でレジェスを貪った。


(それにしても父上……。十九番めは息子だってことくらい、せめて覚えてて欲しかったな。まあ、いいか。おかげで国許(くにもと)でも堂々と結婚出来そうだし)


 我が国では王の言葉に異は唱えられないから、誰か気づいても"性別が"と言えない。

 それで嫁に出されちゃったわけだけども。



 こうして捨てられた花嫁こと第十九王子アリエルは。

 恋人の竜騎士と仲良く帰国したのだった。




 お読みいただき有り難うございました!


 あの…なんかすみません。どーしてもオチがいるような気がして、つい。

 定期的に男の娘を書きたくなる(ヘキ)…_| ̄|○;

 無理な方は下の6行をなかったことにしてください。作者的にはそれでも大丈夫!

 あと新解釈で感想欄に「竜騎士が男装女子」もいただきました( ゜Д゜) えっ、それも好き…! 作品執筆中に思い浮かばなかったのが残念~と思うくらい、そういうのも好物です! 有難うございます♪

 IFパターン末尾置いときます(笑)

挿絵(By みてみん)


 気軽に楽しんでいただけましたら嬉しいです♪

 アリエルはスペインで男女兼用名だとか。女の子っぽいよねぇ。

挿絵(By みてみん)

 16歳くらいのイメージです。


 投稿日の4月17日は「恐竜の日」でした!

 待って。今調べたら4月23日が「ドラゴンの日」だった。あっ……(゜д゜lll)←やっちまった感



 お話を楽しんでいただけましたら、ぜひ下のお星様を「いいぞ、もっとやれー」と塗って応援してやってください!!ヾ(*´∀`*)ノ

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普段は異世界恋愛が多いです!

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無知は最大の罪…て感じでやらかしましたね。追い回した側が洩らしたで有ろう言葉で.何故こんな目に遭ってるのか知ったでしょうから自業自得かな。最終的には助かったみたいだし後の良からぬ企み潰し+被害者生まな…
レジェスが男装女子ならおいしさ倍増かも! 普通に男同士でもいいけど!!(普通とは) どっちか!?どっちなんだ!??って皆が慄くのもいいな〜!!
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