4話 心の天気:嵐
〜宵城 海月〜
この学校の内部生であり、容姿端麗、成績優秀、コミュ力高めの三拍子。
妬み嫉妬恨みの持ち主を美しさだけで信者に変えるレベルのカリスマ力を持つ。当然のことながら上級生下級生にファンクラブが存在しており、アイドルのごとく崇め奉られている。尚、このファンクラブは非公式であり、本人には知らされていない。当然本人も知らない。
………はずもなく、
――気づいていないフリをしているだけである ――
皆さんお察しの通り、彼女は前世マフィアのボスとして上り詰めた徹頭徹尾冷酷な女王でありとんでもない演技力の持ち主である。また、柊と同じく前世の記憶がある転生者。しかし…
…え?今の柊だよね?
スゥッ(息を吸う音)
カッコい〜〜〜!!!!!
え?ホントに?本物?幻覚じゃないよね?
|д゜)チラッ
……本物だぁぁぁ!!!!!
と、このように先ほどまでのおっとり笑顔の裏はこんな風に荒れ狂っていた。
彼女は前世の知識をフル活用し、親の仕事を陰ながらささえ、今では誰もが知るような大手企業の重役を務める両親にまで育て上げた。(もはやどちらが親かわかないレベル)もちろん親たちも自分たちが誘導されてるとは気づきもしないうちに…。それが彼女の一番怖いところである。
そして、そこで得た権力を濫用しないはずもなく…幼稚園の段階からありとあらゆる方法を使って柊を探すも、そもそも自分と同じく転生しているかもわからず何とも言えない賭けのような状態だったため、結果は満足に得られなかった。
ついに諦めに気持ちが傾きはじめ、そこそこ自由のある中学に入学し、もはや特別何もしておらず(何をしても上手くいくため)漠然とした日々を過ごしていて高校への期待が0に近かった。クラスメイトであろう人たちはなぜか教室に入らずどこからか見ているし、中高一貫で中学時代の人は今までと接し方が変わらないし、どうせ外部生もたいしてほかの人と変わらないだろうと見切りをつけていたその時――
柊と会った。
これにより海月のテンションは爆上がりである。
ほとんど不意打ちのような形であるがなんといったって感動の再会(?)。とりあえず話したい声が聞きたい。ここで初めて周りの人が教室に入っていないことに激しく感謝した。が、そんなことは置いといて…。
ここで気づく。なんと声をかければいいのだろうか。
まず柊に記憶があるのかないのか。
ここまでは柊と同じ。しかし問題なのは、その後の思考回路の重さだ。つまり、
海月からすればボスをやっていた頃は生存本能で冷たいヤバイやつですオーラを漂わせる必要があったが、今世では必要ない。なんならかわいく見られたいという乙女心が働く。しかしはしゃぎすぎると周りから驚愕の視線を向けられる。
そう、つまり彼女はこれまで綺麗系で通してきたため可愛い系はレア中のレアなのである。
どう対応するか悩みに悩んだ末、理性がようやく仕事をし、学校でのイメージ通りにしようと決めた瞬間…
「おはよう!始めまして。俺の名前は神月柊。よろしくね。」
と、爽やかスマイルである。
こんなん久しぶりにくらって耐えれるわけないじゃんッッッ。
…いや?待てよ。始めまして?記憶ないってこと?え?…無理無理無理。けど記憶ないならないで素でいっても良さそうだよね。いいよね。うん!(自己完結)
「おはよ〜。こちらこそよろしくです!私は宵城 海月。カミヅキくん?シュウくん?どっちがいい?」
うわぁぁぁ。しまった…。テンパりすぎて始めまして飛ばした〜。けど全然始めましてじゃないしなぁ。…ってかやっぱ読み方違うよね。名簿表見たときにこれどっちだ?って悩んだけど、やっぱ違うよね?………はぁぁぁぁどーしよ…。私絶対後で間違えてヒイラギって呼んじゃうって…。…ん?今のうちから予めヒイラギ呼びを許可してもらえばいいのか!なんなら私のこともクラゲでいーよって言っちゃえば受け入れやすいんじゃ!?よし、これで行こう!
「あっ、ヒイラギくんもあり? 友だち1号オリジナル特典〜みたいな! なんなら私のこともクラゲでいーよ〜 ほら、海に月ってかいてクラゲって読むじゃん?わぁなんかこれいーね!オシャレなニックネームだぁ。」
あぁぁぁ言っちゃった!?ヤバイめっちゃテンション上がりまくってくじゃん私!?けどこれでOK出たら嬉しいなぁ。…遮っちゃったのは聞こえなかったふりで…。
「うん、もちろ―――」
――ガラっ
「おっはようございま〜す」
スン(テンションリセット)
…あ〜あ、人来ちゃった…。まぁいーや。もちろんって言いかけたよね?じゃあ許可でてるしこれでボロ出てもなんとかなる。けどなぁ、今まで気を使って入ってこなかったならせめて柊以外は入れないで欲しかったなぁ。過去のこと言っても仕方ないしいっか…。とりあえずクラスおんなじで過ごせるんだし、今日の収穫は上々かな。
…と、柊のめっちゃ考えまくってた考察の根拠は、こんなテンション爆上がりボスのワードチョイスからの推測であったため、無駄に心配しているだけである。
…もうお気づきかもしれないが、彼女は前世の癖がそのままのこっており、人の目があるときは理性が働くが、柊のことになるとストッパーが外れてしまう。そのため、本人は能天気でも周りから見れば特別扱いに他ならない。始まったばかりの高校生活は、彼女の気分次第で常に周りがめちゃくちゃ巻き込まれるということが確定したのである。




