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50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく  作者: かわさきはっく
第二章 ロルディアの影

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第62話 襲い来る影

 ヴァルディスの宣言とともに、空間が震えた。


 祭壇を中心に広がる黒の魔法陣が、高く唸り声のような音を響かせて脈動する。

 空間を満たす影が生き物のようにうねり、影の雨が降り始めたようにも見えた。


「来るぞ!」


 俺がそう叫んだ瞬間、四方から黒い触手が伸びてくる。

 それは地から生え、天から落ち、俺たちを包み込もうと襲いかかる。


 セリスが前に出て、盾で一本を弾いた。


「カイン殿、まずは周囲の影兵を減らしましょう!」


 俺たちを包囲するように立ち現れたのは、半実体化した影兵たち。仮面の男が操っていたものよりも大型で、より濃く、凶悪な魔力をまとっている。


「ルナ、感知を!」


「うん——ソリュ・ミナ・フェイ、リュン……《感知の魔眼》!」


 ルナの額に光が灯り、空間に幾つもの気配の流れが浮かび上がる。


「右に三体、左に二体……でも、奥にいるのが本体っぽい! ヴァルディス、じっとしてるけど、何か溜めてる!」


「なら、その前に倒す!」


 セリスが左へ駆け、二体の影兵に斬りかかる。盾と剣のコンビネーションで押し込んでいく姿は、まさに最前線の壁だった。


 俺は逆方向へ動き、水の魔力を集中させる。


「ウンディーヴァよ、蒼き閃光を放ち、敵を撃て——《蒼閃》!」


 青白い斬撃が一直線に走り、影兵の中心を貫く。

 影の体が歪み、砕け、光の粒となって消滅していった。


「エルン、援護!」


「了解。イルディアよ、終わりの光で焼き尽くせ——《終光ラスト・レイ》!」


 紫外線のように不可視の光線が、敵の魔力の中枢を焼き切る。

 影兵の一体が動きを止め、崩れ落ちた。


「順調だ……!」


 そう思った次の瞬間だった。


「——終わりだと思ったか?」


 ヴァルディスの声が空間全体に響いた。


 ヴァルディスはクリスタルに手をかざし、その内にある魔力ごと体内に吸収するような動きを見せる。


 すると影が渦を巻き、ヴァルディスを覆い尽くす。


 次の瞬間、ヴァルディスの体が、禍々しい異形へと変貌した。


 頭部からは角のような黒い煙が立ち上がり、下半身は影そのものとなって空間を滑るように浮かんでいる。

 そして背中からは無数の触手が生え、まるで意志を持っているかのように蠢いていた。


「静寂の完成を邪魔する者ども。消えよ」


「そっちこそ、消えろ!」


 俺たちは距離を詰める。


 セリスが先陣を切り、ヴァルディスの本体へと盾を構えて突っ込む。


「この盾で、影なんて打ち払ってみせる!」


 しかしヴァルディスの一撃は重かった。

 空中から落とされた影の刃が、セリスの盾をたたき落とし、彼女の体を後方へ吹き飛ばす。


 背中から倒れ込んだセリスは、すぐに起き上がろうとしたが、衝撃で腕がしびれていた。


「っ……重い、魔力の質が変わってる……!」


「セリス!」


 俺が駆け寄ろうとした瞬間、ルナが叫んだ。


「まってカイン! ヴァルディス……さっきとちがう!」


 ルナの《感知の魔眼》が、異変を察知していた。


「魔術の核が、ヴァルディスの中心にある! 胸のあたり、そこが……! 何かとつながってる!」


「つまり、核を壊せば……!」


「うん、力が弱まるか、あるいは!」


 その言葉に、俺の中に策が閃いた。


 俺たちがこれまで戦ってきた相手は、どれも影の魔法に依存していた。ならば、その力の中枢に直接干渉できれば、いかに不死を謳う相手でも揺らぐはずだ。


 俺はエルンを振り返り、素早く指示を飛ばす。


「エルン、セリスを援護。回復を頼む。ルナ、俺と一緒に接近するぞ!」


「了解っ!」


「わかりました!」


 俺たちは動き出す。


 次の一撃で、すべてを終わらせるために——。

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