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50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく  作者: かわさきはっく
第二章 ロルディアの影

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第30話 森を出て

 エルフェンリートの森を背に、俺たちは人の国へと続く街道を踏みしめていた。

 空は晴れていたが、胸の内に広がるのは未知への緊張だった。


 ——俺、カイン。

 かつては人間の男、そして今は、エルフの姿でこの世界に立っている。

 傍らには、銀髪のエルフ・エルン。そして、小さな魔法キツネ・ルナが寄り添う。


「このあたりからは、人の気配が濃くなってくるわ」


 エルンが慎重に周囲を見渡す。


「エルフの姿は珍しいし、ましてや私たちは森を追われた者……護りもなく、狙われやすい存在よ」


「……物騒な話だな」


 俺は木立の隙間から覗く空を見上げる。


「この世界では、生まれや種だけで価値が決められてしまうの。エルフは、美しさと長寿、魔力の素養を併せ持つ。……だから、商品になるの」


 エルンの言葉は淡々としていたが、そこに込められた怒りと悲しみを感じ取れた。


「エルン」

「……ええ、私は大丈夫よ」


 しかし、油断はできない。

 森を抜けた今、ここはもう外の世界——命を守るためには、力も知恵も必要だ。


「におい……する」


 ルナが急に立ち止まり、鼻をひくつかせた。


「人……いっぱい。こそこそ、してる」

「……つけられてる?」

「ええ、気配があるわ。私たちの動き、誰かが見ている」


 まるでそれを裏付けるかのように、街道の先の茂みが不自然に揺れた。

 何かが潜んでいる。——いや、誰かがだ。


「……進路を変えるわ。街道から逸れて、小川沿いに移動しましょう」


 エルンは地図を広げ、小道のルートを指差した。


 俺たちは草を踏み分け、小川のせせらぎが聞こえる静かな森へと足を進めた。

 警戒しながらの行軍は、緊張感の中にも静かな連帯感を生んでいた。


「エルン、俺たちは、ただ逃げてるわけじゃない。きっと、意味のある道を歩いてる」

「ええ。私たちは、追放されたんじゃない。自由を得たのよ」


 ——その言葉が、旅の始まりを確かにする。


 だが、俺たちの背後にはすでに牙を研ぐ者たちがいた。

 茂みの奥、影に潜む者が静かに呟く。


「……奴ら、こっちに来たぞ」

「銀髪の女と、妙なキツネ。それに……男のエルフか。珍しい組み合わせだな」

「売り物としては上等すぎる。逃がすなよ」


 知らず俺たちは、既に追われる側となっていた——。

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