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百周目の勇者と異世界転生した私  作者: 銀月
千年目の邪神復活と滅亡する世界

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22.邪神の神殿へ

 最後の試練で得られたのは、勇者ゴリラの武具として伝わる剣・盾・鎧の他に、属性ダメージを軽減する――つまり、熱さや冷たさの環境攻めに強くなるローブと、魔法的な攻撃のダメージを減らす――魔法で生み出された火や氷のダメージも軽減する鎧だった。


「どうでもいいんですけど、やっぱり僕がこれですかね」

「ザール、鎧も盾も訓練してないだろ」

「女の子が使うと思ってたのかな。でも、あたしこんなにひらひらしたの来てたら邪魔だから着たくないよ。それに、すぐ破けそう」


 鎧は誰が着ても問題ないデザインなのに、ローブの装飾はどう見ても女性向けの優美なものだった。サーリスはいったい何を思ってこのデザインにしたのだろうと、三人は真顔になる。

 だがしかし、背に腹は代えられない。


「――上からマントを羽織ってしまえば、それほど……」


 とうとう観念して、ザールはローブに着替えた。これで、防御の加護はカタリナ一点集中でもなんとかなるだろう。


「でもさー、先にこれがあったらよかったのに、なんで終わってから渡すんだろうね。意地悪だなあ」

「先にこれがあったら、真剣に突破方法考えなくなるからじゃないか?」

「えー」


 手に入れた装備に換装して、ここにも残されていたサーリスのメモを確認する。

 そこには、「邪神殿で邪神の信仰の証を手に入れること!」と書かれていた。勇者を育てる者サーリスの、この世界に降りかかる災いに関する予知能力には目を瞠るものがあったと伝わっている。だから、このメモを残した時にはすでに何が起こるかを知っていたということだろう。


「知ってても防げない災いだから、こうしていろいろ準備してたのかな」

「さあ……時の神は、未来は些細な出来事で変わっていくものだから、確定した未来は存在しないって言うんだけど」

「細かいところは変化しても、大筋が変わるわけではないということですよ。それじゃ、火噴き島へ向かいましょうか」


 たしかに、自力であの地獄のような最後の試練、“千尋の谷底”をクリアしたのだ。そこにこういう魔法具の防御が加わったのだから、火噴き島程度なんとかなるだろう。しかも、レベラゲだってめちゃくちゃやった。


「勇者ゴリラの剣は、ボス用にしよっかな」

棘付鎖(スパイクトチェイン)を予備武器にしたほうがいいんじゃ?」

「えー、だってこれ剣より使い勝手いいんだもん!」

「勇者の武器なのに?」

「いいでしょ!」


 勇者装備を手にしても、カタリナは相変わらずぶんぶんと鎖を振り回していた。攻撃範囲(リーチの長さ)とか使い勝手とかもろもろを考えると、カタリナ的に剣と盾はいまひとつらしい。

 結局、死蔵するのはもったいないし、戦ってる最中に持ち代えるのは面倒だということで、盾はロッサが使うことになった。


「なんなら、剣もロッサでいいんじゃない?」

「訓練は受けたことあるけど、あまり得意じゃないよ」

「今から慣れたらいいよ! そしたらあたしも剣とか考えなくていいし!」


 結局、鎧はカタリナ、剣と盾はロッサ、ローブはザールと決定した。



 * * *



 邪神の神殿――火噴き島へは、やっぱりドラゴンに送ってもらった。


「自分で飛んで行きたかったなあ」

「どれだけ魔力が必要かわからないのに、無茶言わないでください」

「でも、ゴリラの試練のときはうまく行ってたよ」

「溶岩があったからですよ。下が熱いと、上昇する風を作りやすいんです」

『勇者たちよ、島が見えてきたぞ』


 なんだかんだ言いつつ、風を作って高く舞い上がり滑空する……という方法を、三人は身につけていた。だが、人間を浮かせるほど強い風を起こすのに必要な魔力はかなりのものだった。そうそう頼りにはできない。

 そして、そんなことをドラゴンの背中でわちゃわちゃ話すうちに、いつの間にか島のすぐ側までやって来ていたらしい。


「さすが、ドラゴンの翼は速いですね」

「ありがとう! 王様にもよろしくね!」

「ここからは自分で飛んで行くよ」


 よっこらしょと立ち上がり、ドラゴンの背からひょいと飛び降りた三人の背には、もちろん翼の魔法具がある。

 三人は「じゃあね!」とドラゴンに手を振りながら、小さな翼をぱたぱたはためかせて島へと降下していった。




 上空から見下ろすと、それほど大きくはなく、めぼしい何かもほとんど無い、岩ばかりの島だった

 中央にもくもくと煙を噴き上げる火山に、乏しい木々や低木に申し訳程度の大きさの池がちらほらと。その池の多くの水は、黄色かったり青かったりとちょっとあり得ないような色がついている。飲めないのは間違いないだろう。


「神殿、どこだろう?」

「地下という話ですから、どこかに入り口があるのでしょう」

「隠してあるのかな」

「さあ……上から見てもそれらしいのは見えませんけど……」


 高さがあるうちにと、三人で火山を一周するようにぐるりと島を回る。空から見えるものは、今のうちに確認しておきたい。


「あ、あそこ!」


 カタリナが指さす先には大きな魔物がうずくまっていた。よく見ればすぐ横には小さな洞窟が口を開けている。


「あれじゃない? あの魔物、入り口の見張りだよ、きっと!」

「そうとも取れますけど、少し短絡的なのでは?」

「いいんじゃないか? 魔物倒して調べて、違ったらまた探そう」


 よっし! と張り切るカタリナが急降下した。そのまま魔物が顔を上げるよりも速く勢いの乗った一撃を与え「勇者ゴリラ参上!」と名乗りを上げる。

 奇襲を食らった魔物は少しうろたえた様子を見せながら、吠え声を上げた。


「悪魔タイプですね。火にも強そうだ」


 ロッサとザールは、流れるように魔物と戦い始めたカタリナから、少し離れた場所に着地する。ロッサは念のため耐火の加護を配ると、すぐに周辺を――とくに、洞窟を警戒した。

 ザールはカタリナを魔法で援護しつつすばやく周囲を見回した。


「他に魔物はいないようですね」

「洞窟も大丈夫みたいだ。俺、カタリナに加勢するから、警戒よろしく」

「はい」


 ロッサは盾と剣を構えて駆けだす。心なしか、剣が震えたような気がした。


「この魔物、つよーい!」


 ロッサが参戦すると、カタリナがうれしそうに笑う。ロッサが加勢したことと強い魔物と戦えることのどちらがうれしいのかは謎だ。


 魔物は見上げるほどに大きく、固い鱗と角を持つ、パッと見には二足歩行のドラゴンのような姿だ。翼は無いけれど、火炎系の魔法と炎を吹き付けながら、鋭い爪で応戦している。

 ロッサは魔物の死角へと回り、斬り付ける。

 さすが勇者ゴリラのための伝説の剣である。ロッサ程度の腕でも、魔物の鱗をたやすく斬り裂いてくれた。痛みに驚いた魔物がロッサを振り返るが、カタリナがその隙を見逃すわけがない。


「ロッサ、今の感じでー!」

「わかった!」


 ロッサはカタリナと協力して魔物を挟み撃ちにする。魔物は強いが、この一体だけを相手にすればいいなら楽な戦いだ。

 離れた場所から魔法を使うザールにも余裕がありそうだ。


『ねえ……ちょっと、何?』


 急に、どこからともなくロッサの耳に聞き慣れない声が聞こえた。


「カタリナ、何か言ったか!?」

「え、なにー!?」


 まさかカタリナの声かと思ったら、違った。


『うっそ、いつの間に戦ってるの!? 聞いてないわよ!? アタシいつ持ち出されたの!? 勇者が現れたの!? っていうかアンタが勇者!?』

「え?」


 声は、剣からだった。

 驚きのあまり足が止まったロッサを、魔物の尾が横薙ぎに吹き飛ばす。


「ロッサ、よそ見しちゃだめー!」

「大丈夫ですか!?」


 したたかに身体を打ったロッサは慌てて回復の秘蹟を祈った。とっさに受け身を取れたおかげか、ひどい打ち身だけで済んだようだ。

 これもレベラゲの成果だろう。


『ちょっと大丈夫? しっかりしてよね? テルちゃんに比べたらちょっと弱いみたいだけど、アンタも勇者なんでしょ?』

「――この剣、しゃべる!」

「剣?」

「剣ですか?」


 魔物を相手に戦っていたら剣がしゃべり出したとか、何の冗談なのか。

 ロッサは驚愕の表情で、手の剣をまじまじと見つめた。


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