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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第一節 無くしても残る物
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第七十三話 主の求めるモノ

帝歴403年9月14日

  

 行きつけの喫茶店の店内にて、私と妹のシルビア。

 そして友人のクレシアと共に遠目から例の二人を観察していた。

 先程から何やら妙に彼に対して距離の近い例の彼女に対して、終始何処か呆れてるのか楽しそうなのかよく分からない彼の様子に対して、私達は二人の会話の詳細が気になってしょうがなかった。


 「あの二人、一体何を話しているのかな……」


 「気になるのなら、近くに行けばいいと思うけど……」


 「それじゃあ、私達がここに居ることがバレるでしょクレシア!」


 「それでは、私がこの神器の力を使って二人の元に向かう手等はどうでしょうか?」


 突然とんでもない事を言い出したシルビアの言葉に、私は驚きクレシアの方も思わず彼女に対して質問を返した。


 「シルビアさん、そんな事ができるの?

 神器って本当に凄い力があるんだね」


 「はい、ですがまだ完全には扱い切れてないので……」


 「えっと……、それじゃあシルビア?

 二人の方は頼んでいい?」


 「任せて下さい、姉様!

 早速潜入に向かいますので」


 するとシルビアの姿が煙のように消え去った。

 僅かな痕跡も残らず、私達二人の目の前から消え去ったその完璧な様に驚愕せざるを得ない。

 しかし、ここで少し冷静を取り戻したクレシアが私の体を揺すって制止を呼びかけてきた。


 「ルーシャ、やっぱりその………。

 流石にソレを妹さんにやらせるのは駄目だよ……。

 後から何を言われるのか分からないでしょう!」

 

 「大丈夫だよ、二人にバレなきゃ問題無いし。

 それに、シルビアだってそこのところは上手くやってくれるよ。

 あと、ここまで二人を尾行してるんだから、もう後には引けない。

 クレシア、あなたも私との共犯なんだからからね」


 「そんなぁ………」


 落胆としている目の前の友人を他所に私は例の二人、シラフとシンという人物の方へと視線を向けていた。

 


 「それで?

 俺は何時まで一緒に居なければならないんです?」


 俺はそれとなく目の前の女性に対して尋ねる。

 僅かに彼女は長考すると、澄ました様子であっさりと返答した。


 「そうですね……。

 少なくとも、六時までは同行をお願いします」


 「六時、ですか……。

 まぁ飛ばして走れば間に合うか……」


 彼女の示した時間と、現在の時刻を照らし合わせる。

 現在、午後四時半程を差しており、今は差ほど慌てる必要もないと言ったところである。


 「全く、シラフ様は呑気でうらやましいですね。

 私は主の奇行について真剣に調べているのに?」


 「俺には関係無いからだよ。

 そもそも、あなたが自分と同行して欲しいって半ば強制的に連れられた挙げ句に居るんだからな」


 「そうでしたね……」


 「それで、これからどうするつもりでいるんです?

 二人は結局来なかったから喫茶店で二人を待ち構えて居ますが未だに来る気配は無いですよ。

 そもそも、2日連続で来ますかね?」


 「それは分かりませんが、二人が来る可能性が最も高いのがこの店ですので」

 「可能性が高いか……。

 いや、でも昨日寄ったんなら今日も来るとは限らないんじゃないのか?

 いつも姉さんは適当に何処かをふらついているから、一緒に行動を取っているならあなたの主の行く先にいる可能性が高いと思うよ」

 

 「ラウ様の行く先ですか……?

 そうなると、そうですね………。

 あの方はいつも放課後には大きな図書館へと立ち寄っています。

 休日は更に大きな中央特区の国際大図書館に居られますので」


 「図書館ねぇ……。

 一体アイツは何を調べているんだよ?

 それとも余程勉強熱心なだけなのか?」

 

 「そうですね、私には基本的に帝国についての調べ物だと存じております。

 他にも、学院の勉学に励みたいという意向も勿論あるそうですが……」

 

 「何をしているのか直接見てないで、アイツから言伝としてのみ聞いているだけなのか?

 過保護なあなたなら、いつもアイツと共に行動して調べ物を手伝ったり、あるいはその中身の確認とかをしていそうだと思ったんだが?」


 「そうですね……はい、何を調べているのか聞いた時にラウ様は私に対してはそう答えたくらいですね。

 それに私は、ラウ様から寄せられた特殊な資料の解析が担当ですので」


 「特殊な資料……?」


 「帝国の機密書類です。

 ここラークには、かつて帝国で使用された研究資料及びその他の機密書類の写しが保管されているんです。

 学院の建造目的の一つとして、帝国や世界各国の書類を保管する場所として建てられた経緯もありますから。

 帝国内外問わず各国の軍事技術の研究の幾つかも設備が充実していたここで行われた事もある。

 そう私は、自身の創造主であるマスター、ノエル様から聞いております」


 「例の帝国の科学者がそんな事を……。

 それで、その機密書類の解析はどうなんだよ?」


 「今の段階でと言いますと、現在までラウ様に頼まれた物は全て解析を終えて手が空いてるのが現状です。

 しかし、私も気になる事がありました……」


 「気になる事?」


 「ええ、ラウ様は以前にその………。

 私に対して自身のの起源を探っていると申しておりました……。

 しかし、それに関する書類だけは見つからないとのことで」


 「見つからないか書類か……」


 「はい。

 恐らくそれは、創造主であるマスターが自分の頭にのみに入れていた情報だと私は推測しております。

 あるとすれば、マスターの手記。

 私達が造られた場所でしょう……」


 「………、なるほど。

 それで?、ラウはどうして自身の起源を探しているんだ?

 今更知りたくなったきっかけやら何かしらの理由に心辺りはないのかよ?」


 「そうですね、ラウ様自身その件については私に対して頑なに教えてはくれませんでした。

 しかし、私の仮説ですがラウ様は親という存在が誰なのかを知りたいのかもしれません。

 私達はホムンクルス。

 マスター、及び人に造られた存在です……。

 それ故、人間と同じ親という存在を理解出来ません。

 しかし、造られたのなら何か基にした人間の設計図や遺伝子の情報が必ず必要なんです。

 この私の造形に関しても、かつて帝国の八英傑を努めたラウ・レクサスの幼なじみであったアルティア・スフラという少女を基に造ったとのだとノエルから聞いています。

 しかしラウ様に至ってはそれが現存していない。

 推測としてラウ様は、やはり同じ名を持つラウ・レクサスが元となった可能性が高いと私は推測しておりますが確証は何一つありません。

 創造主であるマスター亡き今となっては、それを知るすべは残っている書類を探し出すしかないと……ラウ様自身はそう判断してる、と私は推測しています」


 「……造られた基か……。

 それを知って奴はどうしたいんだよ?」


 「それはラウ様にしか分かりません……」


 「まあ、それもそうだよな……。

 でも、今更それを知ったところでどうかなる訳では無いし……。

 うーん、話も色々と逸れてしまったし……。

 結局二人が来る気配は無いときたかか……。

 これは無駄な時間になるのかもな」


 俺がそんな事を言い、ため息をつくと……。

 シンは俺に一つ尋ねてきた。


 「そう言えば、シラフ様。

 今日はこの後、昨日の祝杯と友人の誕生日のお祝いをするそうですね?」


 「まぁそうだよ。

 何か気になる事でも?」


 「その友人への贈り物は準備しているのでしょうか?

 見たところ、そのような荷物を持っているようには見えませんので」


 俺は目の前の彼女の言葉に一瞬思考が止まる。

 自分が友人の誕生日をお祝いするのに、当日になって贈り物の一つもない事に冷や汗が僅かにこぼれた。


 「……まずい、まだ何も用意していない……。

 しょうがない、急いで買いに向かうしか……」


 「でしたら、私もご一緒させて頂きます。

 本日、無理に付き添って貰った礼として、贈り物の選別に御協力しましょう。

 王女のご友人であり、更には名だたる令嬢でもあるその人に対して失礼な贈り物されては今後の関係にヒビが入ってしまうかもしれませんので」


 「いや、流石にそこまで酷い物は選ぶ訳ないと思うが、一応助かるよ。

 女性への贈り物とかは、分からないからさ

 時間も無いし、すぐに行こう。

 時間も余り残っていないからな……」


 「それで、今宵の宴は何時からでしょうか?」


 「えっと、6時半からだ。

 今の時刻が5時くらいだから……。

 移動の時間も考えて1時間も無い」


 「承知しました。

 シラフ様、それでは急ぎで近場の小物店に向かいましょう」


 それから、俺と彼女は喫茶店を後にし小物店へと足を急いだ。



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