己の成すべき、選択を
私には妹が居た。
とても心優しく、賢く、そして誰からも愛された。
しかし、生まれた場所はソレを許さない。
なので私は、妹の分までやることに決めた。
彼女が幸せに生きる為に。
私は己の手を幾度も血に染めた
そんな妹は、ある日突然亡くなった。
不必要だと判断され、処理されたのだ。
しかし、その亡骸を私は拝む事はなかった。
私と似た血を引いた彼女は、新たな兵器としての糧として利用する為だそう………。
私は許せなかった………。
妹の為に、その手を血に染めたのに………。
ただ家族が幸せであって欲しい、たったそれだけで良かったのに………。
この世界はソレを許さなかった。
私達は人間ではない。
人の姿をした、兵器なのだから。
私達には人権はない。
兵器に、人間ではないものに権利は許されない。
兵器としての役目を果たせ
商品としての努めを果たせ
不良品は必要ない、使えない道具に価値はない。
それが私達の存在意義、買い手の命令に従い一人でも多くの戦果を上げる為に………。
「どうして………」
引き金を引く
「クソ野郎……」
引き金を引く
「やめてくれ………」
引き金を引く
「助けて……」
引き金を
「殺さないで………」
引き金を
「許さない……」
引き金を
「殺してやる………」
引き金を
そうやって、この手は幾度も血に染まった。
もう、戻れない………。
でも、出来ることはあると信じて。
「もう失わせない」
私はある日そう決意した。
私達が幸せに生きられる為に
私の妹のような存在を生まない為に………
私達の権利の為に、
私達の独立の為に、
私達の自由の為に戦おう……。
願いの為に、意志の為に……。
家族の為に、仲間の為に………。
「罪を背負うのは戦う私達だけでいい。
だから………」
私達は戦った、私達を生み出した存在に対して
人間と長きに渡る戦争を始めたのだ。
●
帝歴404年1月13日
見慣れない部屋の天井。
小綺麗で綺羅びやか、そんな整った内装した場所で意識が覚醒する。
「気分はどうだい、ヘリオスさん?」
「最悪よ、昔の夢を見たわ………」
寝ている身体を起こし、軽い欠伸を欠く。
相変わらずの呑気な面を見せる彼の姿を見て、ため息を漏らす。
ほんと、いつまでも私を慕うなんて馬鹿で甲斐甲斐しいにも程がある。
「サリアでは一体何用で?」
「ここが嫌になって抜け出した。
気づけば、あの国に流れていただけ………」
「…………」
「はぁ、それで?
雇い主は今何処に?」
「タンタロス殿は、今サリアの王宮で仕事だよ。
主に都市開発事業の話だそうで」
「そんな事まで聞いてない。
とにかく、サリアの王宮に居るのね」
そう言って、私はソイツの居る場所に向かおうとするも腕を彼に掴まれ阻まれた。
「私の邪魔をする気?」
「あなたをこの施設から動かすなと、自分は言われてますのでね」
「腕ごと引きちぎりられたいの?」
「いやいや、そういう訳じゃ……」
「3、2、1………」
私が睨みを利かせながらそう言うと渋々彼は手を離した。
「全く、相変わらず恐ろしい人だ……」
「…………、例の件はどうなってるの?
ティターニアの兄だったかしら?
彼を上手く引き込みたいなんて事をしていたみたいだけど」
「それがその返事というか、まだ上手く直接的な接触出来てないんですよね。
ティターニア本人は先に接触したみたいですが、まだあの子は子供ですし……。
で、代わりに自分なんかが行ったところで下手な敵意を向けられても面倒でしょう?
タンタロス殿から接触しようにも、仕事が忙しくて難しいらしく直接の接触は難しいようで……。
まあでも、彼の仲間さんには時間を指定して待ち合わせの約束はしたようですよ。
でもその場には、あなたも居たでしょう?」
「そうね………」
確か、シラフ・ラーニルって名前の子。
例の私の力を持っているって言われてた、あの子の血を引いた数奇な運命を辿っている存在。
どれだけの実力者なのかは現状計り知れないが、かのシファ・ラーニルとは友好関係にある。
その利用価値は彼女をより警戒していたこちらからすればと相応の価値はあるのだろう…………。
まぁ、アレが彼を利用し最終的に何を企んでるのか知らないが………。
良からぬ事であるっていうのは確かだろう………。
「ティターニアもあなたに会いたがっていましたよ。
記憶喪失のあなたの治療に努めた、アーゼシカ殿から伝言として……、
面倒な事はこれっきりにしろ
だそうです」
「…………」
「明日はサリアの第一王女の結婚式ですからね。
王都はお祭り騒ぎ、全くこちらの仕事も増えそうですし?
これから色々と大変になりますよ」
「………私にはどうでもいいことよ。
この組織と関わる事も、今更何が出来るというの」
「お得意の汚れ仕事もそう遠くない内に来ますよ。
彼の返答次第でね、あなたにはその時が来れば助力は欲しくなる。
例え、それがあなたにとって不本意だとしても」
「…………」
「彼は、あなたの妹のクローンから生まれた存在。
それは何代にも渡って、その血は、力はより強く受け継いだ。
結果、あなたと同じ力に選ばれた」
「全てアイツが仕組んだのでしょう?
あの子の亡骸を、その遺伝子データを何処から入手したのか計り知れないけど……。
例の世界樹から、その当時の記録を取り出した辺りかしら?
だから私、アイツが嫌いなのよ。
終わった事を、今になって掘り返して………」
「でも、ヘリオス?
俺達がこうして存在出来るのはあの人のお陰だ。
当時に俺達に比べたら、かなり好待遇。
ようやく掴んだ平穏そのものだろう?
当時散々殺し合っても手に入らなった居場所が、俺達がこうして協力関係にあることで提供されている」
「私は、ヘリオスはあの時代でとうに死んだわ」
「………、だったら?
今ここで生きているあなたはどうなんです?」
「分からないわ………。
今の私が何者かなんて………。
もういい、適当に食事でも取ってくる」
適当な食事を済ませる為に部屋の扉に手を掛ける。
しかし、扉の先に誰かの気配を感じた。
「………そこに居るのは誰?
盗み聞き?」
「わたしです、ティターニアです」
声を聞き、わずかなため息と共に扉を開くと私の声に帯びて少し震えている小さな少女が目に入った。
「どうかしたの?」
「えっと、お昼いっしょにどうかなって……。
イクスを誘おうと思って、聞いたらあなたの方に居るって聞いたから」
「そう」
「身体は大丈夫なの、ヘリオス?
あいつらに変なことされなかった?」
「何もなかったわ、本当に何も………」
サリアでの日々を僅かに思い返す。
正直、あのまま野垂れ死んでくれた方が良かった。
でも、そんな私に手を差し伸べてくれた人が居た。
そして、かの国の人達は得体の知れない存在である私を受け入れた。
今の世界でもこの特異な力は、相応に目立ってしまったけど………。
それでも、ここの人達は………。
「俺達もこれから飯に行くところだ。
勿論、ヘリオスも一緒だよな?」
「私は別に一人で………」
私の言葉を遮るように、少女が私の服を掴んでくる。
「私と一緒は嫌なの?」
「………、分かった。
イクシオン、案内をよろしく」
「了解です、ヘリオスさん」
そう言って私の肩を軽く叩くと、ティターニアの手を取って道を先導する。
「全く、困った人達……」
二人の後ろを付いて行き、これからの事を私は考える事にしよう。
私はこれからどうしたいのか………
●
「暗い表情をしているようだね、シラフ君」
サリアの王宮に訪れ、廊下でクラウスさんと俺達はすれ違った。
自分以外にも、ルーシャやアクリ、そして歌姫であるミルシアやハイドさんも一緒である。
テナは用事を思い出したとかで、現在別行動中。
「クラウスさん………」
「何かあったのかい?」
「少し場所を変えましょう、今後に関わる大事な話があります」
「………、分かった。
空いてる会議室がある、そこで聞こう」
そう言って、場所を変えてクラウスさんを交えて俺はここ数日で起こった出来事について語った。
父親、及び妹の生存を確認したこと。
十年前の事件を手引きした先代陛下、及びクローバリサの存在について。
ヴァリス王国内の不審な動き。
教皇の告げた、最悪の未来……。
そして、姉さんことシファ・ラーニルの死亡した可能性について………。
その全てを黙々と彼は受け入れると、僅かなため息と共に口を開いた。
「なるほど、そういうタネだったか………。
真実が明らかになった反面、コレを容易く公に晒すのも問題だろうなぁ………。
ヴァリス王国については、少しばかり警戒はしていたがなるほどな………、
モーゼノイスが、君の父親であるオクラス殿だったか………。
しかし、あの人を多少知ってる程度の私が言うのもアレだが、彼がそんな目先の復讐に動くとは思えんな。
君がシファさんの保護の元でサリアで生きていると分かっていた、そして彼自身も娘と共にヴァリスで逃げ延びていた。
私の知るあの人なら、君の為にわざわざサリア王国を敵に回すような真似はしないと思う。
少なくとも、私の知る彼ならばの話だが」
「何か気になる事があるんですか?」
俺の質問に、僅かに間を空けてクラウスさんは答えた。
「ヴァリス王国の国王、ヒルダルク陛下について。
昨年程からだろうか、どうも様子がおかしいらしくね、私も直接見たが何とも言えない様子だったよ。
まるで、生きているような屍の見ているかのようだったとでも例えればいいか………。
ヴァリス王国内部で何らかの怪しい動きが見られているのはほぼ確実。
君が出会ったという父親や妹君と思われる彼女も、敵が君を利用する為に用意したナニカである可能性が高いだろう」
「…………」
「確かに、その可能性は高いですよねー。
私も一応、あの場でシラフ先輩といっしょに先輩の家族達と顔合わせはしましたけど………。
父親に関しては、ほぼ間違いなく何かしら裏がありますね。
妹さんに関しては、ちょっとわからなかったんですけど………」
「アクリ、お前は何か気付いていたのか?」
「まぁ、勘に近いんですけど。
本能的に警戒したんですよね?
なんというかシラフ先輩のお父さん、少し香水が強いというか……。
あー、私基準の話ですよ………」
「それで、妹のティターニアがわからなかったというのはどういう意味だよ?」
「妹さんの方は、そのままの意味ですよ。
シラフ先輩と似て魔力が高いみたいで、少し気になったんですよ。
幼いにしても、幼すぎる………。
あの父親の様子、そして今回のヴァリスの不穏な動きと何も関係ないならそれでいいんですけどね。
一番あり得る可能性が、ヴァリスの人質なんだとは思いますけど」
「なるほど……、
ホムンクルスの君からはそう見えたのか……」
「ええ、参考になればいいんですけど。
あと私、向こうのホムンクルスと一戦交えましたけど油断こそあれ、私と同程度の実力がありましたよ。
向こうは、アーゼシカって人に仕えてるって言ってましたが………。
そして向こうの親玉と思われる、タンタロス……。
いや、ビーグリフとか言ってましたか……。
あの人が一番の別格ですね。
だってあの人、ラウさんのグリモワールは愚か他の魔術も強制的に解除出来るみたいで………。
それに向こうの要求は、勿論シラフ先輩でしたし」
「………なるほどな、やはりあの男か………」
「クラウスさんは、彼を知って?」
「タンタロス殿の事か?
仕事で立場上、何度か面識があった程度だよ。
何か企んでいるのか、怪しい動きか関係が浮上し警戒はしていたんだ。
元が商人気質なのか、頭はかなり切れる人物。
表上はかなり気さくで、親しみやすい人格者ということで自国では相応に人望の厚い人物のようだが……」
「シラフ先輩を狙っているのは、やはり神器の力に目を付けてなのでしょうか?」
「………彼の元々の家系であるカルフ家は、元々タンタロス殿との親交があった家系なんだよ。
カルフ家は昔から主に彼を通じたヴァリスと帝国との貿易事業に強いコネを持っていてね。
今の彼の活躍は、カルフ家の存在あってこそなんだ。
本人は覚えていないだろうが、幼いシラフ君も何度か面識はあるはずだと思うよ」
クラウスさんの言葉に、俺は驚きを隠せなかった。
「俺が、ヴァリスの彼と?」
「ああ、そうだ。
そして、十年前の火災を経た君の家族を自国で受け入れたのもタンタロス、改めてビーグリフ殿だった訳だ。
だから単純に、君とその家族を引き合わせたいのかもしれないよ。
まぁ、そう単純な話で済めばいいんだけどね………」
「まだ何かあるんですか?」
「どうだろうね。
ただ、今一番の問題はシファさんが居ない事。
国の防御が実質丸裸にされたとも言えるからさ」
「そこまで言います?」
「個の実力は確かに高いよ、私や君達を見ればね。
でも、軍として、隊として見たならここサリアは貧弱もいいところだ。
見れば分かるだろう?
シファさんの厳しい教育あっても、この程度。
あの人は確かに強いが、兵一人一人の教育はまだしも軍隊を指揮する器ではない方だった。
彼女自身、一兵としては最強だがね」
「それはそうかもしれませんね。
それで、どうしますか?
やはりこの状況、かなり面倒な事態になりますよね」
「………、そうだね。
この事を知っているのは私と君達、他に誰が居る?」
「テナ父親であり、ヴァルキュリアの騎士団長であるシルフィードさんには先日お伝えしました。
彼を伝って、ヴァルキュリアからの協力を得られるだろうと踏んだので」
「なるほど、懸命な判断だ。
了解、私からも事態の対応に協力出来そうな人員を手配しよう。
ルーシャ王女、そしてミルシア様。
シラフ君を少し借りてもいいかい?」
「構いませんけど、その要件にどれくらいの時間は掛かりそうですか?
今後の予定に彼も必要になりますので」
「そう時間は取らせませんよ。
ちょっとした身内同士の話だよ、心配があるようならアクリ君を置いていくといい。
そちらは確か、ハイド君だったかな……。
歌姫と王女の護衛をこちらの話が済むその間頼めるかな?」
「わかりました、ミルシア様。
ルーシャ王女、少しこの場はこの方に任せましょう。
アクリさんはどうします?」
「……じゃあ私は残ります、念の為に」
「了解しました、それではお二方。
こちらへ付いてきてください」
そう言って、彼の誘導され二人は去っていく。
そして、部屋には俺とクラウスさんそしてアクリが残されたのだった。
「悪いね、時間を取らせて」
「いえ、構いませんよ。
それでクラウスさん、俺に何か用があるんですよね?
何の要件かは、粗方予想は付きますけど」
「そうかい………。
では、私から一つ尋ねる。
シラフ君、君はこれからどうするつもりだい?
さっきの話に関連するが、選択によっては君はこの国を敵に回すことになる。
君からすれば、この国に仕える義理は皆無だろう?
ルーシャ王女との交際こそあれ、彼女と共に国を出る選択もある訳だ。
サリア王家、いやこの国の人間が君の家族を殺そうとしたことは紛れもない事実になった。
そして、この国の味方になるなら……。
こちらとしては大変ありがたいが、最悪君は君自身の家族を手に掛けることになる。
私自身、実の家族はとうに亡くなってシファさんに拾われた身だからね、本当の家族が目の前に居るならそちらを優先するのが当然だと思っている。
例えそれが、自分の国を裏切ることになろうとね」
「…………」
「君の話の通り、シファさんが本当に亡くなってしまったとなれば、この国は危うい場所に立っている。
彼女の存在あって保たれた均衡、それが瓦解しいつ崩壊してもおかしくないのが事実。
君が思っている以上にこの国は歪で、ひどく汚れている。
私はソレをこの目で見てきた、そしてその汚れをあの人が血で拭う様も見届けてきたからね。
先日君が一戦交えたという、スルトア家の人間。
彼の父親は、この国の汚職の責任を取らさせ見せしめとしてシファさん自ら殺したんだ。
もう一度言う、シファさんが見せしめとして彼の父親を殺したんだ。
このような事が、幾度として繰り返された
それでも君は、この国の味方であろうと出来るのかい?
今後、激しい戦いでこの国を救ったとしても君はこの国の人間から非難を受けるかもしれない。
ソレを覚悟の上で………」
「………。
俺は、ルーシャの目指す理想の為にこの国の味方でありたいと思っています。
家族を敵に回すとか関係なく、彼女の理想を実現させるまで、俺は彼女の味方として、側で戦うと決めました。
色恋だとか、それは抜きでルーシャが俺を騎士として必要としてくれたから、俺は彼女の騎士として彼女の味方として共に戦う。
それが、俺の答えです」
「実の家族はどうするつもりだい?」
「可能なら救いたいですよ、勿論。
リンを救いたかったから、俺は先の戦いで姉さん達をあなたも含めて敵対しましたから。
結局、俺は彼女を救えませんでしたけど。
だからこそ、今度は必ず救いたいって意思はあります。
不可能だとわかっても、可能な限りは………」
「…………、そうかい。
まぁ当然の反応か………。
国の味方もしたい、家族も守りたい。
主の理想を叶えたい。
当然、君ならそう言うと思っていたよ。
でも、だからこそ敢えて言わせてもらうよ」
「…………」
「シラフ君、家族を斬る覚悟がないなら
サリアの味方はやめろ」
「っ…………」
「いいかい、君は神器に選ばれた存在だ。
まして、解放者……神器に選ばれた者の中でも一握りの存在だ。
君の選択で、この国の行く末は決まるんだ。
味方をしようがしまいが、これだけは事実。
君がその力を振るえば、サリアを容易く滅ぼせる。
一国の未来が、君の選択で大きく左右しかねない。
そんな状況の中で、今の君の判断はあまりに酷い。
斬り捨てる覚悟もなしに、その力を振るえば君自身は愚か余計な犠牲が出る。
そうなる可能性がある以上、私は今の君の選択を許容することはできない。
サリア王国の人間として、十剣の一人としてだ」
「……………」
「どちらにしろ、君は選ばないといけない。
家族を斬るか、国を斬るか。
主の側に居たいと願うにしてもだ。
その選択は、避けられないと思った方がいい」
「あなたは俺に、家族を斬れと?」
「どうだろうね。
ただ、私はこの国の為に戦うさ。
私はあの人に救われた。
そして、此処はあの人が守り続けた国だ。
あの人が守ろうとしたモノを、私は守る。
例えそれが、私の愛する人を奪った者達が居るとしても、それでも私の在り方を貫く為に、私はこの国の為に尽くすと決めたんだ」
「俺は………」
「シラフ君、私はね。
君がどちらを選ぼうと構わない。
それが君の選択なのだから。
でもね、君がもしこの国に刃を向ける選択を選んだのなら……。
私は君を、君達の家族を犠牲にしてでも私はこの国の為に戦うよ。
恩師であろうと、その家族だろうと関係ない。
例え君でも、私は容赦なく殺すだろう。
この国を守る為に、私は私の正義を貫くつもりだ」
「っ………」
「私からは以上、今回の話をルーシャ王女等に伝えるも伝えないも自由だ。
こちらからもシファさんの行方が判明次第、すぐに連絡する。
残り少ない時間だが、君を信じて待っているよ」
そう言い、クラウスさんは俺の肩を優しく叩くと部屋を去っていった。
「どうしても、選ばないといけないみたいだな」
「シラフ先輩………その………」
「行こう、アクリ。
ルーシャが待ってるからな」
彼女の呼びかけに構わず、俺はルーシャ達の待つ部屋の外へと向かった。
選択の時は、刻一刻と近付いている。