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炎の騎士伝  作者: ものぐさ卿
第二節 約束の騎士
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第百九話 優しい我が子の為

帝歴493年 3月21日


 その日、私は王宮に赴いていた。

 いつもの小難しい会議、流行り病の対策とか経済政策の対談とか色々と話が交錯している。

 正直、私は顔だけ出して他は基本的に自分達でなんとかして欲しいというのが本音。

 

 会議が落ち着き、ようやく私はあの窮屈な場所から出ると私を追って以前顔を合わせたカルフ家の彼に声を掛けられた。

 名前は確か、確か……えっと………。

 オク……オクラ………オクラス・カルフ。


 なんか色々と厄介事というか、カルフを毛嫌う勢力とか色々と邪魔されてばかりで苦労している人物だった気がする。

 以前会った時は確か、生まれた長男が可愛くて仕方ないとか結構な親バカな話題と、あとはその子の持つ素質云々の話。


 神器の適性も申し分なし、私としてはいつか騎士団へ勧誘も悪くないとは思っていたのだが。

 彼はどうやら、そういう荒事に関わる道からはあの子を巻き込みたくない模様。


 我が子可愛さのあまりかなぁと不安を覚えたが、実際はどうやら違うみたいだし………。

 

 そんな彼が、再び私に声をかけてきたのだ。

 また何か面倒事の悩みか、あるいは息子がまた可愛くて仕方ないとかそういう話題か……。

 

 そして開幕早々告げたのは勿論、あの子に関する話題である。


 「シファ様、どうやら息子の神器の適性を調べる為、近い内に国から使者が来るかもしれません」


 「あー、そう……。

 あれでもおかしいな? 

 私前にそうならないように、向こうには強く言っておいたはずなんだけど………」


 「シファ様、その私の息子は……。

 ハイドは神器に選ばれるのでしょうか?」


 「うーん、どうかなぁ。

 素質だけなら間違いない……。

 でも確実に選ばれるとは限らないと思うよ。

 でもさ、君達の血統的には8割程の確率であの子は選ばれると私は思っているよ。

 まぁ、悪くはない話だとは思うんだけど」


 「そうですか………」


 「確か、まだ選ばれずに残っている神器は炎刻の腕輪と天臨の耳飾りだったよね……?

 血統的にも息子の名前の元になった彼が身に付けていた物と同じ物が残っているのはなんというか運命的なものを感じるかも」


 「やはり、息子は……」


 そう言って、焦燥を隠せない彼。

 まぁ家が家だし、まだ子供のあの子が神器に関わるのはあまり良くは思わないか………。

 まぁ、私としてもあの年で選定の儀をやらせるのはどうかと思うが………。


 後で締めようかな、勝手にやったあいつら?


 「まあでも、かの英雄は理由はどうあれ自分から神器に選ばれる事を望んでいたね。

 でも、その英雄は国の為に……。

 主の為に神器の力を多く振るい命を落とした……。

 その活躍を後世の人々は英雄として称えた。

 あの英雄からなぞらえて名前を授けたんだからさ、まぁこれもある意味何かの因果なのかな?」


 「…………」


 「………、ねぇオクラス?。

 あなたの息子は、望んでいるの?

 まだ子供だけど、自分からその力を望んでる?」


 「分かりません。

 自分はまだハイドに、神器の件に関しては何も伝えてはいなくて………」


 「そっか、まぁそうしたくなるよね普通。

 で、あなたはどうしたいと思っているの?

 あの子がもし神器に選ばれてしまったら?

 その時あなたはどうしたい?」


 「息子は……とても心優しい子です。

 あの年くらいだとわがままが多く世話のやける時期ですが、あの子は私達に迷惑を掛けまいといつも身を引いた態度でいるんです。

 まだ馴染めない養子の子や、困っている人々を見過ごせない正義と優しさを持っている。

 故に、あの子は誰かの為に自分の意志すらと犠牲にしてしまってるのではないのかと、思うんです。

 これ以上あの子に、我々のせいで余計な重圧を与えたくないんです。

 その優しさが、我々をよく思わない奴らの思惑通りに利用し尽くされ壊れてしまうのではないのか、私はそれがたまらなく恐ろしいのです」


 「……………」


 「もしかしたら、いずれハイドは神器に選ばれる事を自分から望むのかもしれません。

 あの子の優しさなら、きっと………。

 自分の伸ばした手で一人でも多くを救えなら、あの子は躊躇わず手を伸ばし続けるのだろうと………」


 「そっか………」


 「はい。

 だから、あなた様に頼みたい事があります」


 「何かな?」


 「もしハイドが神器に選ばれ、自ら望んで十剣になった時……。

 あの子の師として見守ってくれませんか?

 私共はあなた様のように武に長けた者ではありません。

 故に、自分達ではあの子をあの子自身を守れる為の力を教えてあげる事は出来ない。

 でもあなた様なら、それが可能であると思った次第です、ですからどうか………その時は何卒……」


 そう言って、彼は私に頭を下げた。

 理由は最も、確かにあのままあいつ等の思惑通りに利用されてしまうのはたまったものではない。


 それに、あの子が成長した姿にも興味がある。


 なら、私の答えは決まってる。


 「了解、それなら構わないよ……。

 もしその時が来たら私が師としてあの子に守る術を教えてあげるから。

 それに、あなたの息子は多分あなたの思う以上に立派に成長してくれるよ。

 あの子の将来が楽しみだね、オクラス」


 「ええ、勿論ですとも。

 あの子は、ハイドは……。

 私共の、家族の希望そのものですから………」

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