日陰の主人公と日向の女子達 ②
今年に滑り込みで投稿出来ました。
今回の投稿は改稿するかもしれません
それでは皆様よいお年を
水瓶と雛百合の戦闘は一進一退の攻防が繰り広げられていた、水大蛇の本体が剥き出しになってから攻撃を仕掛けていくと、大蛇は水を纏ってまた水大蛇に姿を戻す、雛百合の少女達はその度に氷結させて表皮を削り大蛇を剥き出しにする。
「もー、切りないよ」
「効いているのか分からないよ」
「あ、戻った」
少女達を嘲笑うかのように水瓶から這い出た水大蛇はうねうねと動く。
「このままだとじり貧だよ」
「持久戦は覚悟してたけど、ウィークポイントが分かれば」
「だね」
捕捉 ウィークポイント
VRSにはウィークポイントが有る敵と無い敵の二種類が存在する、無い敵は通称モブエネミーかザコと言われている無限にポップする敵であり、有る敵はシンボルエネミーもしくはボスと呼ばれる、登場した代表例では亀型エネミーである。
しかし、ウィークポイントが存在する敵の場合でも剥き出しでウィークポイントが存在する訳ではなく、手順を踏むとウィークポイントが出てくる仕様になっている、例を亀型エネミーですると甲羅の下にウィークポイントが隠れており、そこをある程度の攻撃を加えると撃破可能になる、そのためウィークポイントを剥き出しにすることさえ出来れば、戦力差が有ろうとも巨人殺しが可能になる。
「何処に有るか分からない~よ」
「目を皿にして探せばあるよ・・・たぶん」
「それは無理だよと」
前衛職が大蛇の攻撃を捌きながら応える、雛百合のメンバー達は会話をしながら戦闘をこなす、水瓶の攻撃は単調な大蛇の噛み付きか首振りのみの二種類だけの為、雛百合の前衛職メンバーが大蛇の対応して後方で必要最低限の攻撃と支援をしていく、後は待機して非常事態に備える。
「あ、切れた」
間の抜けた声で後衛の一人が言う、前衛戦士系職の大剣が大蛇の三本有った首の一つが攻撃で切り落とされた、いや、切れたのではなかった、大蛇は蜥蜴の尻尾切りの様に首を一つ落としたのだ、そして残った二つの絡まり合って一つの大蛇に成った。
「え?」
唖然とした声を出した前衛、そんな声を出したのは左右に居た他の前衛が一瞬で消えてしまった為だった、正確に言うと大蛇の放った二方向に出た水のブレスで壁迄吹き飛ばされたのだ。
一人残った前衛は突然の事に後を振り向いて後方の様子を確認してしまった、吹き飛ばされた前衛は死亡しておらずヒーラーが駆け寄って行こうとしていたが戦闘中に敵に背中を見せる事は愚作あり大蛇は再び水のブレスを放射した。
「二人とも危ない!!」
「え?」
後を向いていた二人は避けようもなくブレスが直撃して他の前衛達と同じ様に吹き飛ばされてしまいマジックキャスターのみが取り残されてしまった。
「あ、詰んだ」
壁際で消えていく光の粒子のエフェクトを見て、マジックキャスターは呟いた、大蛇は口を大きく開けると水の玉が出来上がっていく、どうやら大蛇はマジックキャスターを大技で止めを刺す気の様だ、マジックキャスターの少女は魔法壁を展開するが大蛇の圧縮し続ける水の玉を見て言う。
「うん、無理」
圧縮が終わった水球は風を切る様な音を立てながら浮かんでいる、大蛇が叫び声を上げて水球を打ち出す、堪らずマジックキャスターは目を瞑る、そして轟音を伴いながらマジックキャスター目掛けて・・・飛来しなかった。
マジックキャスターが目を開くと大蛇のブレスはマジックキャスターがいる位置からはあられもない方向に打ち出していた、ブレスの行方を見るがそこには何も無かったと思ったが部屋の天井から人物が舞い降りた。
ポーンとシステムの機械音が鳴り戦況変化を報せる、マジックキャスターは透かさずにシステムを立ち上げる、画面を見るとそこには一文でこう書かれていた。
“サジタリウスが参戦しました”
マジックキャスターはシステム画面から顔を上げてこの戦闘に参加した人物を見た、水のブレスを躱した射手座はゆらりと大蛇に向かって歩みを進めた、大蛇は再び水の玉を圧縮し始める、大蛇の水球を見て射手座は歩みを止める。
立ち止まった射手座は片手を大蛇に向ける、すると射手座の横に弓矢を持った人が浮かび上がる、浮かび上がった人物は大蛇に向けて弓矢を引き矢を放ったと同時に大蛇も水のブレスを放つ、矢とブレスが衝突する。
「きゃ」
射手座と大蛇の間に挟まれる様に立っていたマジックキャスターは矢とブレスの衝撃に巻き込まれて吹き飛ばされる、マジックキャスターは壁に叩き付けられると思ったが柔らかく抱き留められた。
「え、え!?」
マジックキャスターは慌てて振り返ると射手座が受け止めていた、大蛇の方では射手座の側に現れた弓使いが攻防を繰り広げていた。
大蛇の攻撃を避けながら弓使いは散発的に矢を射る、大蛇の方は圧縮するブレスから切り換えて速射のブレスで弓使いと対峙していた、射手座はマジックキャスターを部屋の隅に誘導して大蛇に歩み寄っていく。
射手座は指で銃の形を作り大蛇に向ける、そして銃を射つポーズを取り
「Fate shuffles the cards and we play.(運命がカードを混ぜ、我々が勝負する)」
と一言を言うすると、弓使いは一回り大きい弓を取り出し、矢もそれに伴った物を番えてギリギリと音を立てながら弦を引き目標目掛けて穿つ。
矢は一直線に大蛇が大口を開けていて、そのまま口内を貫通した。
「ギャァーウワーギガーォッ!」
大蛇は断末魔を上げ光の粒子を立ち上げながら消滅していった、水瓶の討伐が終了した瞬間だった、その証拠に消滅した跡にはドロップアイテムが出現していた。
射手座は水瓶が居た場所に近付いき水瓶がドロップしたアイテムに手を伸ばしす、ドロップアイテムの一つ取り出して懐に収め更にもう一つ取り出して射手座は少し眺めてからマジックキャスターに放り投げる、マジックキャスターは慌てて受け取る。
マジックキャスターが受け取った物は水晶玉の様な形状でコブシ大程の大きさだった。
「これは?」
とマジックキャスターは顔を上げて射手座に聞こうとするが、いつの間にか射手座と弓使いの姿は掻き消えていた、仕方無いのでマジックキャスターは水晶玉を覗き込むとシステム音声が流れてくる。
【水瓶の称号を習得しました】
次々に流れてくるシステム音声が水瓶の称号してアクアに成った瞬間だった。