7/サシャの魔法
レベリング30日目。
今日、ブートキャンプ染みたレベリングモドキによりサシャのレベルは25にあがった。
「ヴァヴァヴぁ! 」
それと同時魔法を覚えた。
「何かビビッときた!」
言うと同時、サシャは「≪サンダー≫!」と叫び魔法で雷を飛ばす。雷はゆるいカーブを描いて壁を照らした。
魔法にサシャは跳ねるように喜び、アルクは鬼のようにキレた。
「脈絡なく打つんじゃねぇよ! もうちょっと曲がったら食らってただろうが!」
殴られたサシャは飛んで跳ねた。
「ぐえぇ……。ごめんなさい」
それから、発現した魔法の調査を開始した。
まず、サシャが直ぐにサンダーと必要な呪文を理解していたのは何故か。ビビッときたからである。以上。
アルクも回復魔法の習得と理解はビビッとで済ませていたので話は早く進み、サシャも能力の全容は既にビビッと知っていたので乗り気で試した。
結果小一時間で雷魔法を調べ終わった。
「ふふふ、≪サンダー≫。……いくらか魔力を追加したら曲げれる」
雷はさっきと同様のゆるいカーブを描く。サシャの魔力量を考えると全魔力を使えば10度位は曲げれそうだ。一回きりになるが。
「ぐふぅ。……食らうと一瞬だが痺れるな。結構魔法を使ったが残り魔力は?」
「んー、後1割くらい?」
「いいね、燃費の良い魔法だ」
検証中、サシャは終始上機嫌のままだった。
新しく魔法を覚えた事で、パーティーの戦力も飛躍的に上昇したと言って良いだろう。
二人は鼻歌まじりにセーフティがある洞窟へと向かった。
「作戦会議を始める」
と言っても献立5つがループするご飯を食べながら、明日のレベリングプランを決めるだけだ。
しかし今日は少し違った。
「そろそろ本格的なレベリングをしたい。俺が主に戦う予定だが、いいか?」
アルクは今までとは違う真剣な声で言う。
「いいわ。でも、役立たずのお荷物は嫌。魔法も剣も盾もある。それに仲間だもの」
迷いなく、サシャは応えた。
地獄染みたレベリングは奴隷になった村娘を一人の戦士へと引っ張りあげたが、アルクにとってこの期間は本来不要だった。
サシャ拾ったのは料理が上手いからでしかなかった。
でも、献立がループし、アルクが作り方をおおむね把握して、味に飽き始めても、サシャのレベリングは続いた。
気づけばアルクにとってサシャは仲間だった。
サシャはそれに応え、二人は笑った。
「そうか、囮役よろしく」
「いやいやいや。それはちょっと」
アルクは魔族だった。
明日は、サシャがサポート役をしながら中層を回る事になる。
「繰り返すけど囮はしないからね!? 死ななきゃ治せるとか言うなよ!?」
「分かったよ、ごめんよ」