エリムの町
エリムの町はクリスが住んでいる学院付近の町と大きく様相が違っていた。学院付近ほどの高級街感・近代感が無く、典型的な中世欧州の世界観だ。活気があり多くの店や人がみられる。観光地のようだ。また、近くに海も見える。
「んじゃ、取り敢えず宿屋に行きますか。そこで荷物置いて今日は解散。自由行動だな」
足早にレオンが先行する。おそらくここに来るのは初めてではないのだろう、勝手がわかっている。
他のメンバーも特に何も言わずついて行く。
……宿に着いたら解散しちゃうのか。
なんか寂しいな。できれば、みんなで食事でもしたかった。
「それはちょっと寂しいな。みんなで一緒にご飯でも食べようよ」
気づけば僕はそう口に出していた。
レオンは足を止め、振り返る。
「どうしたクリス? 今回のクエストはダンジョン攻略だ。改めて打ち合わせする事なんてないだろ」
「違うよレオン。単純に人恋しいんだ。みんなと一緒にいたいだけだよ」
「おまっ、マジかよ……。そんなこと言うやつだったか?」
流石に不自然だったか。
もう最近はある程度えいやで振舞っていたが、これはやり過ぎたか。
「そうなんだよ〜。最近のクリス君少し様子がおかしいんだよね〜。でも、前より今のクリス君がボクは好きだよ!」
唖然としていたレオンは少し硬直し考える。
「……ま、いいぜ!宿から少し歩いて、海岸沿いに、この町で一番でかい店があるんだ。荷物置いたらそこに行こうぜ!」
レオンは乗り気になってくれた。
「ミスティアもいいよな?」
「まあ、私は皆さんに合わせますよ」
ミスティアも同意する。
少し違和感を持たれたが、何とかなったようだ。
僕たちはそのまま宿のロビーに荷物を預けた後、海側の方に下る坂道を歩いた。しばらく歩くと、数ある店の中でより目立つ、大きく、騒がしい建物が見える。
「あれがさっき言っていたお店かい?」
「ああ!この町一番のスポット、冒険者ギルド兼大食堂だ!」
店に入ると、多くの飲食スペース、人で溢れている。『冒険者ギルド』と言っていたが、その要素は入り口からは見えない。別口なのかもっと店の奥にあるのか。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「4人だ!」
レオンが元気よく返答すると、店員は海が見える窓側の席(運が良い)に案内する。列車の席順同様に僕たちは席についた。
「おしじゃあ、まずはビールだな。俺とクリスとローラの分で3つか?ミスティア、お前って流石に成人してないよな?」
「してますが。と言うより、私はあなた達より先にこのクラスにいる先輩なんですけど」
「まじかぁ!?そうだったけか?思い出せねぇ。てことはお前17超えてんのか!?嘘だろ!?」
「余裕で18歳ですけど?」
マジか……。
彼女は僕の目から見ても、とても18歳には見えなかった。精々15歳くらいだと思っていた。
そしてこの世界の成人は17歳なのか。飲酒は17歳を超えればいいのだろう。
そう言えば日本もこの前成人が18歳になったんだっけ。てことは日本も今は18歳で酒が飲めるのか……?
って考えたら異世界もあまり変わらないな。
「あ、ごめ〜ん。ボク16だからまだお酒飲めないんだよね〜。ジンジャエールでよろ〜」
しれっとローラが年齢をカミングアウトする。
ローラは逆に16よりは大人びている印象がある。
「私もお酒は飲めますが、コーラでお願いします」
「ああ。まぁさすがにそうだよな」
そう言ってレオンは店員さんを呼びに手を上げかける。
「……『さすがに』って何ですか?私のこと馬鹿にしてます!?言っておきますが、飲めるけど、今日は気分じゃないだけです」
「はぁ!?別にそんなつもりねぇよ!」
「じゃあ『さすがに』って何なんですか?この言葉に内包される意味をきっちり説明してください!」
「それは……あのだな……」
レオンは言葉に詰まる。
「いいです。やっぱり私もビールでお願いします!気分が変わりました」
「いや、無理すんのはやめとけよ……」
レオンはミスティアのそれを虚勢と察して、気遣った。
レオンは良いやつだ。
「無理じゃないです!」
「ミスティアさん、僕もやめた方がいいと思うよ。別にお酒が飲めないからと言って幼かったりする訳じゃない。むしろ自分のアルコールの許容量をちゃんと分かって、それに応じた振る舞いをするのが大人だと思うよ」
「クリスまで私のこと幼いって言いました!?今から証明するので、早く頼んでください!」
だめだ、全て悪いように取られてしまう。
こうなっては諦めるしかない。そもそも僕はミスティアが本当にお酒に弱いのかどうかは分からない。彼女の言うように今日は本当に気分じゃなく、最初コーラを頼んだだけかもしれない。




