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魔術学院

 席に着きしばらくすると、教師と思われる30代半ばくらいの短髪眼鏡の男が教室に入ってくる。

 そして既視感のする挨拶や事務伝達を行ったのち、授業が始まった。


 そのくだりで、現実世界での学校の嫌な思い出がフラッシュバックし若干吐きかけたが、その話は置いておくとして、一先ず授業を聞くことに集中する。


 授業の内容はやはり魔術に関わるもので、初歩的では無さそうな内容。当然魔術は愚か、この世界のことをほとんど知らない僕には到底理解できるはずもなかった――

 が、驚く事に、聞いているうちに段々と情報が整理され頭に吸収されて行く。

 この体の脳スペックが高いのだろう、断片断片の微かな情報を頼りに、全体像をざっくりと掴めてくる。こんな感覚は、元世界の僕では味わった事は無かった。


 そして一限目が終わる頃には、この世界の魔術の概要を理解できた。


 この世界の魔術のルールはざっくり纏めると、以下である。


 **

 1.杖などの魔導具に触れて詠唱し、持ち主の魔力を消費することで魔術は発動する。

 2.魔導具で魔術式を読み込むと、その魔術が使えるようになる。

 3.魔力が足りない、適正がない場合その魔術は使えない。

 **


 一限目終わりの小休憩、僕はスクールバッグに雑に放り込んであった杖を取り出した。

 30cmほどの長さの木製の棒。

 先端には少し濁った透明の結晶ーー魔導結晶が付いている。この結晶内を魔力が共振し出力を増幅させるらしい。


 僕は早速試しの魔術を発動してみる。


「『投影魔術(プロジェクション)』」


 詠唱すると、杖の前にホログラム状の魔術文が浮かび上がる。

 これは魔道具にインプットされた魔術文を確認する魔術だ。超基礎的な汎用魔術である。


 ホログラムを指でスクロールしながらざっと見する。


「多っ! 火魔法水魔法風魔法土魔法は一通りと、睡眠、毒魔法まで使えるのか……」


 読み込まれている魔術の数も種類も膨大だ。

 とてもじゃ無いけど読みきれない。


 3の項目から考えると、クリスはこれだけの魔術に適性があるということだ。この世界の基準はわからないが、クリスは相当優秀なのかもしれない。


 ともあれ、今程度の魔術への理解では彼に成り切る事は出来ないだろう。残り授業もめい一杯、脳を働かせなければならない。


 ♦︎


「では、本日の授業を終わります。お疲れ様でした」


 3限目終了後、時間としてはちょうどお昼時に全授業が終了した。ダウナーげに終わりを告げたのは、魔術元素学担当のサティ先生(美人黒髪ポニテ)だ。


「あぁすいません、言い忘れてました。クリス君、セレナさん、ノア君、メアリーさん、この後D104の教室に来てください」


 ん?……呼ばれた?

 4名程呼ばれて、その中にクリスがいた気がする。

 補修って感じでも無さそうだが、何かしらのレクリエーションとか、あるいは係とかだろうか。

 となると、4人だけ呼ばれたってところがすごい嫌だ。密なコミュニケーションを迫られそうで、嫌な予感しかない。今のところクラスメイトの情報はおろか、クリス自身の事だって分からない事だらけなのに。陰キャラの『僕』には難易度が高すぎる。


 とは言え、無視したらより面倒臭い事になるのは明白だ。腹を括るしかない。


 僕はクリスの机の中やロッカーの中を一通り物色し、鞄に使えそうな物を詰め込んだ後、教室を出てD104に向かう。教室名をちゃんと先生が言ってくれたことだけが不幸中の幸いで、校内に掲示されたマップを見て、難なくたどり着けた。


「げっ……」


 D104に入ると僕の他3人は既に揃って着席しており、その中には今朝校門前で出会った少女が含まれていた。


 僕の目線は嫌でも彼女に向くが、彼女は僕に目を合わせない。


 彼女はセレナさん、メアリーさんのどっちなのだろうか。間違ったらまた、怒らせてしまうかも知れない。


「お待ちしておりました、クリス様。どうぞ、そちらの席にお掛けください」


 入室後、教卓壇上に立つ男に着席を促され、言われるがまま着席する。

 男は50代くらいで灰色の短髪。濃い赤色の軍服のような服を着ている。

 さっきの授業を行っていた先生方とは明らかに雰囲気が違う。


「改めまして、(わたくし)が今回依頼をいたしました、帝国軍将官のヴァルトと申します。よろしくお願いいたします」


 帝国軍……? 将官……?

 つまり、この国の軍人という事だろうか。

 将官の位がどれくらいなのかは分からないが、少なくともヴァルトは、下っ端ではなさそうな貫禄だ。そんな人が僕たちにレクリエーション(?)してくれるのだろうか。


 自己紹介の後、ヴァルトは僕たちに向かって姿勢良く深々とお辞儀する。

 僕は(かしこ)まってお辞儀を返すが、他3人は軽く会釈するだけだった。


「クエスト内容についてまずは、お手元の資料をご覧いただきたく。例によって極秘クエストになりますので、資料には鍵魔術(ロック)が掛かっております。詠唱文(パスワード)を今からお書きいたします」


 ???

 クエスト???

 それに、ロックだかパスワードだか言っていて、付いていけないのだが。

 僕の座った席の机の上に、資料らしきプリントが置かれているのだがこれが資料?


 置かれていた資料を手にとってめくって見ると、そこには何も書かれていなかった。


 ヴァルトは説明の後黒板に詠唱文らしきものを書き、それを見た他3人が何かを唱える。


「「「アンロック コード:XXXX」」」


 すると、3人の資料がぼんやりと光る。

 その後白紙だったはずの紙に文字が浮き上がった。


 ……あぁ、なるほど。ロックが掛かっていると白紙で見えないようになっていて、パスワードを唱えるとそれが解ける仕組みになっているのか。

 元世界の音声認識のロックと似ているな。これだったらうっかり、極秘情報を書かれた紙を道端に落としても、何の問題もない。


 僕は3人に倣い詠唱し、ロックを解除する。

 すると紙に文字が浮き上がっていく。


 表紙にはクエストの題目が書かれていた。


『ディザスタードラゴンの討伐』


 ……すごい強そうなドラゴンの名前だ。

 何しろディザスターである。災害って事だ。災害級のドラゴンなんだろう。


 しかしなるほど、要はドラゴン退治のクエストに僕たちは行かされるってことか。

 今まで車とか、既視感のある学校とか、電子機器と似たような魔法とか、あまり元世界と変わらない感じだったが、ようやく異世界らしくなってきたな――っていやいや、これやばくないか? ドラゴンとか戦える気がしないが。


 そもそもクリス達って学生だよな……? 

 この学園では、レクリエーション感覚でドラゴン(退治)クエストに行くのが普通なのだろうか。


「ディザスタードラゴンだと!?」


 3人の中の唯一男で、名前が特定されているノア君(見た目は超絶イケメンで髪色は黒。目つきが鋭く片目を隠す程前髪が長い。身長は175cmくらい)が驚き、声を張る。


 クール系な彼が驚くと言うことはやはり、よほど強いドラゴンなのか。


「こんな雑魚俺達に頼むまでもなく、そこらの冒険者(フリーランス)にでも依頼すればいいだろう。貴様、舐めているのか?」


 逆だった。ディザスタードラゴンは弱いらしい。


「いえまさか。あなた方の強さは十二分に承知しております。あの災害と謳われたディザスタードラゴンも、あなた方からすれば取るに足らない有象無象の雑魚モンスターでしょう。しかし、今回は場所が問題なのです。資料の5ページをご覧ください」


 資料を捲り、5ページ目を見る。

 そのページには場所の名前とその他よく分からない要項が詳細に書かれていた。

 場所名は『ラミア区 魔導力生成プラント エリアC』。


 ラミアは恐らく町だか村だかの名前で、エリアCはその施設が広く、区分けされていると言う事だろう。しかし、魔導力生成プラントとは何だろうか。


「周知の通り……いえこの場所自体、極秘にして重大な場所なので周知ではないのですが、この施設は非常に繊細な施設です。ですので、このエリアには魔導武器の出力制限が掛けられています」


「……なるほどな、出力特化魔導具(リゾナンスロッド)が使えない訳か。しかし、()()()場所にモンスターの侵入を許すとはな。帝国騎士は何をしているんだ? 」


「はい……帝国軍将官として、誠に面目ございません」


 大雑把にしか分からないが要約すると、モンスター自体は対した事ないけど厳重な施設の近くに入ってきたからあまり魔法をぶっ放せないよ、ってことかな。


 それにしても、ヴァルトさんは僕たちに対して相当腰が低い。

 学生なのに、軍の関係者にへこへこと頼みごとをされているって……クリス達(こいつら)は一体何者なんだ?


 

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