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シーン4


 

 目的の遺跡は、集落跡といった感じであった。

 原型をほとんど留めてはいないものの、それらが何かの建造物であっただろう事だけは漠然とだがシグナ達にも分かった。 危険な物はなさそうだが、その反面めぼしい物もあるとは思えない。

 「もっと、こう……地下迷宮みたいなのを想像してたんだけどなぁ……」

 どこか拍子抜けという様子のシグナに「ああ、私もだ」とリシア。

 「危なくないならその方がいいよぉ……」

 クリムの言い様は冒険者らしくもないが、シグナもリシアも彼女らしいなとは思っても、それを情けないとは思わない。

 「……まあ、とにかく調べてはみるか……」

 シグナが言うと少女二人も頷き、手近なところから調査を始めた。 建物というよりもはや残骸と形容すべき物の大半は石のような物質で出来ているようだ、あるいは木材も使われていたかも知れないが長い年月の間に腐敗してしまったのかも知れない。

 「……しかし、何もないな?」

 三十分程探索した時に、リシアが不意に言う。

 「そうだな。 そもそもストークさん達が来た時に何かあったのかも疑問だなぁ……」

 もちろん当たりがあればハズレもあるのが冒険であるのは分かっている、だからそうであったとしてもおかしくはないが、だからと言って自分達をこの遺跡に来させる理由は分からない。

 そんな風に考えていると、「……これって……?」というクリムの声にその思考は中断された。

 「どうしたんだ?」

 「……シグナ、これって……」

 クリムが見せてきたのは数センチ程の破片だった、かなり汚れているがおそらくは陶器だと思えた。 

 「多分……皿か何かかな?」

 そのリシアの見立てはおそらく正しいと思えた、この集落に暮していた大昔のニンゲンが実際に使っていたものだろう。 もっとも、仮に完全な形だったとしても何の価値もないガラクタではある。

 だが、「……このお皿使って昔のヒトが食事してたんだぁ……」とクリムの興味あり気な言葉を聞くと、シグナも多少はそれが違ったものに視えてきた。

 今はこのように残骸となっているこの場所にも、かつては町があり大勢のヒトが暮らしていたのだ。 そしてこの皿を使って自分達と同じように食事をしてもいたのだろう、ひょっとしたら持ち主にとってはお気に入りの物だったのかも知れない。

 今を生きる人々にとってはこの遺跡は何の価値もないガラクタに過ぎないが、当時のヒトにとっては大事な場所だったはずだ、自分達の村が故郷であるように。

 「遺跡とは宝物の隠し場所ではない……かつてそこにヒトが存在していた証しという事か……」

 リシアのそんな呟きに、シグナは彼女も同じようなものを感じていたと分かる。

 「もしも……この場所に宝物があったとしても、それを持ってっちゃうのってドロボーみたいだよねぇ……」

 確かにもう持ち主はこの世にいないし、放置したままである事に何の意味もないのは分かるが、それでもやはり後ろめたいものをクリムは感じてしまう。

 幼馴染みの言い様にシグナが少しムッとなったのは、カッコいいと思っていた冒険者という生き方を侮辱されたように思えたからだ。 だが一方でそれも冒険者というものの一面だと理解する程度にまでは成長しているのもシグナという少年なのである。

 「それでもさ、冒険者をやるって決めたのは俺の意志だし、やる以上は中途半端はしたくない」

 少なくともそれを必要としている人から盗むわけではない、所有者もおらず忘れ去れた遺物であれば、誰かに迷惑を掛けるような悪行ではないはずだ。

 「そうだね、シグナがやるならわたしもちゃんと付き合うよ」

 「ま、私は修行が目的とはいえ冒険者をいい加減にやる気はないさ」

 二人の少女も力強く頷いた、もちろん本当の悪行をするなら絶対に止めるつもりである、それが仲間であるという事だと考えるからだ。 もっとも幼馴染みのクリムはもちろんのこと、付き合いの短いリシアも彼がそんな事をするとは思ってはいないが。

 「何にしても、来たからにはきちんと調べて行こうか」

 リーダーである少年の言葉に、仲間である少女達は頷いた。



 「……冒険者なんてヤクザな稼業だもんね?」

 白いティーカップをコースターの上に置いた友人の問いかけに、「だったら何でやらせる?」と顔をしかめるストーク。

 見た目は二十代前半であるがストークですら年齢を知らないエターナリアという名の女性は、その彼にいたずらっぽい笑みを見せる。 

 「あたしはね、あの子達には強く立派な大人になってほしいの。 それに素質もあると思うしね?」

 「それも分かるがよ……」

 嘘ではないであろうが、この気まぐれで弟子達の様子を見に来たという友人の腹の内は、ストークも読めない時もある。

 「あの子達にはいろんなモノを見て、いろんな経験をして……そうして大人になってほしいのよ」

 人間が清廉潔白になど生きられるはずもない、何をどうしたって間違いや罪は犯してしまう。 村で静かに生きていれば、あるいはそれの近い事には出来るかもしれないとは分かっても、彼らにそんな人生は似合わないと思うのは師としての身勝手かもとは思う。

 エターナリアの考え方は理解しても、ストークには娘であるアイビスを冒険者家業に付かせたいとは思えない。 もちろん他人の子供であるからどうでもいいとは思ってはいないが、それでもやはりである。

 後進を手助けするべく冒険者の店をしながらも、娘にはそんな危険に関わらせたくないというのは、やはり身勝手な考えかも知れない。

 今は買い物に出かけてる少女の顔を思い浮かべながら、ストークはそんな風に考えていた。



 遺跡は三人の印象よりもずっと広かったが、それでもめぼしいものは発見されなかったが、それは想定のうちであった。 

 やがて引き返そうかと思い始めた彼らの前に現れたのは、神殿に視える建物であった。 それだけはそう思える程に原型を留めていたのである、もちろんそう視えるというだけで本当にそうとは限らないが。

 「……こんなものがあったとはねぇ」

 見上げながら呟いたのはリシアだが、シグナとクリムも同じ事を思っていた。

 「どうするのシグナ? 入ってみるの?」

 「ん? そりゃ入るしかないだろ?」

 クリムの問いに当然という風に答えたが、「で、でも! 危ないかも知れないよ!?」と訴えてきた。

 「確かに……いつ崩れてもおかしくもないか……?」

 リシアも改めて神殿らしき建物を見渡し言う、本で見たお城程ど広いでもないが、村の民家の十倍近い広さがあるのではないという印象だった。

 外見からは一見するとそうも視えないものの古い建造物であるし、中がどうなってるかはここからでは不明である。

 「それに魔獣が棲み家にしてる事もありえるだろう?」

 「そうだなぁ……」

 腕を組んで考えるシグナ、個人的には多少は危険でもとにかく中を視てみたいという想いは強いが、リーダーとして少女達の意見を無視してはいけないであろう。

 「そうだなぁ……まずが俺が中を覗いてみるよ」

 やはりこのまま回れ右は出来ない、おそらく師匠やストークもこの中に入っているはずだ、彼らの視たものを自分でも視たいという気持ちもある。

 予想通り「でも……」と心配そうなクリムにシグナは笑ってみせた。

 「大丈夫だよ、本当にあそこの入り口から覗くだけさ」

 言ってから、リュックを降ろしランタンを取り出してから剣を抜く。 そしてゆっくりと歩き出したのを、リシアもクリムも止めない。 代わりにリシアも剣を抜き数メートルの距離を開いて後に続き、更にその後ろをクリムもロッドをにぎりしめて歩み出す。

 入り口には扉はない、元からないのか長い歴史の中で失われたのかはシグナには分からない事だ。

 「…………」

 外からの光が届く範囲内には大きさの大小はあれど瓦礫が転がっている、そのようすから判断すれば人であれ魔物であれ何者かが長い時間出入りしていないように思える。

 次に天井の様子を見ようとランタンを掲げながら見上げた、頼りなさげに照らされた天井は、しかしかなりしっかりしているいるように見えた。

 「……これなら大丈夫か……?」

 シグナは一度振り返り少女達に向かって頷くと、僅かに躊躇しながらも中に進んで行く。 それは先に中の安全を確認をという意味もないではないが、好奇心の方が理由としては大きかった。

 「……って! シグナってば!」

 クリムが慌てて追いかけ、リシアも後を追った。


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