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仮面少女と騎士さま。  作者: 小椿 千冬
二章 名ばかり御子様の不思議な日常
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閑話・とある策士の策略

「どうしてこうなった」


立ち尽くす彼の前に見えるのは、立派な凱旋門。手にもつ地図とそれを交互に見比べ、首を傾げた。


彼の名はジークハルト=クレイドル。

四家来の一人、『ルーク』として御子の護衛を任じられ城を発ったのは一週間前のこと。


仕事柄、国を離れられない彼は異世界から来るという御子に会うのを楽しみにしていた。

その護衛、ということでいつもより念入りに銃の手入れをして弾丸も多めに詰めてきた。・・・それなのに。


御子がいる塔は、王都を出てずっと南に行ったところにある。距離は、街道を真っ直ぐに進んで人の足なら三日。馬車なら一日もあれば十分だ。


「あれれ~、また王都に戻ってきちまったよ。この地図、本当に合ってんのか?」


彼は、端的に言えば方向音痴というヤツだった。もう少し早めに出れば良かったと、的外れなことを言うのも彼らしい。


ちなみに。たかたが馬車で一日程度の距離の馬車に行くのに地図を持参するのは彼くらいのものである。


「ん~、こういう時は考えても仕方ないよな。・・・よし、戻るか!」


・・・彼は知らない。その手に持っていたのがエトワール国の地図ではなく、世界地図であるということを。


* * * *


「だから、ちゃーんと行こうとしてたんだって。ほら、一週間前に城はとっくに出てるだろ?」


城に戻った彼を待ち受けていたのは、腕組みをし相変わらずの仏頂面をした同僚だった。

どうやら、護衛につけなかったジークの代わりに彼が代行したらしい。


「馬車で一日の距離を、一週間かけてもたどり着けないヤツがどこにいる」


「ほら、ここに」


「・・・・・・・」


「うわぁっ、冗談、冗談だって。コワイ顔すんなよ」


視線で人を殺せるとは、まさにこのこと。絶対零度より冷たい視線をひょいひょいと華麗にかわす。


「じゃ、オレちょっと行くとこがあるからこれで」


こんなところにいたら、指先まで凍りついてしまいそうだ。

凍ってしまう前に逃げることを決め込んでくるりと踵を返すと、駆け足でその場を離れる---はずだった。

ぐい、と背を掴まれ、そのまま後ろに引き戻される。


御子あいつなら疲れて寝ている」


全部お見通しか。さすが天下無敵のナイトさま。そんなに甘くはないか。


「じゃあ、お見舞いに」


「ダメだ」


いつも通りのお言葉、どうもありがとう。口元がニヤリと歪むのを慌てて手で隠す。一瞬置いて、分かったと一言だけ告げると諦めた---ふりをして。


(はっはっはっ!さすがオレ。完璧だな)


人の顔を見る習慣のないナイトは、ちゃんと騙されてくれたようだ。


『ルーク』はナイトのような戦う力もなければ、クイーンやビジョップみたいに未来を視たり傷を癒したりという特殊な力もない。


(地味なんだよなぁ。まっ、いいけどさ)


邪魔者はいなくなった。とりあえず、明日は異世界から来た彼女をデートにでも誘ってみようと思う。



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