No.37 苗木は王都での闊歩を望む
スキル【寄生】でシルの体内に入ったが、ここで私が気配を消すとソフィア嬢が私が消えた事を気づき、騒ぎ立てるだろうと考えた。
その為、宿に辿り着くまでは大人しくしていようと思い。移動の道中の様子をシルの目を通して眺める事にした。
「ヘルナさん。シルちゃん。ここがセフィラ王国の王都です。王都の中は白い建物が乱立していて路地裏は迷路みたいになっているんですよ」
「キュイイ?!」
ソフィア嬢の説明にシルが相槌を打つ。
……馬車の窓から外を見て見たが、王都その名の通り。この王都は白き高い建物がそこら中に犇めき合い、裏路地は陽光が全然射さない場所がそこかしこに見える。
成る程。何かの取引する場所や、暗躍するにはかなり的した場所の様だな。そして、一度人攫いや荷物等が盗まれたとしたら、二度と盗まれた側の者達は取り戻す事は出来ないだろう。
聖煌国家〖セフィラ〗。煌びやかな国家名と歓迎の雰囲気とは裏腹に、何か裏が有りそうな国に見えてしまうな。
◇
「ブルル……」
馬車を引いていた真白馬が、私達が宿泊する宿屋の前に止まった。
「では、宿屋へ向かいましょう。シルちゃん」
「キュイ!」
ソフィア嬢はシルを抱き上げる。そして、そのまま胸元で抱き締めた状態で馬車から降りた。
その宿屋はとても立派な建物だった。外装は歴史ある宮殿のような建て付けで、入り口の大扉には細かいデザイン細工が施されていた。
宿屋というよりも、他の国の要人や貴族が泊まるレベルのホテルだな。こんな場所に泊まれるソフィア嬢とはいったいなにものだ?
……いや、多少抜けている私でも、薄々は気づいてはいる。恐らく、ソフィア嬢はこの王国の……
「着きました。ここが私達が今日から泊まる部屋ですよ。シルちゃん」
「キュイキュイ!!」
私が全く似合いもしない推理の様な真似事をしている間に、今日、泊まる部屋に着いた様だ。
シルの目から部屋の全体を見てみる。すると其処ら中に、動きを感知する為用の水晶の様な物が置かれていた。
これはいったい何に対しての注意なのだろうか?
①身分の高いソフィア嬢の安全を守る為の安全装置。
②特殊個体だが、ソフィア嬢が服従させた事にし、連れ歩いている事への警戒と、そのシルの討伐の機会を窺っているのか。
③私の存在に感づいた者が、私がシルの中から出来てきた瞬間。私を捕える為の魔道具なのか。
だいたい直ぐに思いつくとしたらこれ位だろうか。もしも、私を捕えるものだったとした考えが甘かったな。セフィラ王国の知恵者達よ。
私はここではない場所でひっそりと今後の対策をしていくのだからな。一人(1本)でそんな事を考えていると突然、部屋の扉が開いた……いや、どうやら違った様だ。何やら正装をしたソフィア嬢が扉を開いていたのだ。
ガチャ……
「では、私はシャーロットさん達と王城で、今回の長旅の報告をしに行きますね。ヘルナさんとシルちゃんはこの部屋で私が帰って来るまで静かに過ごしていて下さいね」
「キュイ♪」
キイィ……ガチャ……
……しまった。扉を閉められてしまった。当初の予定では、宿泊中にソフィア嬢の目を盗み、スキル【種子】で幾つかの私の種を、外の地面に撒く筈だったのだが。
「キュイン!」
何? それは僕が解決しただと? それはいったいどういう事だ。シルよ。
「キュイイ、キュイイ! キュキュキュイン……ブフッ……キュキュキュイイ…キュキュ!!」
……馬車から降りる前に宿屋の庭で便をしたんだ。だから僕が昨日食べた、こ主人様の種が便に交じって出たから、その種から私は発芽すれば万事解決だよ(笑)!……だと?
「キュイ♪」
うん♪……この肥満兎があぁぁ!! 主人であるこの私に対して、自身がした便から、私に発芽させる気か?!
「キュ…キュイ……キュ…キュル……Zzz」
む? お、おい。シルよ。何を寝ようとしているのだ? 外の日射しが気持ち良いから眠い。ではない。私の話を聞け……寝てしまった。
……仕方ない。先に《 吸収装飾館 》に入り、今後の作戦を決めるとするか。
あの耳長少年とも、あれからまだ一度も喋っていないしな。
スキル発動……【痕邸】
これから少し忙しくなるだろうしな。この王都での協力者を使っておきたいからな。
シュンッ……!




