第八話 未熟と終着
東出入口の穴がこっち・・・んじゃこっちの穴は何処へ?とりあえず行ってみるか?
「おいっクソ猿!巣穴から出ろ!」
そうだな一旦休憩してからでも問題ないし、ミキの食事を作って食べさせないとだな。ん?ミキは何処行った?・・・俺が背負ってる金庫の上で寝てるのか。どうりで静かだと思った。
もう夜だったんだな。相変わらず月がいくつもあって不思議な感じだな。前世は一つだったけど、こっちは朱色、黄色、白色、緑色、黒色の五つがあるんだが、朱色は俺の魔法でずっと三日月になったままだけどな。
「んじゃミキお嬢様を置いてから、今から死ぬか、今から駆除されるか、今から始末されるか、今から抹殺されるか選べ」
マキちゃん、どれも同じじゃね?それに理由が分からない。とりあえず金庫を静かに地面に置いて話を聞くとするか。こっちも【マキバ】流の関係者なのかを確認する必要があるしな。
「クソ猿、貴様は三つの罪を犯した。一つ、アスカお嬢様をとんでもなく辱める行為をした事。一つ、アスカお嬢様のご友人であるミキお嬢様一人に戦わせ、お前は何一つせず経験値だけを奪っている事。一つ、お前はモニエ《猿人族》の末裔である事。一つ、ワシを怒らせてしまった事、万死に値する!」
一つ目のアスカちゃんを辱める行為をしたのはミキ、俺じゃない。二つ目はミキ一人でも問題ないと判断したからだけど、経験値?って何だ?後でミキに聞こう。んで三つ目はこの世界に転生した時にモニエ《猿人族》だったんだから仕方ないよな?んで四つ目・・・マキちゃん三つって・・・まぁいいや、万死に値するっておかしくないか?
「てめぇも冒険者の端くれなら、戦って散れ!」
先ずは両拳を口元に持って来て突進し、俺から見て左に陽動牽制入れてから俺の顔面に右拳の突きをしてきたが、躱して右手首と右腕を掴んで投げる。背中から落ち、少し悶絶。
「ゔぁっ!てめぇ卑怯だぞ!」
何が卑怯なのか分からないが、立ち上がって背中の大剣を手に取る。二刀流か・・ミキに【マキバ】流派の修行をした実力を確認しないとな。ってかお前誰よ!
「【マキバ】流初伝、カマイタチ!」
おいおいおい!脚だけで瞬発力を出してるのは駄目だって!とりあえず蹴飛ばして背中から落ちな。
「ガハッ!」
何処で修行したのか知らんが雑だな。あーそういえばミキも最初はあんな感じじゃなかったか?基本がなってない!
「【マキバ】流初伝、牙狼!」
マキちゃん・・・基礎基本を疎かにしてると後が大変だぞ?何度も立ち上がって向かって来ようとも、その剣は俺を捉えられない。ミキの練習相手にもならんな。とりあえずマキちゃんには気絶してもらって、後でじっくり話を聞くとしよう。
彼の突進を躱さず額にデコピン。今日は力加減が出来てる!
「ゔっ・・・」
この場に放置する事も出来ないな・・・どうしよ・・・。
結局、マキちゃんは金庫の中っていうか首から上だけ外に出てる。俺の背負ってる金庫は上部に扉が付いてるし、中は空間魔法で広くなってるからマキちゃんが入っても問題ない。ただ・・・俺が金庫を背負うとマキちゃんの顔が真後ろにあって、おんぶしてるみたいになってる。マキちゃん・・・暫く起きないでな。
「鬼っ!ユイちゃん手加減した?マキちゃん死んでない?」
今日のミキは左腕にくっついているんだったな。金庫の上はマキちゃんの生首があるからな。
心配しなくても大丈夫だって!首取れてないだろ?かなり手加減出来たと思ってるんだからな?・・・回復魔法を使っておこ・・・。
そんな事より、この東の穴が何処に繋がっているかの確認が先だ。めんどくさいがお仕事はしっかりしないとな。小鬼達の気配は全くないが、地上に多くの気配・・・街か。
かなり進んだけど・・ここで行き止まり。ん?壁が一度掘って埋められてるな。とりあえず崩してみるか。
壁が薄いから手刀で俺が通れるくらいの穴を開け、穴を通ると十数人の兵士が武器も持って待ち構えてた。
「抵抗すればこの場で殺す!」