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その存在自体が闇に隠されていた悲劇の王太子ルディオ。
彼は虐げられていたが、この度アヴァルト公爵と、その一族により見いだされ、保護された。その溢れる魔力と、その姿から血統は疑うべくもないとされたが、それを認めない者達が働きかけ、両派閥立ち会いのもとその真偽を確認する。宝物庫のアーティファクトにより調べた結果、皮肉にもその血統に疑いが無いことを証明する。アヴァルト公爵とその夫人は、不当な扱いを受けていた者を本来あるべき所に戻すべき! と、これまでは表立って動いてこなかった強力な二人の後ろ楯を得、その地位は確固たるものになりつつあった。
特に目を引くのは父親に瓜二つのその優れた容姿、そして父に無い無尽蔵な魔力。民を思いやる気持ち、国を愛おしむ思いも人一倍で、自ら先頭に立ち難題に取り組んでいく姿に、新たなこの王太子の存在を認める意見が大多数を占めていく。
それを認めない教会幹部を後ろ楯に持つ王妃(聖女)派は孤立していく。
「で、二人はここに遊びに来てていいの?」
大森林の花畑で思い思い寛ぎながらも、誰一人としてもの申さない問題についてミナヅキが軽いタッチできいてみた。
皆、今気が付いたように目を点にした。
「え、あ! そうだ! ほんとです! 私を含め複数人が警護しているといってもお二人の行動には最高レベルの制限がかけられていますか。何で今まで気がつかなかったんだ! 恐ろしい……」
イグニスは割りと真剣にさっきまで気が付いていなかった事実が信じられないでいる。
「ねえ、どうやってここまでイグニスさんまで騙して連れてきたの?」
「ふふふ……それはナイショよ」
「そう……寧ろこうでもしないと自分たちの思う自由なんて一生得られないからいいの……」
「うーん、他者からの認識を暈してしているのか? それとも……」
いつもミナヅキから発せられる不思議な魔法を再現すべく奮闘しているシドが今回も一生懸命分析する。
ミナヅキの両隣に座っている双子が繋いだその手を強く握る。
「……お母様もばあやも皆嫌い。ティナや私の言葉なんて一つも聞きもしないで無視してるのよ? それなら私達の都合に合わせて無視して貰う事にしたっていいはずよ」
「イグニスだけなの。私達の目を見てちゃんと話してくれるのは……」
とても寂しそうに下を向く二人。
「ルディオお兄様とイグニスだけよ。あの城で私達の味方なのは」
「そっか……大人の思惑はさておき、兄弟仲良さそうでよかったよ。」
シドが微笑む。
「自分的には危ないからこーいう事はやめて欲しいですが……」
「イグニスは黙る!」
「……はい」
「ふふふ……ティア達の周りは何て思っているのかはちっとも分からないけれど、ルディオともう仲良しなんて流石よね」
大人達の思惑なんかには振り回されない自由さがそこにはあった。




