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「おお、グランも来たか! おぬしも……よしよし……と。久しいなぁ……と、言うてもグランは私の事は知らぬのだろうがな」


「ふぐっ……!」

 推しも推されぬ高位貴族で国の重鎮グラン・アヴァルト公爵が右にならえで体育座りで頭をナデナデされている。それを間近で見せられているミナヅキは腹筋とタイマン勝負を始めたらしく怪しく打ち震えている。


「おお……この魔力は知っているぞ? ご老体の近くでいつも感じられていた彼が心から渇望していたもので、一番近くで一番遠かったものだ。しかもその見た目は若い頃のご老体の面影が色濃く出ておるよ?」

「おお……そうだ、今の私は前にも増して父上の欲しがる魔力に満ち溢れた存在だな。お主も魔力に溢れておるからいつまでも若い。変わらぬな」

「ふふふ、どうもありがとう」

 今は壮年男性に見せているはずなのにそれを、軽く扱うルディオ。


「これはトオルの仕業だね?」

「てへっそうです。行った先に偶然ルディオが居たので、あたし二枚目をお持ち帰りしてきちゃいました♪」


 大体のあらましを順を追って説明するとグランが悪い顔をしていた。

「ふふふ……悪い子だね」

「頼みの綱、延命は聖女様のみになったのか……これで現国王は衰弱していくのは確定……と、そうしたら次の王位についてなんだけど。……ルディオ、この時期に顕現(けんげん)されるとは、貴方は皇太子として立たれるおつもりか?」


「え? あたしそんなつもり……」

 グランの掌がミナヅキのその先を止める。

「ボクはルディオに聞いているんだよ?」

 にこやかにダメといわれてすごすご引き下がるしかなかった。

「ティナはいないね?」

「あ!」

 思い当たる節があるのかティアの顔色がかわる。

「グラン……!」


「トオル……ティナとティアは双子なのは知ってるよね? この子達は親からついで聖女になった王妃から予言に基づき生まれた王位継承順位最上位の王女様達なんだよ。しかも二人の力をひとつに合わせると始祖に近い強力で偉大な王になるのでは? と一部で画策されている。そんなこと普通ではあり得ないしそれをティナ自身が望んだとしてもそう簡単に行くものではないのにね。で、それは何を意味すると思うかい?」

「え? それって……あ」

「そう、奴らはもう一人の能力をこのティアに何とかしてでも継がせるために片割れを亡き者とし、何者にも負けぬ強き後継者を育成する計画を幼き時より企てているだよ」


「ちょっとお父様! ティア! きいちゃだめだって!」

 下を向いて(うつむ)くティアを抱きしめ耳を塞ぐミナヅキも目を閉じている。まだ幼い彼女にはとても辛い事を言うとか信じられなかった。

「お父様、あまり酷い事は……」

「トオル……我々がその情報を知るきっかけをくれたのは、更に幼い頃のティアで、大事な妹を守りたい一心から出たものなのだよ」


「そんな!」

「なにが聖女か! ……ね、そうは思わないかい? トオル」

 グランはここにいない少女に遠くない未来に降りかかるであろう理不尽に対して静かに怒っていた。


「それを何とかする為に貴方はここに、来たのではないのですか?」

 視線が交わりルディオが不敵に微笑む。

「ふん、影に隠されていた王太子がある日見いだされ、その溢れんばかりの力で民や王国を救う……か? 大衆演劇や物語で持て(はや)されそうな話題ではあるが、(ぬし)らはそれでよいのか?」

 少女は瞳を潤ませ頷く。言葉も出せない。


「我がアヴァルト家は貴方を唯一無二のものと仰ぎ、私グランと我が妻エマが、共に貴方の後ろ楯となりましょう。ルディオ殿下」


 グランはルディオの手をとる。

「うむ、何の為にこの世に立ち戻って参ったのか、この命の使い道がハッキリしたようで何よりではないか?」


「旦那様、お茶をお持ちしま……! しっ失礼致しました!」

 ガシャパリーン……

「あぁ!!」


 メイドさんが異様な風景に驚き飛び出していった。廊下は大パニックのようだ。





「あ、そうだ。最近何度かヤバイかと思ってお預けになっていたけれど、聖女様の頑張りのお陰でこちらが考えてたよりご老体が持ちそうだから、それならばと式の日取りを決めてきたよ? 少し早いけど。夏になる前に挙げちゃおうね。まずは、なる早でルディオ殿下に王太子になっていただき、秋から冬には殿下の即位もあるだろうから忙しくなるよ?」

 グランも素が出る程に色々あった。

「!」

 色んな事がこの小一時間の間に駆け抜ける様に決まってしまい一番初めにあるだろう自分の結婚なのにそれどころじゃないみたいな様相を呈してきて嬉しさがちっとも込み上げてこないでいた。

「トオルどうしたの? 大丈夫?」

 さっきまで、ミナヅキの胸に抱かれて涙ぐんでいたティアが今度はミナヅキ自身の事を心配そう聞き、オロオロと眺めてくる。

「ううん、何でもないんだけど。色々がいきなりで余りにも濃ゆい内容だったからちょっとびっくりしてるだけかな。あはは……」



「式はこの前みたいな事があるとも限らないから近親者のみで執り行うよ。いい?」

「あ、はい! 是非ともそれでお願いします」


 一人で帰り、夜にこのニュースがもたらされると今日一番の驚き加減でシドがびっくりしてくれてその変わらない反応にミナヅキはようやく一息つけた。

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