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 シドに送ってきて貰い、礼拝を終わらせると奥の間に通される。


「ミナヅキ様こちらでございます。本日は、ありがとうございます。私、面談で手の離せない司祭の代わりにご案内を仰せつかっておりますミカエラと申します」

「ミナヅキです。よろしくお願いします」


 渡り廊下の先、離れた場所に飾り気のない白い建物が中庭にある。ミュースラントの教会の慈善活動に訪れたミナヅキ。


「こちらはお怪我をされたと方々の施術エリアです。病棟が食事時間になっておりますのでこちらで少しお待ちくださいませ」


 待ち時間でお年寄りのお世話の手伝いをしている最中に、ある話し声が聞こえてきた。


「……聞いたかね。貿易の街メルティで他所(よそ)から持ち込まれて死人がたくさんでた疫病がまたぞろ広がってきてるってだってよ……」

「なんだって!? 恐ろしい話だなぁ、お前。そいつは本当なのかい?」


「ん? 疫病なになに??」

 不意に耳に飛び込んで来た怪我した商人の話が気になって仕方ない。


「……それで回復魔法持ちの術者がそっちに集められて今は国中どこも治療が思ったように進まないらしいな」

「疫病……て、数年前に流行ったやつと同じなのか?」

「とりあえず症状が同じらしい」

「それは恐ろしいなぁ……」


 一旦聞き耳に集中するミナヅキ。



 聞こえてきた人の話を全て集約すると、過去にこの大陸でも猛威をふるった疫病が東の町で再確認されて人の流れと共にひろがりつつあるという、飛沫感染で広がるというそれは、咳がでて喘息みたいな症状が出るが熱などは無いから気が付かなくて広がり、弱り始める頃には花が咲くように発疹がたくさん出て、その頃には気管の炎症が悪化し息が出来ず、とにかく弱る。中には血を吐いて死んでしまう人もいるらしい。前の時は国王陛下も罹患(りかん)して大変だったと。



「息ができないとか……それは苦しそうな病だね……」


「ミナヅキ様お待たせ致しました……? どうかなさいましたか?」


 噂してた人達はもう治療を終えた様で見当たらない。

「いえ、なんでもないです」

「病棟の準備が出来ましたのでご案内致しますね」



 病棟には小さな子供とお年寄りがたくさんいて、皆回復魔法の術者が不在で困り果てていた。


「ここが病床のエリアです」


 ミカエラが案内をしてくれる。確かに彼女ら達の祈りである程度は維持されていたが、苦しそうな人達がたくさんいた。

「ではいきます」

 ミナヅキのエリア回復で辺り一帯が光に包まれると一気に重症者はいなくなる。この回復と引き換えに、ここであった事は全て箝口令(かんこうれい)が敷かれる事になっている。

「ミナヅキ様、ありがとうございます!」

 来た時とは違い、偉い人からそうでない人までがミナヅキをお見送りに来ている。

「いえいえ、あたしに出来る事をしただけですから。あたしは約束を守って頂けるなら喜んで協力しますから」

 年老いた司祭がミナヅキの手を離さない。

「感謝の宴などいかがでしょう!」

 キラキラとした目で皆に訴えられる。

「いえいえ、そろそろ迎えが来ますので! 失礼しますね!?」

 名残惜しそうな手を強引に振り切ると予定より早く外に飛び出ていくミナヅキ。



「はぁー、最近やたらと引き留められる様になったよ。次から面倒だけど誰かに付いてきて貰おうかな?」







 一度に患者を治すほどの奇跡の神業(みわざ)を持つ娘がいるらしい。見返りは求めず、決して口外せぬよう求めて何時の間にやら立ち去るという。(ちまた)では新しく聖女様が現れた! と噂されるようになっていた。




「聞いたかね、異世界から新しく聖女様が現れたとか」

「私も聞いたぞ。それをミュースラントでは独占しているらしいではないか。そんな事は許されるのかね?」

「王にいくら積んだんだ?」



 王都でまことしやかに囁かれる噂がグランを悩ませる。

「お前は、あの下らない噂を聞いたか? リンクス」



「ええ……旦那様が王宮で賄賂(わいろ)を配りまくり、異世界からやってきた聖女を自分達に有利な王命を貰うことで、独占している……というヤツなら多方面から聞こえておりますし、ここからここまでがそれに対する苦情の書状でございます」

 書類の束を差し出して主の頭痛をさらに酷くさせる。


「ミュースラント、ひいてはアヴァルトが金にものをいわせているだの横暴だと奴らは言うが……呆れるな。いくら婚姻という手をうちが使って王家と繋がりを持ったといっても、実際はボクと可愛いエマが絆で結ばれただけだし、現王を脅かさない様にとの義母である元王妃たっての希望の賜物(たまもの)だったし、今回のミナヅキの独占状態だって向こうからの一方的な嫉妬から来たものだし。うちって完璧に被害者だよねー。信じられない」


 今代の聖女は王家にいる王妃。立場上そう簡単には動くことはない。それなら疫病が蔓延する前に、異世界からやってきた聖女を最前線に派遣すべきだ。と最前線には絶対出ない奴らが高みから()かしているときた。

「この際拉致してでもつれてこいという勢力が現れそうで嫌ですね」


「うわ、リンクス! 変なフラグ立てないでよ……」


「なんですか? フラグって」



 その夜、ミナヅキが迎えに行ったが会えずいつまでたっても帰らないという報告がシドよりもたらされ、グランとリンクスは頭を抱える。


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