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ここはどこ……
殴られたのか頭が痛くてはっきりしてこないミナヅキは不意の打撲で意識を失っていた。絶対防御があるからといっても意識くらいは失う事もあるらしい。多分刺したりは出来ないだろうが、命に何ら別状はない程度なら負うし、今回も衝撃だけをその身で受け取ってしまったようだ。
「……」
記憶を辿ると小さな少女が泣いていた。
ミナヅキにお姉ちゃんを助けてと言う。言われるがままに曲がり角を曲がると血だまりの中にお姉ちゃんと見られる子供が倒れて今にも事切れそうだった。とっさに駆け寄り回復させていたはず……。少女の傷は塞がってきていたが、そこから先の記憶が無い。
金属製の何かが首にガッチリはめられている。多分それがあるから思い通りに指さえも動かせない。腰まであった髪もそれを付けるのに邪魔だったのか首の所で乱雑にカットされている。
意識が混濁し魔道具の効果でどんどん意識が薄れてきているので逆らうも従うも無く思考そのものが成り立たなくなってきていた。
シドさ……
「……この子意識無いのに涙流してる。こんな犯罪者に使う様な魔道具なんて駄目なんじゃないのか?」
「うるせぇ見習い! そもそも拉致そのものが違法で立派な犯罪だろうが! てめぇは黙って見張ってろ! 上からいくら貰ってると思ってるんだ!」
拉致した犯人たちは別の男達に受け渡すと今度はミナヅキを麻袋につめ他の荷物と共に貨物として搬出していく。何度か手渡しされ次々と馬車に揺られて行く途中に意識は保っていられなくなった。
開け放たれたテラスからそこはかとなく塩の香りがする。
「ご注文のモノをお届け致しました」
「おお、きたか! 袋を開けよ……ぬ? まさか死んでおるのか?」
袋から顔を出すも、一切の反応を見せないミナヅキに貴族はしびれをきらせて声をあらげる。
「暴れられて誰か呼ばれても面倒なんで、捕獲班がちょっとばかし強力な魔道具で自我を飛ばしたみたいなんですが、どうも効きすぎちまった様であはは……まあ、暫くしたらハッキリしてきますぜ」
「何をしておる! さっさと目覚めさせよ! 何のために最速で連れてこさせたとおもっておるのだ!」
「でも、旦那さん。もしかしたら仲間を呼ぶ伝を持ち歩いてるかもしれませんぜ?」
「なんだと!?」
「途中何度か追手の気配があったそうです。」
「では、従属の首輪と取り替えさせよ。暫く慣れさせたら大人しくもなるだろう。」
最初のガッチリとした首輪は外されたがその他のモノを新たにあてがわれたのでミナヅキの意識はちっともはっきりしてこない。
耳から聞き取れる声だけがミナヅキの中に蓄積されていく。
貴族たちの言い分はこうだ。東の街を助けて欲しいとこちらからわざわざ頭を下げてやっているのに、王命があるので正式な要請を受けたとしてもその街に行くのは不可能だとこちらからの申し出を無下にしてきたという。巷では、不当な取り引きで異世界からきた聖女を拉致し独占していて、無理を通しているのは向こうの方だという。それならこちらも同じように聖女を得ても許されるだろう。
逆に聖女は、あそこから解放して助けてやったも同然なのだから喜んで我が家の為に尽力してもいいのではないか?
この者達が何を言っているのか今のミナヅキには理解することができないでいる。
ミナヅキは虚ろの中にいた。




