もう何回転生したのか分かりません
どうして、どうしてうまくいかないの?
誰もいなくなった室内に私の声だけが響く。
もう、どうしたらいいのか分からない。
何度生まれ変わっても、私は妃に選ばれることなく終わるのだ。
そう、あれから何回転生を繰り返しただろうか。
前回ベアトリーチェとして転生した時、高慢な令嬢という烙印を押されてしまった私は深く反省し、他の候補に対する態度を改めた。
そしたら、そのまま、すんなりエミーリアがお妃になってしまった。
私は彼女より高位貴族でありながら選ばれなかった残念な令嬢と噂され、やはり羞恥に耐えられず引きこもりになった。
次にベアトリーチェとして転生した時、私は思った。
ベアトリーチェの嫌がらせのせいでエミーリアは王太子殿下以外の男性と親しくなっていったはず。だからちょっとセーブしてエミーリアをいじってみた。
しかし、やっぱり私が悪役になって悲しい結末を迎えた。
エミーリアに生まれ変わった時、私はシメタと思った。
他の男性と仲良くしなければ私が妃に選ばれるのだ。
ベアトリーチェから受ける様々な意地悪はきついけれど耐えてみせる。一年、一年経てば!
そう心に言い聞かせて、我慢に我慢を重ねた結果、うつ状態となり実家に戻された。
次にエミーリアに生まれ変わった時、私はうんざりした。
また、ベアトリーチェから陰湿ないじめを受けるのかと。
そんなある日私はひらめいた。他の男性に助けを求めるからダメなんだ。困った事があったら全て殿下に相談しよう…と。
そして、それを実行したら「そんな些細なことも判断出来ないようでは私の妃は務まらない」と、やはり実家に戻された。
……
いったいどうしたらいいの? どうすれば私が選ばれるの?
何をしても、何をやっても、殿下の妃にはなれない。
その度に私の心はダメージを受ける。
もう嫌だ! こんな変な転生は終わりにしたい。
というより、これは本当に転生なの?
同じ人に何度も生まれ変わるなんてこと、転生とは言わないよね。
しかもベアトリーチェとして生まれたらエミーリアが妃になるのに、エミーリアとして生まれても妃に選ばれないって、どういうこと!
まるで誰かが私をいたぶって、傷つき嘆き悲しむ姿を見て楽しんでいるとしか思えない。
女神様のいたずら? 悪魔の仕業? それとも誰かに呪われてしまったの?
無力な私を弄んで楽しんでいるのか?
「ひどいなぁ」
頭の中に直接その言葉が響いた途端、世界が暗転した。 夜でもないのに真っ暗で、気持ち悪いくらいの静寂
何? いったい何が起こったの?
「どうもー、はじめまして女神です」
はっ? うそ…
「嘘じゃないよ。あなたの切実な願いを聞き届けて、せっかく人生をやり直しさせてあげたのに、悪戯だなんて酷い事言うねェ」
えっ、本当に女神様?
「そうよ」
信じられない
「まあ、そうでしょうね。けど、本物よ。信じられないなら信じなくていいけどさ」
そう仰る自称女神様の姿を確かめようと思うのですが暗闇しか見えません
というか今気がついたんですが
私、肉体がありません
これってつまり私は死んじゃったってことでしょうか
「うーん、違うよー。まだ死んでないから安心して。でもあなたの本当の身体、今やばい状態なんだよね。私の力でとりあえずこの世に繋がっているって感じかな」
なんだか凄い内容をなんでもない事のように言われちゃいました
本当の身体って何のことですかね?
やばいって、生命の危機ってことでしょうか
こんな不思議体験をしているせいか、現実味が全然ないんですが…
それにしても、さすが女神様
喋らなくても私の考えてる事が分かるんだ… って、口もないんだっけ
今、私、どんな格好というか形(?)してるんだろう
やっぱり魂っていえばあれかな。丸くて青白い炎がチロチロ、みたいな。いや待て。オレンジ色かも!
突然、女神様が爆笑しだした
ヒーヒー言いながら「気にするとこ、そこ?」とか言ってる
そうだった。私の考えていること、筒抜けだった