閑話3
「こいつは……」
確実にこいつ(バイク)は俺に話しかけてきた。幻聴なんかじゃない。
「どうしたんじゃ?」
ずっとバイクを見ているので、流石におかしいと思ったのか声をかけてきた。
「このバイク……まだ、走れます。」
「は?」
「よくわかりませんが……走れるんです。」
「いや、走れるって………」
「声が聞こえたんです。殺さないでって……」
「そうか……お主もやはり……」
ロレンスは何かを確信したような目をしていた。
そして……
「よければ売ってやろうか?」
「え !?いいんですか?」
「いずれ、どっかの貴族に売ろうとしてたところじゃ。」
「でも……貴重じゃないんですか?」
あの闘牛王でさえも最低でも100万ルソーはする。しかも、初代となると軽く億は超える。100台しか生産せれてないからだ。
これは、闘牛王ではないが、歴史的に見るとかなり貴重なはずだ。
「お前さんは、そいつの声をきいたんじゃろ?ならそいつの言うことを聞いてやればいいさ。どっかのアホ貴族のコレクションになるよりはましだ。」
「そうですか……」
「でも、そのままじゃー、動かんよ。エンジンを変えなくてはならんのぅ〜。」
それもそうだ。見た目は綺麗でも、よーく見ると錆びていたりしている。
「どうにかなりませんか?」
「ま、部品を変えればなんとかなるじゃろう。あとは、そいつの気分次第かのぅ〜。」
「そうですか。いくらぐらいかかりますか?」
「ざっと、200万ルソーくらいかのぅ〜。」
「に、200万ルソー!?」
それなら普通に買ったほうが安いじゃないか!!
「仕方あるまい。見たこともない機種じゃ。一つ一つ丁寧にやれなければやらんからのぅ〜。」
「確かに……」
そう考えればやすいかもしれない。でも200万ルソーはねぇ〜。
「どうしたんじゃ?なんなら他の人に譲るとするかのぅ〜。」
「あ!?」
「なんじゃ?」
く、この爺さんなかなかやるな。ええぃ、この際やけだ!!
「わかりました。お願いします。」
「まいどあり〜。」
ロレンスはとてもニヤニヤしていた。一発ぶん殴りたい気分だったが、そうなると修理ができないので我慢した。
「さてと、今日はもう遅いから寝るとするかのぅ〜。あ、ちなみにお主はさっきの部屋で休むといい。」
「わかりました。」
気づけば11時を過ぎていた。今日は寝るとするか。
翌日。
「おい、ペンチとってくれ。」
「わかりました。」
俺は、ロレンスに向かってペンチを投げる。
「ありがとうよ。」
カン!!カン!!カン!!
工場に金属音が響き渡る。朝5時に起きて6時間まるまる働きっぱなしだ。
ロレンスさんの表情は職人顔そのままだった。特に溶接してるところなんて火花が散って、すごくかっこよかった。あれぞ漢だ。
「おい!!立ってねーで、ドライバーをもってこい!!」
「は、はい!!」
ちなみにこの人は仕事になると性格が変わってしまう。二重人格とはな。
「ふぅ、休憩だ。飯にするぞ。」
「わかりました!!」
俺は急いで台所に向かった。
「ふぅ、一仕事した後の茶はしみるわい。」
「本当ですね。」
あの地獄のような時間から安らぎのひと時。ああ、お茶が体にしみるな〜。
「大体は終わったからのぅ〜。あとは塗装ぐらいじゃな。」
「そうですか。意外と早いもんですね。」
本当はロレンスが一般の鍛冶屋が1日かけてやるところを1時間で終わらしているのだが……気づくわけがない。
「ま、燃料は自分で買うのじゃぞ。塗装は希望はあるか?」
「そうですね……あまり派手でなく、汚れが目立ちにくいのが、いいですね。」
「派手でなく、汚れが目立ちにくいねぇ。となると黒色なんかかのぅ。」
黒か……悪くないね。
「それでお願いします。」
「わかった。後はわし1人でも大丈夫じゃから、燃料でも買ってくるといい。」
「わかりました。」
俺は、燃料を買うため工場を出て行った。
「……さて、ここからじゃな。」
ロレンスは今までにないくらいの神経を研ぎ澄ましていた。
「魔法石の紫を4個ください。」
「はいよ。3万2千ルソーね。」
言われて通り魔法石を買った。魔法石はあらゆる機会を動かすのに必要な燃料である。これを機会にはめ込んで魔力を放出し、動かす。。魔法石は色にによってこめられてる魔力の量が違う。
順番でいうと
紫>白>青>緑>赤となっている。
今回は贅沢して紫を買った。これ一つで500㎞は走れる。
「さて、買うもんは買ったし帰るかな。」
俺は、急いで工場へと戻っていく。
「ただいま戻りました!!」
「おお、丁度じゃな。できたぞい!!」
「本当ですか!?」
俺は、すぐさま駆けつけた。
「す、すごい……」
この前までボロボロだった機体は嘘のように綺麗になっており、高級感が半端ない。
「これが鍵じゃ。さ、燃料を入れてエンジンをかけてみな。」
「わかりました。」
ドキドキドキドキ。
かつてこんなに緊張したことがあっただろうか?鍵をかけようにも手が震えててなかなか刺さらない。
落ち着け、落ち着け。
俺は心にそう聞かせて、なんとか鍵を指すことができた。
カチャ。
ブルォォォォン!!
「か、かかった!!」
ああ、このエンジン音はやっぱりいいな。
「ほほ、どうやら上手くいったようじゃな。」
「ありがとうございます!!」
「なーに、ただ、直しただけにすぎんよ。それより……」
「……?」
「名前をつけるといい。これから足を任せる相棒なんじゃからな。」
「名前ですか……」
確かにそうだ、自分のものに名前をつけるなんて話がよくあったな。
「……リッキー。」
俺が幼い頃に遊んだ鳥の名前だ。鳥のくせになぜか喋れておもしろかっんだよな。もう死んじゃったけど。
そういてえば、こいつの声はリッキーによく似ている。もしかしてリッキーの……
「リッキーはどうかな?」
ブーンブーン!!
おお、どうやら喜んでるみたいだ。
「ほほ、リッキーとはまた、変わった名前じゃな。」
「昔、飼ってた鳥の名前です。鳥なのに言葉が喋れて、やんちゃな奴でした。」
ブルォォォォン!!
おお、怒った!?
「ほほ、ぴったりじゃないか。」
ブルォォォォン!!
「悪かったてリッキー。」
ブーン!!
「はは、やっぱおろしろいな。リッキーは。」
こんなに笑ったのはいつぶりだろうか。
「あ、これお金です。」
ドサ!!
「ほほ、まいどあり。」
言われた通り、即金で200万ルソーを渡した。
「ありがとよ。お、そうじゃった。あれを渡さねば。」
ロレンスは何やら紙らしきものを取り出した。
「このバイクの説明書と解体書じゃ。もしどこかで壊れた時、これを見せればなんとかなるあもしれんからのぅ。」
「ありがとうございます!!」
「ほれ、そいつ(リッキー)も走りたがってるから早くいきな。」
「わかりました。」
ブーン!!ブーン!!
俺はハンドルを握りしめ……
「行くぞ!!リッキー!!」
ブルォォォォン!!
勢いよく飛び出した。それにしても早いなー。
「おお、行ってしまったわい。」
だんだん遠ざかっていく、少年の影を見ながらそうつぶやいていた。
「久しぶりかのぅ〜。あんな若者を見たのは。」
あの少年は若い頃のわしに似ておる。
「いろんな人と出会い、苦しいことも待っておるじゃろうが……あやつなら乗り越えるじゃろう。」
いつまでも羽ばたいていくのじゃ。少年よ。
お久しぶりです!!今回で閑話は終了します。次回は本編へもどります。お楽しみに!!




