タイトル未定2026/10/12 22:03
青空が、広がる日曜日。
マスターと流花は、車探しに出かけた。
「流花は、どんな車が良いですか?」
「どんな車って、言われても……マスターは?」
「いきなり大きな車は……」
「じゃあ、軽自動車?」
「最近の軽は広くなったと言っても、ボクが乗るには狭いです」
「可愛いピンクの軽自動車を運転する、マスターを見たいなぁ」
マスターと流花は、声を上げて笑った。
三件の店を回った後、やっと購入する車が決まった。
商談の後バスに乗って、繁華街にあるディスカウントショップに向かった。
「車が届いたら、遠出をしませんか?」
「はい!」
流花は、笑顔で大きく頷いた。
バスから降りたマスターは流花と手をつないで歩き、ふと流花に言った。
「車が届くのは、一カ月先です。そろそろ冬物の服が欲しいなぁ」
「冬物かぁ」
「流花、出かける時。パーカーとジーパンは無しですよ」
「失礼ね!出かけるときくらい、おしゃれをするわよ」
「初めて出かけた時、友達がコーデをしてくれたんですよね」
「あっ、ファッション・センスがないって、思っているな」
「じゃあ、今から服を観に行きましょう」
繁華街の中にある、若者向けのブランドの服屋に入って行った。
さすがにマスターは、気後れをしていた。
流花は色違いの、ニット帽を見つけた。
「マスター!このニット帽買おうよ」
ニット帽を手にしたマスターは派手すぎない、落ち着いた色合いのニット帽を見て買うことに決めた。
レジを通った後マスターは流花に、ニット帽を手渡した。
手渡されたニット帽を手にしたまま、流花はマスターを睨んで言った。
「買ってもらおうなんて、思ってなかったのに」
「ボクも、買ってもらおうなんて思っていません」
流花の言葉に、マスターはすまして言った。
その後、店内を見回したマスターは、流花に言った。
「若者の店なので、ボクに合う服はありません」
「そうかな?マスターなら、着こなせると思うけど」
「着こなせる以前に、似合いません」
「じゃあ、別の店に行く?」
「はい。流花は、どうしますか?」
「もう少し、この店で見てみようかな」
「終わったら、ラインしてください」
そう言ったマスターは、若者向けの店から出て行った。
服選びを終えた二人は、繁華街にある和食の店で、お昼にした。
和食の店を出た後、夕飯の材料を買いに大手スーパーに行った。
朝から車屋を三店舗周り、その後は洋服を見て周り、最後はスーパーに寄ってマンションに戻った時には、さすがに疲れてぐったりしてしまった。
疲れた身体を、奮い立たせるように流花は言った。
「さて、夕飯の支度をしようかな」
流花が立ち上がると、マスターも一緒に立ち上がった。
「手伝います」
「マスターが手伝ったら、意味ないでしょ!」
「少しでも、流花の側にいたいんです」
「もぉ〜」
不服そうな顔をしながらも、流花は嬉しそうに台所にマスターと並んで立った。
楽しそうに台所に立つマスターと流花を、大門はリビングの前の廊下でそっと見つめていた。
昨夜流花に、『明日……友達と会う約束をしちゃった』と言ったのは嘘だった。
大門は今日一日、朝から自転車で途方もなくさまよい、やっと帰宅をした。
台所でマスターと流花が横並びに立って料理を作っている姿を見ていた大門は、昨夜お好み焼きを食べていた時仲睦まじいマスターと流花を思い出していた。
……七海と流花お姉ちゃんが笑い合っているなら、僕なんか居ないほうが良い……。
マスターと流花を物悲しい目で見つめていた大門は、静かにリビングを離れた。
完




