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王子様系女子達が僕の家に入り浸って楽しんでいる秘密のこと  作者: ヤマモトユウスケ@#壊れた地球の歩き方 発売中!


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第25話 極厚カツ丼と体育祭(4)


 リビングのローテーブルの上に四人分のお膳を置くと、なかなか手狭になる。

 二人がけのソファに座るのは玲音と僕で、一輝先輩と薫はラグにクッションを置いて座っている。一輝先輩は胡座で、薫が女の子座りなのは、ちょっと意外だ。


 僕が床に座る方がいいと思っているのだけれど、彼女達は絶対に僕をソファに座らせる。家主を床に座らせるわけにはいかない、と。家主ではないんだけどね。

 お客を床に座らせるのも心苦しいから、順番にソファに座ろうと提案したら、僕が固定、女子三人が順番になった。紳士的な態度が徹底しているね。


 ソファは二人がけだけれど、ローテーブルが狭いから、必然、僕と隣の女子の距離も近くなってしまって、ちょっと緊張する。

 美人は三日で慣れる、なんて言葉があるけれど、きっと嘘だ。ふとした瞬間に“王子様”の顔が近くにあると気づいて、どきどきしてしまう。

 ……僕が気にしすぎなだけなのかもしれないけどね。


 ともあれ。


「いただきます!」


 と、玲音が元気よく手を打ち合わせた。

 みんなで手を合わせて――いただきます。


「おお……この分厚さ……!」


 玲音が箸で一切れ持ち上げて、嬉しそうな顔でかぶりついた。


「んんー! 柔らかい! 美味しい!」


 満面の笑み。ほっと安心する。

 初めて作る料理だったから、ちょっと不安だったのだ。

 僕もかじってみる。さくさくした衣に、柔らかい――けれど、普通のトンカツとは違う弾力を感じる極厚カツ。

 半熟に仕上げた卵もまろやかで、ご飯とタレの絡みもいい。


「うまい! 姫先輩、うまいです!」

「美味しいよ、姫ちゃん。卵もとろとろでタレも絶品だ」

「うん、ありがとうございます。美味しいですね、これ」


 他人事みたいに言ってしまう僕である。

 時間がかかるところは低温調理器がやってくれたからね。


「でも、食感がちょっとハム寄りだよね。低温調理と燻煙処理は火の通り方が近いのかな。そう考えると、低温調理は薄切りと相性が良いのかも。分厚いのも美味しいけれど、これは色々考える余地がありそう」


 言い終わって、味噌汁を一口飲む。……三人が温かい目で僕の顔を見ていた。な、何……?


「姫宮君は料理の話になると饒舌だよね。ちなみに僕は分厚いのが好き」

「よく喋る姫ちゃんは可愛いぞ。私は甘いものが好きだ」

「姫先輩のお話、もっと聞きたいっす! 可愛いご飯が好きです!」


 なんだか気恥ずかしくなって顔を逸らす。

 この三人は、何かにつけて僕を褒める。


「そ、そういう意味では、今日の極厚カツ丼は映えご飯でもあるよねっ」


 話も逸らす。薫がにっこり笑った。


「はい! でも、うちで作るのは難しそうです。低温調理器ないんで……」

「あ、そっか。そうだよね……」


 通常、このサイズの厚さのトンカツを揚げるのは非常に難しい。

 大きければ大きいほど、火の通りが遅くなって、中が生のままだったりしてしまう。かといって長時間揚げると火が通り過ぎたり、衣が油を吸いすぎてしまったり、焦げてしまったり……。


 そう考えると、この極厚カツは創意工夫の傑作だ。

 豚肩ロースの塊を低温調理器で長時間火入れしてから衣を付けて揚げるという、大変な手間のかかった一品ではあるけれど、難しい工程はない。

 ブロック肉をミートテンダライザー――たくさんの刃が付いた肉叩き器――で筋を切ったら、あとは低温調理器にお任せだから。

 そう伝えると、薫は「器具を使うのも技術のうちですよ」と、こちらをおだててくれる。気持ちのいい後輩だね、本当に。


「低温調理も気になりますけど、俺は刃物の扱いからですよね。揚げ物とかはまだまだ難しそうですし。まずは包丁――の前に、キャベツの千切り専用ピーラーを極めます!」

「うん。うん? それは極めるものなのかな……」


 極めなくてもいいから便利なんだけれども。

 薫は味噌汁の豆腐をぱくりと食べ、笑った。


「味噌汁もうまいっす! 俺、毎日キャベツ千切りするんで、姫先輩は毎日味噌汁作ってほしいです!」


 いやいや。出汁パックと合わせ味噌と市販の豆腐と乾燥わかめだよ? そんなに感動するほどじゃ……。

 ちょっと無垢すぎるというか。

 そこで、僕の隣で極厚カツ丼を吸い込んで(・・・・・)いた玲音が、すっとどんぶりを置いた。凄い、もう空になってる……。


「姫宮君。お代わり、いいかな」

「うん。もう一枚揚げてあるから、大丈夫だよ。ちょっと待ってて」

「ありがとう。ご飯は大盛りでお願いするね」


 ソファを立って、カウンターキッチンに戻る。

 トンカツ一枚で500グラムくらいあるはずなんだけどね。一輝先輩と薫は一杯ずつで終わりかな。

 リビングの方をチラリと見る。


「さて……薫? 今のは、ちょっと逸脱(・・)してたんじゃないかな?」

「そうだぞ。ふふ……、話し合いの内容を忘れたか?」

「いやいや、美味しいって伝えただけっすよ! あっはっは」


 話の内容はよく分からないけれど、三人とも笑顔で何よりだ。

 うんうん、料理を作った甲斐があるというものです。


※※※

低温調理をする際は、安全基準をしっかりと確認し、ギリギリを攻めすぎて健康を害さないようご注意くださいませ。マジで。

※※※


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