表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前など不要だ」と婚約破棄されたので、国を出ました ~私が抜けた途端に王都が壊れ始めても、もう知りません~  作者: 東雲透


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/45

第38話:それでも選べ

 水が、止まる。


 細い流れが。


 ゆっくりと。


 確実に。


 消えていく。


「……」


 私は、それを見ていた。


 ただ、見ていた。


 何もせずに。


 何もできずに。


 止まる。


 完全に。


 流れが、消える。


 その瞬間。


「……満足か」


 低い声が、落ちる。


 私は、顔を上げる。


 カイルが、こちらを見ていた。


 その目は。


 怒っているわけでも。


 呆れているわけでもない。


 ただ。


 真っ直ぐだった。


「……」


 私は、何も答えない。


 答えられない。


「……理由が欲しいのか」


 カイルが言う。


「やる理由」


 その言葉に。


 胸の奥が、わずかに揺れる。


「……」


「誰でもいいとか、関係ないだろ」


 淡々とした声。


 感情を乗せない言い方。


 だからこそ。


 重い。


「……」


「お前がやるかどうかだ」


 それだけ。


 それだけの話。


 私は、視線を落とす。


 地面。


 乾き始めた水路。


 さっきまで流れていたもの。


 それが。


 もう、ない。


「……」


 胸の奥が、少しだけ痛む。


 理由じゃない。


 義務でもない。


 ただ。


 嫌だと、思った。


 このまま。


 止まるのが。


 壊れるのが。


「……」


 それだけ。


 それだけの感覚。


 でも。


 それでいいのか。


「……私は」


 言葉が、出る。


 ゆっくりと。


「……ただの装置だった」


 カイルは、何も言わない。


 続きを待っている。


「……なら」


 私は、顔を上げる。


「今やってることも、同じじゃない」


 繋ぐ。


 整える。


 それは。


 結局。


 同じ役割。


「……違うな」


 即答だった。


 私は、目を見開く。


 カイルは、変わらない調子で続ける。


「前は、決められてた」


「……」


「今は、自分でやってる」


 それだけ。


 たったそれだけの違い。


 でも。


 決定的な違い。


「……同じだ」


 私は、首を振る。


 認めたくなかった。


「結果は同じ」


「過程が違う」


 カイルは、はっきりと言う。


「それで十分だ」


 私は、言葉を失う。


 過程。


 選択。


 自分で決めたかどうか。


 そんなこと。


 考えたこともなかった。


「……」


「お前は、どうしたい」


 再びの問い。


 今度は。


 逃げられない。


 私は、目を閉じる。


 考える。


 何もないと思っていた場所に。


 わずかに残っているもの。


 さっきの感覚。


 水が止まったとき。


 胸の奥に浮かんだもの。


 それは。


「……嫌だ」


 小さく、呟く。


 カイルは、何も言わない。


 ただ、聞いている。


「……壊れるのが」


 それだけ。


 たったそれだけ。


 でも。


 それが。


 確かに、ある。


「……」


 目を開ける。


 水路を見る。


 止まった流れ。


 それを。


 もう一度。


 動かしたい。


 理由じゃない。


 理屈じゃない。


 ただ。


「……やる」


 はっきりと、言う。


 カイルが、わずかに口元を緩める。


「……そうか」


 それだけ。


 それ以上は、何も言わない。


 私は、ゆっくりと立ち上がる。


 足は、少しだけ重い。


 でも。


 止まらない。


 水路へ向かう。


 手を、伸ばす。


 流れに、触れる。


 弱い。


 ほとんど消えている。


 でも。


 まだ、ある。


「……」


 集中する。


 繋ぐ。


 広げる。


 今までと同じ。


 でも。


 違う。


 今回は。


 選んでやっている。


 その感覚。


 それだけで。


 流れが、変わる。


 微かに。


 水が、動く。


「……」


 私は、目を細める。


 小さな変化。


 でも。


 確かに。


 戻ってきている。


「……これでいい」


 小さく、呟く。


 理由は、ない。


 意味も、分からない。


 でも。


 選んだ。


 それだけで。


 十分だった。


 私は、前を向く。


 もう一度。


 進むために。

第38話まで読んでいただきありがとうございます。


ここで主人公は、

「理由」ではなく「選択」で立ち上がりました。


・装置だった過去

・意味の喪失

を経て、


「それでもやる」


というシンプルな意志に戻っています。


ここから一気にクライマックスへ入ります。


続きが気になったら、

ぜひブックマークしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ