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婚約破棄されたら国が壊れたので、元王妃候補の私が世界を再設計します ~外された瞬間、流れが崩壊しました~  作者: 東雲 透


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第35話:婚約の意味

 それは、予告もなく現れた。


 空が、わずかに歪む。


 だが。


 今回は、圧ではない。


 もっと、静かな。


 “開く”ような感覚。


「……何か来る」


 カイルが、即座に身構える。


 私も、流れに意識を向ける。


 干渉ではない。


 これは――


「……通路」


 小さく呟く。


 次の瞬間。


 空間が、裂けた。


 光が、差し込む。


 その中から。


 一人の男が、ゆっくりと歩み出てくる。


 整った顔立ち。


 揺るがない姿勢。


 そして。


 見慣れた衣装。


「……久しぶりだな」


 低く、落ち着いた声。


 私は、息を止める。


「……殿下」


 それは。


 かつての婚約者。


 この国の王子。


 レオン・アークライト。


「……元、だろう」


 彼は、わずかに口元を歪める。


 皮肉とも、苦笑とも取れる表情。


 だが。


 その目は。


 変わらず、冷静だった。


「……何の用ですか」


 私は、静かに問う。


 感情を抑える。


 ここで揺れれば。


 すべてが崩れる。


「確認だ」


 彼は、あっさりと言う。


「お前が、何をしているのか」


「……見ての通りです」


「繋いでいる、か」


 その言葉に。


 私は、わずかに目を細める。


 理解している。


 この人は。


「……理解しているんですね」


「ある程度はな」


 彼は、周囲を見渡す。


 流れ。


 風。


 水。


 すべてを、一瞥するだけで。


「……確かに、機能している」


 短く、評価する。


 それは。


 王都で見ていた、あの人の目だった。


 役割としての評価。


 だが。


 その次の言葉が、違った。


「……だが、危険だ」


 私は、すぐに返す。


「それは、そちらも同じでしょう」


「そうだな」


 彼は、否定しない。


 そのまま。


 私を見る。


「だからこそ、聞きに来た」


「……何を」


 ほんの一瞬の間。


 そして。


「理解しているのか」


 その問いは。


 重かった。


「お前が、何だったのか」


 私は、黙る。


 分かっている。


 それは。


 触れてはいけない部分。


 だが。


 避けられない部分でもある。


「……国家の機能」


 私は、静かに答える。


 彼は、ゆっくりと頷く。


「正確には」


 その目が、わずかに鋭くなる。


「“制御装置”だ」


 その言葉に。


 空気が、わずかに張り詰める。


「……制御」


「そうだ」


 彼は、迷いなく言う。


「王と、その伴侶が、この国の流れを安定させる」


 それが。


 この国の構造。


「だから」


 その視線が、私を貫く。


「お前が外れた瞬間、崩れた」


 私は、何も言わない。


 言えない。


 それは。


 すでに、理解していたこと。


 だが。


 言葉として突きつけられると。


 重さが違う。


「……じゃあ」


 私は、ゆっくりと口を開く。


「なぜ、切ったんですか」


 その問いは。


 ずっと、胸の奥にあったもの。


 彼は、一瞬だけ目を伏せる。


 そして。


「……必要だった」


 短く言う。


「崩壊を止めるために」


 私は、息を呑む。


「……矛盾してます」


「しているな」


 彼は、あっさりと認める。


 そして。


「だが、あのままでは」


 少しだけ、視線を逸らす。


「もっと早く壊れていた」


 その言葉は。


 言い訳ではなかった。


 ただの。


 事実だった。


 私は、何も言えない。


 そして。


 彼は、続ける。


「だから、セレナを選んだ」


 その名前。


 聖女。


「……固定の方が、安定する」


 それが、王都の判断。


「短期的には、な」


 カイルが、横で呟く。


 王子は、わずかに目を向ける。


 そして。


「長期は、分からない」


 正直な言葉。


 それが。


 この人らしかった。


「……なら」


 私は、顔を上げる。


「今、分かってるじゃないですか」


 繋ぐ構造。


 それが、機能していること。


 彼は、静かに私を見る。


 そして。


「だから来た」


 短く言う。


「どちらが、この国に必要か」


 その問い。


 それは。


 個人の話ではない。


 国の。


 世界の。


 在り方の話。


「……選ぶつもりですか」


「すでに選んでいる」


 彼は、言う。


「だが、確かめる必要がある」


 その目は。


 冷静で。


 そして。


 わずかに。


 迷いがあった。


「……お前のやり方が」


 ほんの一瞬。


 言葉が止まる。


 そして。


「本当に、持つのか」


 それが。


 彼の本音だった。


 私は、ゆっくりと答える。


「……持たせる」


 迷いはない。


 それが。


 私の選択だから。


 彼は、少しだけ目を閉じる。


 そして。


「……そうか」


 それだけ言って。


 踵を返す。


 空間が、再び開く。


 その中へ。


 ゆっくりと歩き出す。


 その背中に。


 私は、何も言えなかった。


 ただ。


 理解していた。


 これは。


 個人の問題ではない。


 世界の。


 選択。


 その一部に。


 自分がいるということを。

第35話まで読んでいただきありがとうございます。


ここでついに、

「婚約の意味」が明かされました。


主人公はただの婚約者ではなく、

国家を制御する装置の一部でした。


そして王子もまた、

自分なりの正しさで選択をしていました。


ここから物語はさらに踏み込み、

主人公自身の存在意義が問われていきます。


続きが気になったら、

ぜひブックマークしていただけると嬉しいです。

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