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婚約破棄されたら国が壊れたので、元王妃候補の私が世界を再設計します ~外された瞬間、流れが崩壊しました~  作者: 東雲 透


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第19話:人は、簡単には動かない

 流れは、確かに整っていた。


 先ほどまで停滞していた水は、細くながらも動き続けている。


 風も、わずかに安定している。


 それは、間違いなく“改善”だった。


 だが。


「……で?」


 低い声が、空気を切る。


 振り返ると、村の男たちが立っていた。


 腕を組み、警戒した目でこちらを見ている。


「それで、これがいつまで持つんだ」


 その言葉に、私は一瞬だけ言葉を選ぶ。


 正直に言うべきか。


 それとも。


 安心させるべきか。


 だが。


「……半日程度よ」


 私は、事実を告げる。


 ざわり、と空気が揺れた。


「半日?」


「それだけかよ」


「意味ねぇじゃねぇか」


 不満と苛立ち。


 それが、はっきりと表に出る。


 私は、その反応を静かに受け止める。


 当然だ。


 彼らにとっては。


 “今”がすべてなのだから。


「……時間は稼げるわ」


 私は、言葉を続ける。


「その間に、次の手を打てる」


「次の手?」


 男の一人が、吐き捨てるように言う。


「誰がやるんだよ」


 沈黙。


 その問いは、もっともだった。


 私は、彼らを見る。


 疲れた顔。


 不安を押し隠した目。


 そして。


 どこか、諦めの色。


 彼らは。


 もう、期待していない。


 王都にも。


 外から来た人間にも。


「……私がやるわ」


 私は、はっきりと答える。


 その言葉に。


 一瞬、場が静まる。


 だが。


 すぐに、別の声が上がる。


「……あんたが?」


 疑い。


 当然だ。


「さっきのも、一時しのぎだろ」


「そうよ」


 私は、あっさりと認める。


「でも、何もしないよりはいい」


 その言葉に。


 再び、ざわめきが起こる。


 納得していない。


 それは、明らかだった。


「……信用できるわけねぇだろ」


 誰かが、呟く。


 その一言が。


 すべてだった。


 私は、何も言い返さなかった。


 言葉でどうにかなる問題ではない。


 これは。


 もっと、根本的な問題。


 信頼。


 それが、ない。


 当然だ。


 私は、この村の人間ではない。


 昨日来たばかりの、よそ者。


 それも。


 貴族。


 彼らにとって、最も信用できない存在。


「……だろうな」


 カイルが、隣で言う。


 私は、視線を向ける。


 彼は、村人たちを見ながら続ける。


「こいつは、信用されてない」


 あまりにも、率直な言葉。


 だが。


 否定できない。


「……分かってるわ」


 私は、静かに答える。


 理解している。


 それでも。


 やるしかない。


「じゃあどうする」


 カイルが、こちらを見る。


 試すような目。


 私は、少しだけ考える。


 そして。


 答えを出す。


「……結果を見せるしかない」


 それが、唯一の方法。


 言葉ではなく。


 行動で。


 積み重ねる。


 時間をかけて。


「時間がねぇんだよ」


 男が吐き捨てる。


 苛立ちは、もっともだ。


 だが。


 それでも。


「だからこそよ」


 私は、まっすぐに言う。


「今できることを、全部やる」


 その言葉に。


 少しだけ、空気が変わる。


 納得ではない。


 だが。


 完全な拒絶でもない。


 私は、続ける。


「半日なら、半日でできることをやる」


 そして。


「その間に、次を考える」


 それだけ。


 単純な話。


 だが。


 それが、今できるすべて。


 沈黙。


 風が、揺れる。


 その中で。


 ひとりの老人が、前に出た。


「……やらせてみよう」


 静かな声。


 だが、重みがあった。


「どうせ、このままでも持たん」


 現実的な判断。


 そして。


 わずかな、賭け。


 他の村人たちも、顔を見合わせる。


 完全な同意ではない。


 だが。


 反対もしない。


「……好きにしろ」


 男の一人が、ぶっきらぼうに言う。


 それが。


 この場での、最大限の許可だった。


 私は、小さく息を吐く。


「……ありがとう」


 その言葉は。


 自然と出ていた。


 村人たちは、何も答えない。


 ただ、距離を保ったまま見ている。


 それでいい。


 今は。


 それで十分。


「……始めるわ」


 私は、前を向く。


 まだ、信頼はない。


 期待も、ない。


 あるのは。


 ただ。


 “様子を見る”という視線。


 けれど。


 それでもいい。


 ここから、積み上げる。


 少しずつ。


 確実に。


 その先に。


 何があるのかは、まだ分からない。


 だが。


 少なくとも。


 何もしないまま終わるよりは、いい。


「……行くぞ」


 カイルが言う。


 その声には。


 わずかに。


 先ほどとは違う響きがあった。


 完全な評価ではない。


 だが。


 “見てやる”という意思。


 それは。


 この場所では、十分な前進だった。

第19話まで読んでいただきありがとうございます。


ここで「能力があっても人は動かない」という壁を入れました。


この作品は、

・できるかどうか

だけでなく、

・信じてもらえるかどうか

もテーマにしています。


ここから主人公は、

“結果を積み重ねるフェーズ”に入ります。


続きが気になったら、

ぜひブックマークしていただけると嬉しいです。

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