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鬼姫様が征く異世界道中記~地獄の沙汰も金次第だが、私にも慈悲はあるぞ。  作者: あまのやぎ
第1章~鬼姫様、異世界に!
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……か、可愛い!

彼女、出ます!

「キサラ、結局買わなかったな。」

「……まあ、社会科見学みたいなものよ。」


 そんな会話をしている横で、正座説教3時間後みたいな空気を出している少女がソーマの隣にいた。

 名前は「エリカ」で、ソーマの生まれた村の幼馴染みで、お馴染み止まりだった少女。

 つまり、彼女は「(ただ)」の村人の子供のソーマより、もう1人の幼馴染みである村長の長男を選んだみたいで、それが切っ掛けで初恋が実らなかったソーマは村を出て冒険者になる。

 (つい)でにいえば、ソーマは「転生者」である事を村の全員に隠していた。

 更に言えば、初恋は実らなかったけど、お馴染みとしては心配していたらしい。

 何故なら、彼女の両親は所謂(いわゆる)「毒親」だったからだ。

 だから、ソーマとしては、早々に両親と縁を切れれば良いと思っていたらしいわ。

 それともう1つ、彼女の恋人である筈の村長の長男は彼女を見捨てたみたいね。

 だから、ソーマとしては、お馴染みとして彼女を買う事で助けたみたいだわ。


 そんな事を振り返っていると、会場の外でも奴隷を売っていたわ。


「在庫処分だろうな。」

「折角だから、見ていくわね。」

「分かった。」


 ふ~ん。

 オークションに出品されなかった訳は判ったわ。

 見栄えが悪かったり、四肢欠損や隻眼の奴隷ばかりだわ。


「……」

「キサラ?」

「……か、可愛い!」

「……は!?」

「貴方! あの少女()は幾ら?」

「へ? ああ。そいつは金貨1枚だ。それと……」


 金額を聞いた後に、説明があったわ。

 私が買うと決めた奴隷の少女は猫の獣人族で、両耳と尻尾に右腕と両目の欠損に、全身に2割の火傷に、何らかの呪い付きだった。


「分かったわ。はい、金貨1枚。」

「……それでも買うのか。それなら、この小皿に血を数滴入れてくれ。」

「はい。」


 私は、直ぐに忍者的な親指を噛む方法で小皿に血を数滴入れると、奴隷商の男は、その小皿の中身を混ぜ、中身を私が買った奴隷の少女の胸に専用の文字を書いた。


「ぐぅ……」

「……これで、正式にこの奴隷はお嬢さんの物だ。」

「やったわ。」

「しかし、本当に良いのか?」

「勿論よ。さあ、いきましょう。貴女は、もう何も怖がる必要はないからね。私が守るわ。」

「……」

「後、首の奴隷環を奴隷紋に変えてくれない。」

「分かった。金貨3枚だ。」

「はい。」


 こうして、私達は宿屋に帰り、1人部屋2つから2人部屋2つに替えた。


「先ずは、貴女のその身体を衛生的な意味でも綺麗にしましょうね。」

「……」

洗浄(クリーン)。次に完全回復(パーフェクトヒール)。」


 彼女の汚れを綺麗にして、両耳や尻尾に、右腕と両目と火傷を再生復元して治療したわ。


「……え!?」

「はい、綺麗になったわ。」

「……み、見える……指が、腕が、耳が、……尻尾が動くわ!」

「良かったわね。」

「……う、ぐす、……ひっく……うわあぁぁ……」

「よしよし。」


 この私が衝動買いする程の少女は、私の腕の中で静かに喜びの涙を流していると、急に苦しみだしたわ。


「……う、ぐぅ……あ、……あぁぐぅがあぁああぁ……」

「いけない、忘れていたわ。……呪詛返還!」

「……え!? 苦しく……無い!?」

「もう、大丈夫よ。貴女を苦しめた呪いは、掛けた本人に返したから。『人呪わば穴2つ』ってね。しかも、この鬼姫たる私が返すのだから、倍返しや1000倍返しなんてケチな事しないわ。億返しよ!」

「……億返し?」

「そうよ。掛けた本人だけじゃなく、もし、呪詛を依頼した者が居れば、その者にも。更に、その周辺に貴女に対して悪意を持つ者にも返した呪詛が行く様にしたわ。しかも、貴女が味わった苦しみの1万倍の苦しみと、この呪詛では死なない様にしてね。天寿を全うするまで苦しめば良いわ。」

「……あのぅ……」

「そういえば、まだ自己紹介もしていなかったわね。私の名前は『キサラ』よ。冒険者をやっているわ。ランクはDよ。貴女は?」

「……有りません。」

「どうして?」

「奴隷に堕とされると、名乗れなくなります。それは、名前が無いのと同じです。」

「それなら、貴女の御両親は、何て呼んでいたの?」

「……リンディーナです。」

「それなら、貴女の名前は『リン』よ。」

「……ありがとうございます。ご主人様。」

「ダメよ。キサラと呼んで。」

「……ご主人様ではダメですか?」

「ダメ。」

「では、キサラ様。」


 ちょっと欲が出た末っ子の私はリクエストしたわ。


「……う~ん。名前の後に『お姉様』と付けて。」

「は、はい。キサラお姉様。」

「……良い……。」

「……キサラお姉様?」


 その後、沢山お話をしてリンの事を知ったわ。

 先ずは、獣人族の両耳と尻尾についてなんだけど、両耳は、本人の許可が有れば、触れたり触ったりモフモフが出来るみたいで、尻尾は、母親か姉妹か恋人以上のみ触れるみたい。

 だから、尻尾に触る行為は、プロポーズか自殺志願者のどっちかになるみたい。

 そして、例外は奴隷になった時みたいで、獣人族は奴隷になる前に自身の尻尾を千切るのが、獣人族の最後の矜持だと話してくれたわ。

 次にリンの家族や故郷だけど、言葉を濁していたから、奴隷狩りとかに遭って良くて散り散りになったか、最悪は故郷ごと滅ぼされたかでしょうね。


 最後に、奴隷になったリンの最初の買い主だけど、もの凄く綺麗な場所で下級メイドとして働いていて、一応は読み書き計算に、メイドとしての教養と礼儀作法の教育を受けていたみたいなんだけど、そこの偉い人の息子に気に入られ、最終的には私が買った時みたいにされて売られたみたいだわ。

 不幸中の幸いは、性的暴行は受けてない事ぐらいね。


 後、その偉い人とかの情報は、奴隷契約とは別の「魔法誓約書」で封じられているから話せないみたい。


 この事から、買い主は大商会以上で、最高が、王子とかになるわね。


 ……まあ、呪詛返ししたから、怪我や病気が理由で表に出なくなった奴が、元買い主になるわね。


 ざまぁ。




暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。


キサラが視たのは、リンの魂です。

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